ベンチャーにとってのブロックチェーン革命 :このチャンスを活かすか死ぬか

 

こちらは、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムです。ブロックチェーンが、産業、企業、個人に与えるインパクトについて、「どういったことが起きるのか、何をすべきなのか」について、それぞれの立場の方に合わせて解説していきます。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか
当記事は、その第6回です。

 

ブロックチェーンはベンチャーにとって20年来のチャンス

ブロックチェーンがもたらす産業構造変化とビジネスチャンスについてここまでお話してきました。大企業の存在意義が真正面から問われています(第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる)。中央集権型で規模の経済に甘んじ、仲介者利益を搾取と言うべき形でとり続けてきた大企業が、今後数年で大きな変化を遂げます。

大企業はその性質上、大変保守的になりますので、自ら大きな変化を遂げることは通常ほとんどありません。しかし今回は、深刻な危機がすぐそこに迫っていることを察知した大企業が必死で生き残り策を図っています。実はここにベンチャーにとって20年来のチャンスが生まれています。

20年来、そう、インターネットブラウザが世に出た1993年からの数年と同じくベンチャーがすさまじい勢いで生み出される時期が来たのです。流通業完全制覇への道を着々と進めているAmazonは1994年に設立されました。Yahooは1995年、Googleは1998年です。国内では、楽天が1997年、サイバーエージェントが1998年です。

起業を志す方がどれほど優秀でも、時期が悪ければ逆風が吹き続けます。一方、1993~2000年はベンチャーにとって圧倒的な追い風でした。資金が集まりやすくなります。関心を持ったエンジニアが殺到します。こういうときは、顧客・消費者の感度もなり、事業が急成長します。

 

様子見をしていると即座に置いていかれる

そうは言われても、ベンチャー社長としては、ビットコインもよくわからないし、あやしげな話もよく聞く中でスタンスを決めかねている方が多いのではないでしょうか。ブロックチェーンの実証実験の話は頻繁に聞くものの、どこからどう手をつけたらいいかよくわからない、ということでしょう。

起業準備中の方も、ハードルが高くてリーンスタートアップ的に簡単にアプリを作るわけにもいかず、迷っておられる方が相当いらっしゃるのではないかと思います。起業自体のハードルは以前に比べてかなり下がったものの、アイデア勝負だけで埒が明くようにも思えません。

といって、ここで様子見をしていると、世の中のダイナミックな変化に即座に置いていかれるとほぼ断言できます。

ジェフ・ベゾスやジェリー・ヤンが創業したとき、「すごいことになりそうだ」といてもたってもいられず起業したとは思いますが、ここまでの大発展を見越していたかどうかわかりません。成功した後、最初から確信していたと豪語しがちですが、実は胃に穴が空いてその後いつの間にか治っていたということもあるでしょう。

迷っている時間はありません。今のブロックチェーンがそのまま普及するわけではなく、きっとブロックチェーン2.0、ブロックチェーン3.0、ブロックチェーン4.0と大きく進化していきますが、後になればなるほど参入はむずかしくなります。ブロックチェーンの欠点は次々に克服されます。

今躊躇されている理由をリストアップして、

  1. それらの理由が本当に決定的か
  2. 自社には本当に無理なのか
  3. 自社で取り組むとしたらどうすべきか
  4. 取り組まないときのリスクは何か

などをぜひ書いてみられてはどうかと思います。通常、動くリスクのほうが大きいと判断して何もしないことが多いと思いますが、今回は動かないリスクのほうが何倍も大きいのではないかと思います。ベンチャーにとっての生命線である資金調達も、ブロックチェーンベースで注目を浴びるベンチャーが話題を独占してしまうでしょう。

 

ベンチャーにとってのブロックチェーン分野

ベンチャーにとってのブロックチェーン分野は大きく3つあります。

一つは、ブロックチェーンそのものの開発に取り組むことで、これは最優秀のエンジニアを確保し、資金的背景があるときのみ可能です。日本でも不可能ではありませんが、世界中のエンジニアを国籍を問わず採用し、活かすことができる経営者のグローバルリーダーシップ、ベンチャー経営力、経営者としての魅力、度量が必要です。

もう一つは、ブロックチェーン上のサービスです。ブロックチェーンを作ることは大変ですが、ブロックチェーン上のサービスを作ることははるかに容易です。イーサリウム上でも、また新たに生まれる他のブロックチェーン上でも可能です。ASPも次々に生まれていくと思います。AIに関して、IBM Watsonが次々に提携を重ね、またIBM Watsonをベースとしたサービスが何千と生まれているように、です(ちなみに、IBMはWatsonのことをCognitive systemと呼び、AIとは呼んでいません。自然言語を理解・学習ものの、人工知能ではない、ということですね)。私はここが狙い目だと思いますが、一方、参入障壁は時間がたてばたつほど低くなるので、2,3年以内にレッドオーシャンになります。レッドオーシャンになる前に橋頭堡を築くことができる独自性が必要です。

最後は、大企業や中堅企業のブロックチェーン導入へのコンサルティングという分野があります。ただ、コンサルティングというのは、結構微妙な業種で、ただ取り組んでも労働集約的なため、成長しません。優秀なコンサルタントの数しかクライアントを開拓できず、価値も提供できず、スケールしづらい、という当たり前のことです。一方、コンサルティングから始めて、それをシステムに載せたり、ASP提供したりすることができれば急に全世界を相手にすることができます。デジタルマーケティングを仕組みとしてサポートするHubSpotは出自は違いますが、そういう要素をうまく活かした例ですね。

ブロックチェーンの可能性をみすえた企画力がベンチャーの生死を決します。ブロックチェーンビジネスは改ざんができない、スマートコントラクトで何でも自動化できる、決済コストが従来より1~2桁低いということで、従来のビジネス上の前提や制約条件が全部崩れます。

これまでの物の見方に全くとらわれない鋭さが必要です。企画に慣れた人でもさらに頭を柔軟にする必要がありますので、助走期間も含め、一刻も早く着手することをお勧めしたいと思います。

 

エンジニアの早期確保

どこをねらうにせよ、ブロックチェーンに携わることのできるエンジニアの確保が必須になります。ベンチャー経営者がエンジニアである必要はありませんが、技術に対しての知見と洞察力が不可欠です。ソーシャル目覚ましやEコマース以上に、経営者の資質によってエンジニアが集まるか集まらないかが決まります。

文系だから、ビジネスしかわからないから、営業しかわからないから、というのをやめて、ブロックチェーンが今後の社会、産業、企業、個人をどれほど大きく変えるかをぜひ一緒に議論していきましょう。私も運営に携わっているブロックチェーンビジネス研究会では月次でミートアップを開催していますし、それ以外にもかなり多くの勉強会、研究会が開催されています。

ただ、ビジネスとは言え、一攫千金的な雰囲気、においを出すと、エンジニアは寄ってきません。ブロックチェーンを活かし、世の中に大きく貢献したいという崇高なビジョンを持った方にのみ、チャンスが訪れます。

これはどの時代でも、大成功するベンチャーの前提条件ではありますが。

 

ご意見、ご質問は akaba@b-t-partners.com までお気軽にお寄せください。すぐにお返事します。

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。