銀行はもういらない?「ブロックチェーン」が金融業界にもたらすインパクト

ここ1年でブロックチェーン技術を取り巻く社会は大きく変化した。連日、ニュースの見出しにブロックチェーンおよびビットコインという言葉が踊っている。「1990年代のIT革命以上」と言われている、ブロックチェーンのインパクトとテクノロジーの進化が巻き起こす第4次産業革命を直前に控え、我々はどう備えればいいのか。『ブロックチェーン入門』(KKベストセラーズ)の著者、森川夢佑斗氏に、ブロックチェーンを実用化した暗号通貨を中心に解説してもらった。

当記事は、『ブロックチェーン入門』の著書、森川夢佑斗氏がBEST TIMESにて連載した内容を再編集し構成しなおした記事です。

 

今ある銀行は必要なくなる

ここ数日は、ビットコイン価格の高騰やビットコイン以外の仮想通貨である「アルトコイン」のバブルが大手メディアでも話題となっています。これら仮想通貨の基盤技術として認識されているのが、「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーン自体は、幅広い分野に活用が可能と言われており、経産省の目算では67兆円の市場規模があると考えられています。ブロックチェーンは分散型台帳技術とも呼ばれており、特に金融分野への活用が見込まれています。とりわけ冒頭でも触れたビットコインの登場は、まさに金融分野に大きなインパクトを与える存在でした。

ビットコインをはじめとする仮想通貨(「暗号通貨」とも呼ぶ。)は、仲介者なしに直接的に(P2P、ピア・ツー・ピア)受け渡しが可能です。つまり、銀行の存在なしにお金の送金が実現します。この特徴を取り上げて、ビットコインの登場により銀行は不要になるのでは?という見出しが多く見られるようになりました。事実その側面はあると考えられますし、ビル・ゲイツ氏も過去に「銀行機能は必要だが、今ある銀行は必要なくなる」と発言しています。

 

銀行の主な3つの業務

もう少し詳しく見ていきましょう。銀行が行う業務は、大きく3つに分類されます。

①預金業務
②為替業務
③貸付業務

預金業務とは、銀行口座を通して預入や引き出しなどお客さまの預金を管理する業務です。為替業務というのは、お金の振込や送金を行う業務のことです。貸付業務は、お客さまにお金を貸す業務のことで、銀行はその利率の支払いによって利益を得ています。

 

ビットコインは、管理者なしで銀行業務を代替している

ここでビットコインの特徴をおさらいしましょう。ビットコインは、簡単にいうと世界共通で利用できる電子マネーです。基盤技術であるブロックチェーンにより支えられています。ビットコインを管理するためのアプリケーションさえ持っていれば、利用者同士で自由に受け渡しが可能です。Suicaを利用するためにSuicaカードが必要であることに似ています。

この時、ビットコインの仕組みを既存の銀行業務に当てはめて考えると、誰がいくらのビットコインを持っているかを管理し、安全に保有することが上記の①に当たる業務であり、利用者間での受け渡しを行うのが②に当たる業務です。

しかし、ビットコインにおいては、誰がどれだけのビットコイン持っているかを、誰か特定の管理者が管理しているわけではありません。世界中で行われた取引内容は、ブロックと呼ばれるデータを記録する箱に格納され、それらが数珠つなぎで更新されていきます。これをブロックチェーンと呼んでいます。そしてブロックチェーンは、複数人で保有されており、利用者は誰かが持っているブロックチェーン内のデータを参照しています。

誤解のないように補足しておくと、ブロックチェーンには、世界中の取引履歴が記録されている分散型台帳を指す場合と、それらを構成する技術体系全体を指す場合とがあります。

次にビットコインの受け渡しも、利用者間で24時間いつでも行うことが可能です。この際も銀行などの仲介者の存在は必要ありません。このインパクトは、特に複数の金融機関が横断して存在する国際送金において大きくなります。

このように銀行が従来担っていた預金業務や為替業務は、ブロックチェーンという技術により銀行のような特定の管理者を必要としなくなりました。

 

フィンテックにより変化する与信

では、銀行の貸付業務については、どうでしょうか。貸付業務は、多岐な業務に渡りますが、基本は銀行がお金を借りたい個人、または法人に対し、本当にお金を貸しても大丈夫かを審査し、契約を結んでお金を貸します。

この時、その個人または法人の信用度合いによって、借りられる金額や利率が決まります。この個人や法人の信用をどのように測るかといえば、これまでの借り入れ履歴やどういった企業に務めているかなどをもとにするのが一般的です。金融機関が、審査を行い、個人や法人に「これだけのお金を貸しても大丈夫」という信用を与える業務であるので、与信業務とも呼ばれています。

最近は新興のフィンテック企業が、新しい取り組みを続々と行っています。例えば、その人が、ソーシャルサービスでどれだけ友人がいるかといった利用状況から評価するサービスやアリババの提供する「芝麻信用」など顧客のこれまでのすべての利用状況データを解析して評価するサービスです。このように従来は金融機関が担っていた与信業務を、他の企業が担うようになってきているのです。

ここからさらに、ブロックチェーン技術の導入によって、そうした企業すら不要になるかもしれません。

 

スマートコントラクトにより貸付業務も自動化する

では、ブロックチェーンに関連して注目されている、「スマートコントラクト」についてお話しします。スマートコントラクトとは、定められた条件に沿って一連の取引を自動で執行することを指します。

定める条件の内容および取引履歴は、すべてブロックチェーン上に記録され改ざんができません。細かい説明はここでは省きますが、たとえば、「自動販売機でお金を入れたあとに、ボタンを押すと缶ジュースが出てくる」といったように、条件に沿って決められたことが、インターネット上で自動的に実行されていくものなのだと思ってください。このスマートコントラクトを用いることで、貸付業務および与信業務を自動化することが可能です。

例えば、太郎さんが1BTCを1か月借りたいとします。太郎さんは、自分が1BTCを1か月借りたい旨と、利率を申告します。今回は、仮に利率を1パーセントとしておきます。

借りたい金額と利率を見て、世界中の人がその人にお金を貸すかどうかを決めます。花子さんが貸してもいいと思い、太郎さんのビットコインアドレスに1BTC送金します。その際に、返金用のアドレスも設定しておき、1か月後までに1.01BTCが返還されれば、自動的に花子さんのビットコインアドレスに送金がなされるという条件をスマートコントラクトとしてブロックチェーン上に記録しておきます。

太郎さんが期日までに、1.01BTCを設定されたアドレスに返還すれば、花子さんの手元に金利を含む1.01BTCが送金されます。

もし太郎さんがお金を返さなければどうなるでしょうか? この場合、花子さんにお金を返してもらう手段はありませんが、この借主がお金を返さなかったという履歴は、ブロックチェーン上に永続的に残ることとなります(太郎さんと花子さんが知り合いの場合は、直訴にいけますが)。

そのため、今後、他の人も、太郎さんに対してお金を貸す可能性は低くなるでしょう。これはまさに金融機関が管理している、顧客の借り入れ状況をもとにした信用スコアと同様の役割を果たします。

金融機関の担っていた機能を民主化する動きとして、金融機関からお金を借りるのではなくインターネット上でお金を借りたい個人(および法人)とお金を貸したい個人がマッチングし、お金の貸し借りをすることを「ソーシャルレンディング」と言います。

矢野経済研究所の調査によると、2015年時点で322億円規模の市場があり、その後も大きな成長が見込まれています。ブロックチェーンやスマートコントラクトで、国内外問わず安価で送金が可能な暗号通貨を用いることで、より自由なソーシャルレンディングが実現する可能性があるのです。

このように銀行の担ってきた業務自体は無くなることはないかもしれませんが、今の銀行システム自体は、ブロックチェーンなどにより大きく代替および変化を余儀なくされていくでしょう。

(※ビットコインブロックチェーンは、現在、スマートコントラクトを実装していないため、上記の例のようなことはできませんが、将来的には可能となる見通しです。スマートコントラクトを実装したブロックチェーンとしては、「イーサリアム」が代表的です)。

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森川 夢佑斗
About 森川 夢佑斗 4 Articles
1993年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部在学中に、アルタアップス株式会社を創業。同社、代表取締役。主にブロックチェーン技術をビジネス的な観点からみた情報発信を行っており、在日中国人向けの『日中商報』でのコラム連載や各種メディアでの執筆からセミナーの開催など積極的に活動している。著書にAmazon.co.jpの書籍における暗号理論カテゴリー1位を獲得した『一冊でまるわかり暗号通貨2016~2017』(幻冬舎)など。