イギリスの汚染タマゴ問題に見るブロックチェーンの可能性

 

2017年8月、ヨーロッパで流通している食用卵が、人体に健康被害を及ぼすanti-lice agent(抗寄生虫剤)に汚染されていたことが判明し、大きな問題になっています。イギリスの食品基準庁の発表によると、薬剤は主にオランダやベルギーで使用されており、イギリス国内において確認されている範囲で21,000個の汚染された卵が流通していたとのことですが、被害の全容は未だつかみ切れていない様子です。

2017年3月にはブラジルで発がん性物質が含まれる鶏肉が出荷されていた食肉不正問題が話題になるなど、食品による健康被害問題が世界中で後を絶ちません。しかしこのような問題は、ブロックチェーンの導入によってその解決に期待できるかもしれません。

食のサプライチェーンを次のレベルへ

食品業界のサプライチェーンは大きく複雑です。生産者から数多くのプレイヤーを中継することで、最終的に消費者の元に食品が届けられます。しかし、その過程の取引が電子化されていなかったり、取引記録が各事業者のドメイン内で管理されていることもあり、サプライチェーンを俯瞰して食品の流通経路を完璧に、迅速に辿ることは難しくなっています。。今回の汚染卵の事件でも、スーパーマーケットがこの問題に直面し、問題の原因特定まで数日に渡る時間がかかっている模様です。しかしこの複雑なサプライチェーンも、ブロックチェーンを活用することによって迅速に問題の原因を特定できるようになると考えられています。ブロックチェーンを用いることの長期的なメリットは以下の5つがあると考えられます。

1. 食品の信頼性の向上→ブランド価値向上 / 食品偽装の減少

2. 被害拡大防止がしやすくなる

3. 配送品質の向上

4. サプライチェーンにおけるコスト削減→利益率向上

5. 環境問題解決への貢献

ブロックチェーンは複雑なアルゴリズムによって守られており、取引記録が改ざんされる恐れが非常に低いです。また、分散型台帳を辿れるようになることで流通経路の透明化され、製品の出所を正確に把握することができるため、食品偽装の減少にも期待することができます。これは長期的にはブランド価値を高めることにつながり企業にとって大きなメリットとなります。

万が一食品の汚染が発覚した際も、分散型台帳で流通経路を辿ることで、考えられる汚染の原因を短時間で特定できます。それだけではなく、その食品がどのエリアに流通したのか瞬時に把握できるため、被害の拡大防止策を今まで以上に早く実施することができます。

さらに、ハードウェア面でもブロックチェーンの恩恵を受けられるかもしれません。ブロックチェーンとIoTを組み合わせることによって、鮮度管理が徹底した配送を実現することができるようになるでしょう。例えば、ケニアの養鶏場からイギリスに届けられる卵は、その運搬過程で最低4℃から最高10℃までと、冷蔵温度に大きな幅がありますが、ブロックチェーンとIoTと結びつけることによって、このような状態が可視化され、今後配送品質が向上する可能性があります。

また、支払いに暗号通貨(仮想通貨)を用いる場合、銀行などの第三者機関に手数料を支払う必要がなくなります。サプライチェーン上の各事業者が銀行を介さずに暗号通貨で直接取引するようになれば、業界全体で大幅なコスト削減につながるでしょう。各事業者は削減されたコストの分、利益率を上げることができます。

そして最後に、ブロックチェーンの導入が、今後環境問題の解決にも貢献する可能性があります。保全生態学者のGuillaume Chapron氏はこれまでの自然資源の過剰消費や環境汚染は、説明責任のないビジネスを行う者によって引き起こされたと述べています。しかしブロックチェーンにより、企業の製品製造過程で環境に与えた負荷が明確になることで、環境への配慮を促進され、環境汚染が改善される可能性がある、とChapron氏は主張しています。

IBMの大規模コラボレーション

 食品サプライチェーンにブロックチェーンを導入する動きは既にでてきています。実際に2017年8月23日、IBMはDole、Driscoll’s、Golden State Foods、Kroger、McCormick and Company、McLane Company、Nestlé、Tyson Foods、Unilever、Walmartといった世界的食品販売企業と、大規模なブロックチェーンのコラボレーションに取り組むことを発表しました。今後もブロックチェーンの食品サプライチェーンへの活用が進みそうです。

 

[元記事URL]

Blockchain could have solved Dutch egg supply chain worries”, Information age

http://www.information-age.com/blockchain-solved-dutch-egg-supply-chain-worries-123468052/

”IBM、大規模なブロックチェーンのコラボレーションを発表、Dole、Driscoll’s、Golden State Foods、Kroger、McCormick and Company、McLaneCompany、Nestlé、Tyson Foods、Unilever、Walmartとともに世界規模の食品の安全性に対応”, IBM ニュースリリース, 23 8 2017

https://www-03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/53028.wss

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BBC編集部
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