ブロックチェーンが生み出す新たなビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス

こちらは、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムです。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
当記事は、その第2回です。

インターネットの限界を一気に超える

前回の「ブロックチェーンが産業、企業、個人に及ぼすインパクト」で見たように、ブロックチェーンが産業や企業の環境、活動を大きく変えていきます。

1993年のブラウザの開発により、インターネットが急激に広がって産業と社会を大きく変えたように、ブロックチェーン技術が2017年以降、大きな影響をもたらします。

インターネットと違ってデータ改ざんの恐れがなく、騙される心配がなくなる上、スマートコントラクトにより、これまで考えられなかった契約の自動化が進み、決済コストも大きく下がります。

これまでインターネットで対応できなかったり、あるいは対応しづらかったりした分野にも広く導入されるので、インターネットの限界を一気に超えていきます。

特に、クレジットカードの情報を入力するのがこわい、自分の個人情報がさらされるのがこわい、インターネットで物を買うとき騙されるのが怖い、買ってすぐ壊れたときにどうしたらいいのかわからないのがこわい、といった精神的なブレーキが一気になくなっていくことがビジネスチャンスとして非常に大きいと思います。

 

産業構造が変わってチャンス

中央集権型の最たるものであった銀行の存在意義が揺るぎます。銀行を経由した間接金融に頼らなくても、借りたい企業が貸したい企業、個人から直接借りることが可能となり、その動きが最初は徐々に、途中からは加速度的に増えていくからです。

借りたい企業に返済能力があるのかを判断するために銀行の与信部門がありましたが、大変な人手をかけた割にそこまで正確なものではありませんでした。取引の全貌を正確に把握することが簡単ではないからです。悪意がなくてもそうですが、もし悪意を持って改ざんされている場合に見破りにくいことは、直近の東芝の不正会計や、歴史上の多くの粉飾決算事件を見ても明らかです。

シャープの実質的倒産と台湾企業による買収も、メインバンクが事業の実態を正確に把握していれば、とっくに手が打てたはずです。

これらに対し、ブロックチェーンによる過去の取引状況の自動確認のほうが、手間が全くかからず信頼できます。貸し出し可能額については、その企業に関する全データを基に瞬時に計算できます。

銀行は、社会的信用を基に、貸したい企業、個人からのお金をプールし、特定企業、個人に貸し出していました。莫大な費用をかけてです。それも、銀行を通さずにできるようになります。

そのため、過去数百年の企業活動を支えてきた銀行という一大産業が変わります。

証券業界も同様です。資金を出したい企業、個人のお金を集め、一定の基準を満たした企業に投資するために、証券業界が生まれました。ところが、「上場最高値」IPOや、上場後不正が発覚する企業が続出し、この業界の改善課題がすでに露呈しています。

これに代わる、企業の資金調達手段がP2P投資やICO(イニシャル・コイン・オファリング)などの形で次々に始まっています。P2P投資では、エンジェル投資家のグループが投資を受けたいベンチャー多数をプールし、ある程度のデューデリジェンスをし、成功確率の高い順に投資をするといったスキームがすでに始まっています。

ブロックチェーンベースでの、企業情報提供、過去取引の分析、競合状況・業界状況の分析、個々人の投資ポートフォリオの分析と改善、投資案件の自動選択などに大きな事業チャンスが生まれていきます。

 

プレイヤーが変わってチャンス

運転手を雇用しないマーケットプレイスであるUberがタクシー業界を席巻すると思われましたが、ブロックチェーンにより、移動サービスを提供したい運転手と、移動したい個人がそれぞれの相手の過去の取引記録を信用し、直接やりとりすることができるようになります。Uberではなく、より安価で信用できる他のプレイヤーが続々と生まれます。

これにより、Uberによる中間搾取や、Uber株主だけが時価総額6兆円を享受することがなくなります。もちろん、既存のタクシー会社も淘汰され、大きな事業チャンスが生まれます。

既存のタクシー会社による旧態依然とした経営形態や、それに代わるはずだったUberによる業界独占の弊害が解決され、高齢者向け、女性向け、妊婦向け、代理お届け向けなど、さまざまな移動サービスが生まれ、より健全な競争が始まります。

民泊のAirBnBも同様です。AirBnBがホテル・旅館業界を変えつつ、そのAirBnBよりさらに効率的なサービス提供をする事業チャンスが生まれていきます。中間搾取のない、個々の信用に基づくサービスが多数生まれます。

 

ビジネスモデルが変わってチャンス

ブロックチェーンにより、売上、月額定額支払い、広告収入といったビジネスモデルが大きく代わり、使っただけ支払うというやり方が中心になっていきます。スマートコントラクトや決済手数料低下により、人手をいっさいわずらわすことなく、その都度、自動で請求、あるいは月末にまとめて請求といったことが可能になります。

例えば、自動車は売り切りが普通で、消費者は高額を払って自分専用に購入し、使っていました。高度成長期以降、車を持つことが重要なステータスだったので、週末に一度しか乗らなくても高い車を買い、高い駐車場を払い、無駄な所有をするしかなかったと思います。しかも数年で買い換えることが普通でした。企業が売上を上げるために、資源の無駄使いを奨励してきましたし、消費者がそれに踊らされていました。

車はもっているだけで価値が急激に落ちますので、個人の資産は、無駄に消費されます。車を保有することから、必要に応じてサービス享受する形に変わることで、新たな事業チャンスが生まれていきます。

TV、冷蔵庫、洗濯機なども同様です。洗濯を毎日する人も、週に一度の人も、同じ値段で洗濯機を買わなければならなかった状況から、使用量に応じての支払いになります。コインランドリーはすでに洗濯機に置き換わるサービスになっていますが、洗濯物を持っていって一定時間待ち、持ち帰ることは決して有意義な時間の使い方ではありません。自宅の洗濯機が洗濯サービス企業から提供され、コインランドリーと同じように使用量に応じて支払う日がくると考えています。

 

個人の環境が変わってチャンス

ブロックチェーンにより、物を買わず、必要に応じてサービスを受けるように変わっていきます。過剰消費も資源の無駄使いも減ります。既存企業の一部は自己変革を進めていくでしょうが、大半は変わりきれず、新たなベンチャーがそういった事業チャンスをものにしていきます。

個人の支払いのしかたも大きく変わっていきます。

従来、現金、クレジットカード、インターネット振り込みなどをするため、銀行、クレジットカード企業に頼る必要がありましたが、今後は他の手段が提供されるようになっていきます。税金や電気・水道料金を税務署やコンビニで支払うため出かけていく必要がありましたが、そんな無駄な時間の使い方は許容できなくなっていきます。

家探しは、従来、不動産屋さん何軒も回って膨大な時間を取られていました、それでいて、満足度の高い物件に巡りあうことは決して簡単ではありません。ブロックチェーン時代には、スマートコントラクトを通じてはるかにスムーズかつ効率よく絞りこむことができるようになります。

ブロックチェーンベースでの、不動産情報の閲覧、物件の3D表示、VR表示、購入決定、清掃サービス決定、賃料の自動振り込み、ルームシェア設定などに大きな事業チャンスが生まれていきます。

 

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。