スマートコントラクトのプロダクト活用

第3回目となる本記事では、ブロックチェーンの分散型データベースとしての側面に注目して、解説を行っていきたいと思います。

 

スマートコントラクトとは

まず、スマートコントラクトとはなんなのでしょうか。あえて一言でいうならば、「人の手を介さずに一連の取引が自動的に実行されること」です。ここで取引とは、契約や合意をもとに金品や役務のやり取りを行うことです。

さらに、取引において重要なポイントは以下の2つです。

  • 契約や合意の内容が取引中に変更されないこと
  • 所定のやり取りが正しく実行されること

より、スマートコントラクトと取引について理解するために、これまでの取引形態の変遷についてみていきます。

 

これまでの取引形態とスマートコントラクト

現在まで人の行う取引の形態は、以下のように進歩してきており、一番右がスマートコントラクトに当たる形態です。順を追って説明していきます。

直接取引とは、昔ながらの物々交換を想像するとわかりやすいかと思います。人類は、紀元前3世紀以前から、物々交換を行っていたようです。その後、紀元前3世紀は貨幣が生まれた時期にあたります。この頃から人やモノを媒介として取引が出てきたとなると、仲介取引の発生もこの時期に近いと予想されます。その後、1990年頃から急速なインターネットの発達によりECはもちろんのことあらゆる電子取引が登場しました。現在は、パソコンからガラケー、そしてスマホとデバイスの変遷はあるものの、取引形態は管理者ありの電子取引です。そして、2009年にビットコインが始動して新たに登場した取引形態が、管理者なしの電子取引です。ビットコインは、ご存知の通り銀行などの管理者なしに送金が可能です。これも一つのスマートコントラクトと呼べるでしょう。しかし、どうしてこれまでのインターネットを通じた電子取引で実現困難だったことが、実現可能となったのでしょうか。そこには、ブロックチェーンの存在があります。

 

ブロックチェーンとスマートコントラクト

ブロックチェーンの特徴として、以下の2点が挙げられます。

  • 一度記録されたデータの改ざんが困難であること
  • 管理者なしに処理が実行されること

この特徴を用いることで、前述の取引におけるポイントを充足することが可能です。つまり、取引の契約や合意の内容をブロックチェーン上に記録し、改ざんが困難な状態にした上で、その内容通りに管理者なしに実行を行わせることができます。

(参考記事:ビットコインを支える技術「ブロックチェーン」とは

これを実現したのが、ブロックチェーン「イーサリアム」です。

イーサリアムは、独自の開発言語である「Solidity」を備えており、契約や合意の内容をプログラミングコードとして記述し、ブロックチェーン上で実行させることができます。イーサリアムのおかげで、スマートコントラクトの活用範囲が広がり、今では多くの企業やプロジェクトがスマートコントラクトを用いたプロダクトの開発に着手しています。

スマートコントラクトは非常に大きな可能性を持っており、メリットとしては、(ブロックチェーンのメリットと被る部分もありますが、)管理者がいないことによるコストカットや時間や場所といった物理的制約の排除、カウンターパーティリスクの軽減、透明性の担保などが挙げられます。

従来のユーザー同士を繋げるプラットフォームであるUberやAirbnbなどのアプリケーションでも中央集権型システムが一般的であり、ユーザーの間に必ず管理主体が介在していました。しかし、これらはすべてスマートコントラクトを利用することでイーサリアム上で管理者なしに分散的に構築することができます。実際に、いくつものプロジェクトが立ち上げっています。

(参考記事:イーサリアム・ビギナーズガイド-ビットコインとの違いとその活用可能性

 

イーサリアム以外のスマートコントラクト用ブロックチェーン

スマートコントラクトが注目を集めるにつれて、イーサリアム以外にもスマートコントラクトが実行できるブロックチェーンが登場してきました。これらのブロックチェーンは、イーサリアムが今後抱えるであろう問題の解決や利便性の向上を目指しています。方向性としては大きく2つに別れており、イーサリアムと同様に完全に独自のブロックチェーンを構築するパターンと、他のブロックチェーンのサイドチェーンとして構築するパターンです。

独自のブロックチェーンを構築するものとしては、「Lisk(リスク)」と「aeternity(エタニティ)」などがあります。両方ともLiskは、Liskのメインチェーンを構築しプロダクト毎にサイドチェーンを構築していきます。aeternityは、オフチェーンにて処理を行うことにより、多数のスマートコントラクトを同時に走らせることを実現します。

サイドチェーンを構築するものとしては、「RootStock(ルートストック)」があります。これは、ビットコインブロックチェーンのサイドチェーンを構築し、その上でスマートコントラクトが扱えるようにしようというものです。これにより、ビットコインブロックチェーンの堅牢なセキュリティとスマートコントラクトといういいとこ取りを行えることが特徴です。一方で、今ではイーサリアムもネットワークへの参加者が増えてきているのでセキュリティも安定してきていると言えるかもしれません。

このようにスマートコントラクトを扱えるブロックチェーンも多様化してきています。ブロックチェーンの実用化として、スマートコントラクトを用いたユースケースは、今後増加していくことでしょう。次回は、よりブロックチェーン特有のプロダクトの形である完全P2Pアプリケーションと自律型分散組織(DAO)について解説したいと思います。

 

ブロックチェーンを活用したプロダクトは、今後どのように発展していくのだろうか。当連載「ブロックチェーンプロダクトの現在と未来」では、予想されうるブロックチェーンプロダクトを4つに分類し、そのそれぞれについて現在の国内外の事例に触れながら未来における予測と課題について森川 夢佑斗氏(Alta Apps株式会社 代表取締役)が解説していきます。
当記事は、その第2回目となります。

連載:「ブロックチェーンプロダクトの現在と未来」
第1回:「ブロックチェーンプロダクトの4分類」
第2回:「分散型データベースとしてのブロックチェーン活用」
第3回:「スマートコントラクトのプロダクト活用」
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森川 夢佑斗
About 森川 夢佑斗 4 Articles
1993年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部在学中に、アルタアップス株式会社を創業。同社、代表取締役。主にブロックチェーン技術をビジネス的な観点からみた情報発信を行っており、在日中国人向けの『日中商報』でのコラム連載や各種メディアでの執筆からセミナーの開催など積極的に活動している。著書にAmazon.co.jpの書籍における暗号理論カテゴリー1位を獲得した『一冊でまるわかり暗号通貨2016~2017』(幻冬舎)など。