ブロックチェーンがもたらす事業部運営の変化:より厳密な経営遂行ユニットへ

2017年6月21日 赤羽 雄二 0

ここ数回に渡ってブロックチェーン革命を乗り越えるために、組織としてどのように立ち向かっていくかについて触れてきました。今回は、ブロックチェーンによって組織構造自体がどのように変化していくかについてお話したいと思います。   スマートコントラクトによってすべての経理・会計業務が自動化されたら あと数年してブロックチェーンとスマートコントラクトが普及すると、すべての経理・会計業務が安全、確実、安価でリアルタイムに自動処理できるようになります。 ビットコインやイーサリウムでできるかどうかは微妙ですが、例えばIOTA(イオタ)はIoTをサポートするブロックチェーンとして先週上場し、時価総額1650億円($1=110円)を実現して世界中を驚かせました。産業界や市場の期待は大変大きい状況です。トランザクションコストが無料で、かつ処理量も莫大にこなせます。 IOTA以外にもまだいくつもの革新が必要ですが、遅かれ早かれ、すべての経理・会計業務が自動化されることはまず間違いないことだと思います。決まりきった作業であり、人が手作業でやり続ける意味が全くないからです。判断業務の部分はもちろんありますが、恣意的にやらないためにはむしろ人手を完全に排除することが必要です。東芝などでの不正会計、粉飾の可能性をゼロにすることもできます。 もちろん、スマートコントラクトの設計にインチキがないように確認・監査する必要はあります。 これらの結果、事業部ごとの業務や財務状況が人手を全く介さず、リアルタイムで把握できるようになると理解しています。 これは大変なことで、ローマ時代に簿記が発明され、14世紀に複式簿記が発明されて以来の大きな変化をもたらすのではないかと勝手に考えています。   事業部がどうなるかの大胆な仮説 すべての経理・会計業務が安全、確実、安価でリアルタイムに自動処理できるようになったとき、企業経営がどうなるのか、事業部がどうなるのか、ということに関しては、世界中見渡しても、まだどこにも詳しい見解が述べられていません。 多分、企業経営に詳しい人、経営改革に詳しい人、ブロックチェーンとスマートコントラクトに詳しい人がばらばらで、しかもダイナミックに変化している真っ最中なので、そういうことなのだろうと思います。 ということは言ったもの勝ちなので、内外大小の多数の企業の経営改革の経験とブロックチェーンとの深い関わりをもとに、大胆な仮説を述べさせていただきます。 私個人の意見ですので、「いやこうではないか」「こう考えたらもっと意味があるのではないか」という意見をどんどん出していただければ非常に嬉しく思います。 事業部がどうなるのか、またその意味合いがどうなるかということに関して私の仮説は以下の通りです。 事業部の経営・運営状況が常時把握されているので、KPI(Key Performance Index 経営指標)経営がより徹底される。 何をどうすればより売上・利益を拡大できるのかが瞬時に提示されるので、経営判断、方針変更がより早くなる その俊敏で的確な判断ができる事業部長が生き残り、のんびりとした勘と人脈、人柄で生きてきた事業部長は淘汰される 業績、企業への貢献が不透明だった役員、部長、課長の貢献度がKPI達成の一部として明示されるので、どの階層も成果を出すことに全力を挙げるようになる。成果を出せない役員・管理職も淘汰される IoTやウェアラブルの活用で、誰が誰とどうやり取りしているか、会話しているか、仲間作りをしているかなどもすべて把握され、貢献度との関係が明示される 企業全体として見た場合、黒字事業部の業績をどうすればより早く向上できるのか、赤字事業部をいつまでにどう黒字化するのか、どこで見切るのかの判断が明確になる。従来のように赤字のテレビ事業を10年維持・放置するといったことがなくなる […]

ブロックチェーン新事業開発支援チームの設立と運用

2017年6月14日 赤羽 雄二 0

前回、リーンスタートアップによるブロックチェーン新事業開発についてご説明しました。1000字程度の価値仮説を書くのが意外にむずかしいことやスピード感の重要性についてもお話しました。 複数のチームを並行して走らせると交互に刺激になることや、ベストプラクティス共有についても触れました。   ブロックチェーン新事業開発支援チームが必要な理由 ただ、それでも、プロジェクトメンバーが新事業、ましてやブロックチェーン新事業に初めてでは、おっかなびっくり動くしかありません。そうなると、新事業開発がスムーズに進まず、時間を大きくロスします。それだけではなく、慣れていればうまくかわすことのできた問題にぶつかったり、どんなに時間をかけても顧客・ユーザーを満足させる製品・サービスに到達できなかったり、ということが起きてしまいます。 そのため、私は中堅企業、大企業の場合は、ブロックチェーン新事業開発支援チームを専任で置いて、そこが各ブロックチェーン新事業プロジェクトを支援することが望ましいと考えています。 こういう支援チームの提案をすると、多くの経営者が「そんなものは特に必要ない。優秀なメンバーを集めれば、新事業プロジェクトはうまく行くはずだ」と言って必要性を理解してくれません。スポーツならコーチやトレーナーをつけるのが当然と考えられているにも関わらず、会社の新事業プロジェクトは、社員が本気で取り組めば何とかなると考えているようです。精神論だけで何かができると考えがちなのは、まだスパルタ教育や「体育会的ノリ」が信奉されているからかも知れません。 ブロックチェーンのような全く新しいもので、しかも社内外との調整が非常に多く、大企業的でありかつベンチャー的要素もあり、グローバルとローカルの線引きもあいまい、という状況では、ただ仕事ができるだけの部課長に任せるのは危険です。彼らはできないとは言いませんが、会社として決してよい結果をもたらしません。それよりは、専任の支援チームを置いてノウハウを蓄え、会社としてスキルアップしていくことが効果的です。   リーンスタートアップを支援するブロックチェーン新事業開発支援チーム では、リーンスタートアップを支援するブロックチェーン新事業開発支援チームはどういう体制、位置づけ、構成にすべきでしょうか。 上図にあるように、経営者の直下に置き、事業部から生み出される新事業案とその推進メンバーをいったんブロックチェーン新事業開発支援チーム内に置きます。 そこでは、慣れたメンバーのコーチングのもと、新事業案の事業計画を短時間でしっかり詰めます。価値仮説や成長仮説も手早く書いて仕上げ、MVPを設計して電光石火でトライアルを進めます。準備ができ次第、チームは新事業推進プロジェクトとして外に出します。 ブロックチェーン新事業開発チームに助けてもらうと仕事がスムーズに速く進む、本当に助かるという評判をなるべく早く作っていく必要があります。そうなると、事業部あるいは研究所でブロックチェーン関連新事業を検討しようと話し始めた最初の段階で相談されるようになり、会社としては新事業推進が効率的に進むようになります。   ブロックチェーン新事業開発支援チームリーダーとメンバーの資質 ブロックチェーン新事業開発支援チームリーダーは、①ブロックチェーンという新しい分野で、②新事業を立ち上げるための、③支援をするという3つのチャレンジを同時に受ける立場ですので、社内でもっとも優秀な部長クラスを当てる必要があります。 具体的には、 問題把握、解決力がある リーダーシップがある 情報感度が高い 好奇心が強い 頭が柔らかい 社内をスムーズに進めるコミュニケーション力がある 社外のITベンチャー、専門家、海外の関連ベンチャーとの連携ができる […]

リーンスタートアップによるブロックチェーン新事業開発

2017年5月22日 赤羽 雄二 0

今回は、新事業を考える際に有効なリーンスタートアップと呼ばれる手法を用いて、ブロックチェーン技術を用いた事業を立ち上げる際のポイントについて述べていきます。   リーンスタートアップとは? リーンスタートアップとは、製品・サービスの仮説を素早く立て、最も重要な機能のみ簡潔に実装し、実際の顧客・ユーザーで試し、ねらいがはずれたらすぐピボット(=方向転換)をして、成功するまで改善していく製品・サービス開発のアプローチです。10年ほど前から米国を中心に発展してきました。 ごく短期間で製品・サービスのねらいをつけられること、読みがはずれたら何度も急速にピボットするので成功確率が高いこと、費用が非常に安いことなどが特筆すべき点で、シリコンバレーのベンチャーとベンチャーキャピタルの力関係を大きく変えるインパクトをもたらしました。急成長するまでそれほどの資金需要がなく、ベンチャーキャピタル側が日参して投資を受け入れてもらう、という新現象が起きたほどです。 具体的なステップとしては、 顧客・ユーザーが泣いて喜ぶほどの「価値仮説」と、1人の顧客・ユーザーが3社・3人呼んでくれる「成長仮説」を立てます(それぞれ1000字程度で)。顧客は製品・サービスの対価を支払ってくれるいわゆるお客様、ユーザーは利用者を指します。 仮説を検証するための必要最小限のMVP(Minimum Valuable Product = 実証ミニプロダクト)を最速で構築します。数日から数週間と通常の開発の数十分の一の時間での構築がポイントです。本当に大事な点だけに絞って、見た目を無視して機能を提供できるようにするものです。 顧客・ユーザー候補を何社・何名か確保し、MVPを使ってもらって価値仮説、成長仮説が正しかったかどうかを検証します。 ターゲットKPI(Key Performance Index = 達成目標)を満たさなかったら、すぐ仮説を見直し、MVPを作り変えてピボットします。 再び最速で検証します。ターゲットKPIを満たさなかったら4.に戻ります。 というものです。 リーンスタートアップそのものに関しては、「素早い仮説構築・検証・修正による商品開発 実践的リーンスタートアップ」という記事で詳しく述べましたので、ご参照ください。 もともとベンチャーの立ち上げのための工夫として始められましたが、大企業、中堅企業の新事業開発にも非常に効果的です。ブロックチェーンによる新事業に関して、サービスの使用感や事業性などを確認するためにもうってつけだと考えています。   複数の新事業をリーンスタートアップで立ち上げる […]

ブロックチェーン革命を乗りこなす組織の構築:組織原理が根本から変わる

2017年4月26日 赤羽 雄二 0

今回は、あらゆる産業に大きな影響を与えるブロックチェーン革命を組織として乗り越えるために、組織をどのように作り変えていくべきかについて述べていきます。   スピードが決定的に重視される ブロックチェーン革命を乗りこなすには、組織の意思決定、行動が圧倒的に速くならないといけません。大企業の安泰だったビジネスにも新進ベンチャーがブロックチェーンベースのサービスで次々に参入してくる可能性が高くなっていきます。海外のベンチャーもブロックチェーンベースであれば、言語対応だけすればすむので、平気で入ってきます。規制も、非関税障壁もありません。 大企業が従来のスピードで議論に議論を重ねていたら、その間に新しいスマートコントラクトをばらまかれて中抜きされてしまいます。気がついたときには、なぜか顧客がどんどん減り、手の打ちようがなくなってしまう、ということになります。顧客に泣きついても、「いや、サービスがよくてずっと安いからさあ」と言われて終わりです。 例えば、大手の人材紹介ビジネスは、顧客と人材の莫大なデータベースを構築し、それを参入障壁としてかなりの利益をあげていました。ところが、ブロックチェーン技術を持つベンチャーが顧客と人材をスマートコントラクトでマッチングし始めると、ユーザーインターフェースさえ使いやすければ、燎原の火のように一気に広まる可能性があります。 失うもののないベンチャーは、手数料を従来の1/2や1/3に下げることも全くいとわずやってきます。それでも、彼らにとっては非常に大きなビジネスだからです。こういう状況に対して、大企業でもベンチャー並の意思決定の速さで対応しなければなりません。 大企業病とよくいいますが、多くの中小企業も意思決定の遅さ自体は相当にひどく、同様に意思決定の速い企業の餌食となっていきます。   従来の組織のまま、ビジネスへのブロックチェーン活用を最速で進める ビジネスへのブロックチェーン活用を最速で進めるには、組織は既存組織のままでいいので、前回述べた「ブロックチェーン化推進リーダー」や「ブロックチェーン新事業開発支援チーム」を置き、一部だけ異次元のスピードで進めるほうがいい良いでしょう。組織全体に手を入れていたらあっという間に1,2年かかってしまうからです。 ほとんどの組織の問題は、構造にあるというよりは、以下のどれかです。 ①上長のフォローが不十分のため、責任を果たしていない部署がある ②協調すべき部門間でコミュニケーションが成立せず齟齬を来している ③人材評価がずさんでゆがんでいるため仕事のできない人が昇進している ですから、そういう問題は別途手当てをしていけばいいですし、それしかしょうがありません。 ということで、自社のスピードの遅さにはいったん目をつぶっても、ブロックチェーン活用のところだけは電光石火で進め、加速していきます。   社長に必要なリーダーシップ 当然ながら、そのように進めるには、社長自身のリーダーシップが不可欠です。本当は、大してむずかしいことではありません。数ページ以上の書類は見ないと宣言し、すべての会議も従来の半分の時間でストップすると宣言して実際そのようにし、自分の出ない会議も「会議生産性3倍増チーム」を派遣して実施させ、中間管理職や現場の意見を真剣に聞くようにすればいいだけです。 「本当は」と前置きをしたのは、本当に全然むずかしいことではないのに、思い切ってやろうとする、押し切ってやらせようとする社長が決して多くはないからです。多分、決めたくないのだろうと思います。リスクを取りたくないからだとよく言われますが、リスクなど全くありません。サボっているだけだろうと理解しています。不勉強で、危機意識があまりないのだろうと理解しています。   自社も中央集権型から分散自律型へ ブロックチェーンベースのサービスである程度のシェアを取り始めたら、自社の改革にも手をつける必要があります。従来の中央集権型から、より各部門の分散自律型に変えていくことで、競争力を一段と高めることができるからです。ただ、この点は言うのは簡単ですが、実際は結構大変で、相当の試行錯誤が必要です。 どこの記事にも書いてありますが、最大の問題とは、ブロックチェーンによって分散自律型を促進すると、分散自律させるためにそれぞれの部門長が大きく成長しなければならないことです。今まで上長の意向を聞いてその通りに実行していればよかったものが、自分の判断でむずかしい意思決定を進め、リスクを取って事業を進めていかなければなりません。 […]

ブロックチェーン革命を推進できる人材の早期育成:チャレンジできるリーダーを確保

2017年3月27日 赤羽 雄二 0

根本的な改革なので、経営者の右腕が必要 ブロックチェーン革命は根本的な改革なので、経営者の強いリーダーシップに加え、経営者の右腕がどうしても必要になります。経営者がどれほど能力があり、かつブロックチェーン革命にコミットしていても、資金繰り、顧客対応、トップセールス、中長期計画の立案・合意、新商品開発、人事および人事評価、提携交渉、労組対策、株主対策、投資家対応、地域対応など、経営者の本来業務だけで目の回る忙しさだからです。 これら全部を滞りなく進めつつ、ブロックチェーン革命を他社に負けずに推進することは、到底一人でできません。 どうしても経営者の意をくんで改革を力強く推進する、経営者の右腕が必要になります。経営者が1を言うと真意を理解し、先を読み、必要な確認をへて、1あるいは1.5くらいまで推進できる人材です。 これを「ブロックチェーン化推進リーダー」と呼びます。 通常は、副社長、取締役、経営企画室長クラスになります。問題把握および解決力があり、世界のブロックチェーンの最新動向を知ってフォローする好奇心と理解力があり、社内の反対を押し切って丁寧に実証実験や導入を進めるプロジェクトマネジメント力、リーダーシップ、調整力、コミュニケーション力、政治力、外部との交渉力、人脈などがあり、という社内の最強人材ですね。 本当に資質がよければ、年齢、社歴はそこまで問いません。最悪、外部からの採用もありますが、できれば入社1,2年たっているほうが余計な摩擦が少なくなります。   常識、これまでのやり方にチャレンジできること ブロックチェーン化推進リーダーは、経営者の右腕として社内の常識、これまでのやり方にチャレンジすることが必要です。内容の善し悪しではなく、変えようとするそのものに対して強い反対が起きますので、冷静に問題点と解決策を考え、古くなってしまった常識、これまでのやり方に遠慮なくチャレンジしていきます。 深くものを考える人材でなければ、ブロックチェーン革命を推進する上で、何が本質なのか、どこをどうすればイノベーションを起こせるのか、読み切ることができません。 これまで取引先とはこうやってきたから、というだけの理由で、やり方を変えないことはブロックチェーン時代には通用しません。本当はどうあるべきなのか、従来はどういう制約があったから手作業でやっていたものの、どう考え直せばスマートコントラクトで置き換えられるのか、などを自由な発想で考える必要があります。 そういった人材はそこまで希ではありませんが、それでも、多分、通常の企業では7~8人に1人程度だろうと思います。そういう人材を早期に選び、鍛えておくこともブロックチェーン革命に乗り出す上で大切です。 ITだけに強い人材ではありません。また、問題把握・解決力やリーダーシップがいかにあってもITを苦手とする人材もブロックチェーン化推進リーダーとしてはあまり向いているとは言えません。   社内の反対、冷笑に心が折れないこと ブロックチェーン化推進リーダーには、社内の反対、冷笑に心が折れない人材が必要です。通常の新事業でも、既存事業側からは鼻で笑われたり、揚げ足を取られたり、「誰の金で給料払ってもらってると思っているんだ」など、心ない発言で傷つけられたりします。 ましてや、ブロックチェーン化においては、既存事業がまだ成り立っているうちに、それがこわれたときどう対応するのか、という検討も必要ですし、どうやってスムーズに乗り移ることができるかというシミュレーションも必要です。 既存事業側の気分を傷つけるような検討をせざるを得ないので、単なる新事業とは違い、敵陣への落下傘部隊のようなものです。 いくらそれが将来彼らを救うことになるか、世の中が劇的に進んでいるかを伝えても、よくてややネガティブ、下手をすると大変ネガティブな受け取り方しかされませんので、社内の反対、冷笑に心が折れない人材が必要となります。 使命感がかなりのプラスにはなりますが、それでも、悲しくなることも多いでしょう。自分たちの代わりに、自分たちの将来のために検討してくれてありがとう、ということにはまずなりません。   経営者が全面的にバックアップすること したがって、ブロックチェーン化推進リーダーを経営者が全面的にバックアップすることがどうしても必要です。 口だけでは足りず、社長室の横あるいは近くにプロジェクトルームを置くとか、週次で進捗報告を聞くとか、社内の最優秀メンバーを事業部の反対を押し切って数名投入するとか、特に反対の声が強い事業部長、取締役と経営者自ら食事をして懐柔するとか、あの手この手でのバックアップが大切です。 […]

ブロックチェーン時代が要求する経営者のリーダーシップ:ビジネスの根本的な再構築

2017年3月20日 赤羽 雄二 0

ビジネスの根本的な再構築 ブロックチェーン時代に生き抜くには、経営者のリーダーシップがこれまでになく要求されます。既存事業が安定している場合、取締役も社員も、誰も大きな変更を望みません。業績が少しずつ低下していたとしても、必ず盛り返すことができると根拠のない期待のもと、現状を維持することに汲々としています。 ところが、新しいチャンスをつかむにも、生き残りをかけた挽回策をとるにも、ビジネスの根本的な再構築が避けられません。売上を5%伸ばそうとか、コスト削減をしっかりやろうというレベルではほとんど答えにならないからです。もっと根本的なアプローチがどうしても必要です。それは経営者にしか推進できません。   事業ビジョン、事業戦略、組織の再構築 まず始めるべきことは、事業ビジョンの再構築です。自社は5年後、10年後にどういう価値を提供するどういう会社になりたいのか、ゼロベースで考え直します。 例えば、ある人材紹介会社が「優秀な人をふさわしい会社へ一人ひとりご紹介し、活躍していただく」ことをビジョンとして創業10年、社員40人まで伸びてきた場合を考えてみます。 それがブロックチェーンベースの自動紹介システムにおいては、マッチングがスマートコントラクトによって行われるため、価値を産み、差別化をしていた部分がなくなってしまいます。そうなると紹介することで簡潔していたビジネスから、個々人のスキルを上げたり、入社後に活躍できるようにフォローしたりするトレイナー的な業務にシフトする必要があります。 これまでの事業ビジョンを、「優秀な人がスキルアップし、新しい職場で継続して活躍できるようにご支援する」という新しい事業ビジョンに書き直し、社員も「人材紹介コンサルタント」から「スキルアップコーチ」に切り替えていくことになります。 事業ビジョンが変われば、それを実現する方策もすべて変わります。どうやってスキルアップコーチの資質を持った人を多く集め、スキルアップの具体的な方法を研究し実践を繰り返すことで競合他社に提供できない効果的なノウハウを確立するか、それが決め手になります。 「人材紹介コンサルタント」であれば、実質的に営業に近いよりフラットな組織運営で十分機能していたものが、「スキルアップコーチ」であれば、もっと少人数のチーム構成とし、よりシニアなコーチがジュニアのコーチの育成をしつつ、顧客へのトレーニング、コーチングを提供する形に変えていかなければなりません。また、提供するスキル分野ごとの専門性を高める必要があるため、問題解決力強化、アクティブリスニング力強化、コミュニケーション力強化、リーダーシップ強化、プロジェクトマネジメント力強化、リサーチ力強化などに分けて、効果的なコーチングノウハウを追求していく必要があります。 報酬体系も、一人決めればいくらといった成功報酬に近いものから、一人の顧客にどのくらいの期間キャリアアップサービスを提供したか、いくつのプログラムを受講していただいたか、結果としてどのくらいの総売上になったか、顧客自身の報酬がどう上がっていったかなどに基づく、より長期的視点にたった報酬体系に変えていかなくてはなりません。 事業ビジョンが変わると、すべてが変わる必要があります。   企業文化の再構築 何より大切なことは、企業文化の再構築です。 営業的に決めれば終わり、決めた数が多ければえらい、その後の結果は問わない、次へいこ次!という文化から、一人の顧客の人生を考え、顧客のスキルアップに貢献し成長していただいてなんぼ、という価値観への切り替えが必要で、簡単ではありません。 経営者、役員および社員一人ひとりの一挙手一投足が矛盾なく、この新しい価値観に沿って動くようになるまで、そして最高レベルの運営ができるようになるまで、経営者は口を酸っぱくして、新しい文化の普及をはかっていく必要があります。 口を酸っぱくして言うだけでは足りず、例えば以下のような施策が必要です。 新しい事業ビジョン、事業戦略、組織でどういった売上、利益になるのか中期計画を立てる 顧客へのトレーニング、コーチングプログラムを企画、開発、運営する スキルアップコーチがどういう助言をどういうレベルで提供するのかプランを立案、実行する スキルアップコーチの必要スキルを明確にする 既存の人材紹介コンサルタントのうち、スキルアップコーチに転向できる人材をリストアップする 転向、スキル強化プログラムを実施する […]

ブロックチェーン革命をリードする経営者、足を引っ張る経営者:選手交代

2017年3月13日 赤羽 雄二 0

ブロックチェーン革命がもたらす変化 ブロックチェーン時代には、すべての企業は大変大きなチャンスと、これまでにない危機に直面します。影響度の大きさは一部の産業、企業にとどまりません。 多くの産業の主軸であった「大きいことはいいことだ」がなくなり、「素早いことはいいことだ」「賢いことはいいことだ」という、これまでもその通りであったものの「大きさ」に負けがちであった要件が、はるかに重要な意味を持つようになります。 この要件をどのように満たしていくか、激しい競争が始まっています。   ブロックチェーンとの関わり合い ブロックチェーンとの関わり合いは企業によって異なりますので、それを考えてみると、 ブロックチェーンそのものを作り、提供する ブロックチェーン上にサービスを作り、提供する ブロックチェーン上のサービスを使って個人あるいは企業にサービスを提供する ブロックチェーンに関する導入コンサルティング、システム構築、経営支援を提供する ブロックチェーンから生じるデータ、マーケティングデータなどを活用したコンサルティング、情報を提供する ブロックチェーンを活用したサービスが急激に伸びているものの、自社はまだ縁がない ブロックチェーンが自社の産業・環境にも広がる気配がなくはないが、まだ表だった動きはない ブロックチェーンに接する機会は自社の産業・環境ではないし、今後ともなさそう などになるでしょうか。自社がそのどれに相当するかで、取り組み姿勢は変わってきます。 ちなみに、AとBがブロックチェーンカンパニーと呼ばれるようになります。Cも当面はブロックチェーンカンパニーと呼ばれますが、ほとんどの企業がブロックチェーンを使うようになると、特にそういった名前で呼ばれることはなくなります。インターネットが普及した今、インターネット企業と呼ばれたり、呼んだりする企業がほとんどなくなったのと同じです。   ブロックチェーン革命を生き抜く企業とは 改めて、ブロックチェーン革命を生き抜く企業はどうあるべきなのか、考えてみたいと思います。 ブロックチェーン技術の発展と社会、産業、企業への影響に対して真剣に考え、絶好のチャンスあるいは大変な危機と認識している それに合わせて自社のビジョンと戦略を立て直し、生き抜こうと決意して社長主導で動き始めている ブロックチェーン技術の理解を進めて本格的に取り組む専任チームを作り、優秀な人材には社長自ら会い、ビジョンを語り、採用を進めている 最先端技術の動向、実証実験の進捗状況を把握し、できることから次々に着手している 年功序列を廃止し、力のある人材がリーダーとして活躍している […]

中小企業にとってのブロックチェーン革命:生か死かの瀬戸際

2017年3月6日 赤羽 雄二 0

  前回、前々回と大企業およびベンチャーにとってのブロックチェーン革命のインパクトについてお話しました。今回は、中小企業にブロックチェーンがどのような影響を与えるのかについてお話していきます。   中小企業にとって激動の時代が来た ブロックチェーンはあらゆる企業に影響を与えます。多くの旧態依然とした大企業の変化を加速します。変化できない大企業は遅かれ早かれ淘汰されていきます。大企業の中央集権的な強みが急激になくなっていくからです。 また、インターネットの導入期、発展期を大きく超える急成長ベンチャーが続出します。完備された高速インターネットの上にブロックチェーンが載る形になるため、高速化やモバイル化の進展とともに手探りで進んでいた頃とは比較できないほど素早く事業が拡大していくからです。 しかもICO(Initial Coin Offering)という万人に開かれた新しい資金調達の方法が確立しましたので、数億円、数十億円もの資金が場合によっては一瞬で集まるようになりました。VCや投資銀行の役割も劇的に変わっていきます。大企業との関係で生きていた中小企業にとっては、取引先の大企業もろとも淘汰される可能性があります。 逆に、ブロックチェーンをうまく取り入れて生き残りをはかる大企業を顧客にしたり、それらのサプライチェーンにうまく入り込むことができれば、大企業が構築するブロックチェーンベースのサプライチェーンにおいて、キープレイヤーとして新たな命を得る可能性も高くなります。 コンピュータ導入期、PC導入期、インターネット導入期・発展期などには、大きな地殻変動がありました。その数倍の変化が今まさに始まりつつあります。しかも中小企業にとっては追い風とは言えない変化であり、舵取りが非常にむずかしい激動の時代が来たと言わざるをえません。 生き残りをかけて動くなら今すぐ まだブロックチェーンがどうなるかもわからず、銀行が実証実験をしているだけの状況で、もう少し様子を見たほうがいいでしょうか。 私はそういった待ちの姿勢が命取りになると思います。 この1年の変化は劇的です。1年前はビットコインは使えるのかという議論が多かったのに、今年の1月のダボス会議ではブロックチェーンの議論で持ちきりでした。ダボス会議というのは、大成功したエスタブリッシュメント、勝ち組の集まりで、今の有利な状況を一番変えたくない人たちの集まりです。 今、ブロックチェーンがあらゆる産業、機能に広まろうとしています。世界中で実証実験が始まっています。各国の中央銀行など一番保守的なところがむしろ先陣を切っています。 今ならまだ勉強会に参加したり、実証実験に何とか参加したりして、先端グループに何とか食い込むことができます。先端といっても始まったばかりだからです。日に日にブロックチェーン関連の情報が多く発信されるようになっています。新聞にもどんどん取り上げられます。 船に飛び乗るのなら今です。   社長自ら頭を切り替えるなら 中小企業がブロックチェーン時代を生き抜くには、社長自ら頭を切り替える必要があります。これは相当なチャレンジです。特に、今までメールを部下に任せていたような方はこれを機会に本気でITに取り組む必要があります。 ITに取り組むといっても別にむずかしいことはありません。PCでメールやエクセル、パワーポイントができ、スマホを活用し、Amazonなどでも平気で買い物ができればいいだけです。これをやる気がどうしても出ないなら、やはりちょっと微妙でしょう。 「PCでメールできるかどうかなど、どうでもいいのではないか」と思われる経営者は、大企業ならまだしも、ブロックチェーン時代を生き抜こうとする中小企業の経営者としてはかなりのハンディキャップを負います。 社内のブロックチェーン推進担当者が社長の説得にものすごく苦労します。苦労だけではなく、貴重な時間を無駄にします。そういう状況では、投資判断も的確にできませんし、先端的なベンチャー社長との企業連携交渉ができません。 その中小企業がブロックチェーン関連のコミュニティを作ってそこでリーダーシップを発揮しようとしても、社長がブロックチェーンを理解したまともな挨拶すらできません。 […]

ベンチャーにとってのブロックチェーン革命 :このチャンスを活かすか死ぬか

2017年2月13日 赤羽 雄二 0

  こちらは、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムです。ブロックチェーンが、産業、企業、個人に与えるインパクトについて、「どういったことが起きるのか、何をすべきなのか」について、それぞれの立場の方に合わせて解説していきます。 連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」 ※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる ※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス ※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される ※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を ※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる ※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか 当記事は、その第6回です。   ブロックチェーンはベンチャーにとって20年来のチャンス ブロックチェーンがもたらす産業構造変化とビジネスチャンスについてここまでお話してきました。大企業の存在意義が真正面から問われています(第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる)。中央集権型で規模の経済に甘んじ、仲介者利益を搾取と言うべき形でとり続けてきた大企業が、今後数年で大きな変化を遂げます。 大企業はその性質上、大変保守的になりますので、自ら大きな変化を遂げることは通常ほとんどありません。しかし今回は、深刻な危機がすぐそこに迫っていることを察知した大企業が必死で生き残り策を図っています。実はここにベンチャーにとって20年来のチャンスが生まれています。 20年来、そう、インターネットブラウザが世に出た1993年からの数年と同じくベンチャーがすさまじい勢いで生み出される時期が来たのです。流通業完全制覇への道を着々と進めているAmazonは1994年に設立されました。Yahooは1995年、Googleは1998年です。国内では、楽天が1997年、サイバーエージェントが1998年です。 起業を志す方がどれほど優秀でも、時期が悪ければ逆風が吹き続けます。一方、1993~2000年はベンチャーにとって圧倒的な追い風でした。資金が集まりやすくなります。関心を持ったエンジニアが殺到します。こういうときは、顧客・消費者の感度もなり、事業が急成長します。   様子見をしていると即座に置いていかれる そうは言われても、ベンチャー社長としては、ビットコインもよくわからないし、あやしげな話もよく聞く中でスタンスを決めかねている方が多いのではないでしょうか。ブロックチェーンの実証実験の話は頻繁に聞くものの、どこからどう手をつけたらいいかよくわからない、ということでしょう。 起業準備中の方も、ハードルが高くてリーンスタートアップ的に簡単にアプリを作るわけにもいかず、迷っておられる方が相当いらっしゃるのではないかと思います。起業自体のハードルは以前に比べてかなり下がったものの、アイデア勝負だけで埒が明くようにも思えません。 といって、ここで様子見をしていると、世の中のダイナミックな変化に即座に置いていかれるとほぼ断言できます。 ジェフ・ベゾスやジェリー・ヤンが創業したとき、「すごいことになりそうだ」といてもたってもいられず起業したとは思いますが、ここまでの大発展を見越していたかどうかわかりません。成功した後、最初から確信していたと豪語しがちですが、実は胃に穴が空いてその後いつの間にか治っていたということもあるでしょう。 迷っている時間はありません。今のブロックチェーンがそのまま普及するわけではなく、きっとブロックチェーン2.0、ブロックチェーン3.0、ブロックチェーン4.0と大きく進化していきますが、後になればなるほど参入はむずかしくなります。ブロックチェーンの欠点は次々に克服されます。 今躊躇されている理由をリストアップして、 […]

大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる

2017年2月6日 赤羽 雄二 0

こちらは、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムです。 連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」 ※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる ※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス ※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される ※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を ※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる ※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか 当記事は、その第5回です。   中央集権型しかできなかったので、大企業の存在意義があった これまでのIT技術では、企業活動は、中央で意思決定を行い、中央の顧客データベースを管理し、送金・決済などの諸手続をするのが現実的でした。企業規模が大きいほうが効率がよく、投入資源が大きく、信頼感を担保しやすいため、どんどん巨大化しました。 銀行・証券会社・保険会社も、またFacebookをはじめとするSNSや、Uber、AirBnBなど急成長中の新興シェアリング・エコノミー企業も同じでした。 インターネットにより、一部の企業だけが驚くほど巨大化して数兆~数十兆円の時価総額を謳歌し、中央集権型の高収益事業モデルをひたすら追求することになったわけです。 業界、サービス内容にもよりますが、サービス内容の充実さと信用度の点で大企業には存在意義があり、中小企業やベンチャーでは到底太刀打ちできない決定的な差がつきました。 ブロックチェーンはベンチャーを圧倒的に有利にする ところが、ブロックチェーンが普及すると、中央集権型で信頼を担保する必要がありません。改ざんの恐れがなくなるので、サービスを提供するのがベンチャーであっても、利用者が安心してサービスを使えるようになるからです。 こうなると、銀行からお金を借りなくても、貸したい人と借りたい人がブロックチェーン上のサービスでつながり、一定の手続き、マッチングを通して自由に貸し借りできるようになります。 不動産売買も売りたい人と買いたい人が直接売買できるので、不動産屋さんを通して、高い手数料を払うこともありません。 人材紹介も、30%もの高い紹介料を払わなくても、雇いたい企業と働きたい人が安心して直接出会うことができるようになります。 アフリカやアジアから欧米に出稼ぎに行った方々が故郷の家族に送金する際に、10~20%以上の手数料を銀行などに取られることもなくなります。 信頼性というメリットが全く必要なくなりますので、今度は大企業のデメリットが大きくクローズアップされます。中央集権型を維持するための膨大な数のスタッフ、部門間の壁、煩雑・過剰な書類手続き、意思決定のおそさなどがすべて大企業の足を引っ張ります。 構造的に、もうベンチャーに勝ちようがなくなるわけです。重厚なよろいかぶとで戦って圧勝していたのに、突然戦いが42.195キロのマラソンになったようなもので、どうしようもありません。 本来は、そういった重厚なよろいかぶとは余計だったわけですが、中央集権型のメリットがあまりにも大きかったので許されていた、しょうがないものとされていた、あるいは気づかれていなかった、というだけのことです。 […]