分散型データベースとしてのブロックチェーン活用

第2回目となる本記事では、ブロックチェーンの分散型データベースとしての側面に注目して、解説を行っていきたいと思います。

従来のデータベース管理方式

私たちが普段利用しているWebサービスやスマホアプリ、業務システムで利用される個人情報などのテキストデータや画像や動画といったデジタルコンテンツは、基本的にそのサービスやシステムを運用する事業者が個別に所有するデータベース内で管理されています。

例えデータの内容としては同じものでも管理している事業者が異なれば、異なるデータベースに保管されます。複数のサービスで何度も氏名や住所などの同じ情報を登録しなくてはいけないことを思い出していただくとイメージしやすいかと思います。同じ情報なのに、複数の事業者のデータベースに重複して管理をすることは、登録側も管理側も無駄が多いように感じられます。同じ情報を、複数の事業者が一つのデータベースで管理することはできないのでしょうか。オフラインであれば、私達の身の回りのものでそれを実現している例があります。それは、運転免許証やパスポートです。私たちは、これらを飲食店やコンビニの店員に見せることで、生年月日から未成年かどうかを判断したり、顔写真とを見比べて本人確認を行ったりします。これは運転免許証やパスポートの発行を国が担っており、これらが正しい情報確認のもと発行されていると飲食店やコンビニが信用することで成り立っています。つまりは、国が間違った情報を出さないことおよび運転免許証やパスポート自体が偽造されたものではないという信用によって成り立っています。

つまり、以下の2点が重要となります。

  1. 最初に入力された情報が正しいと信頼できること
  2. 入力された情報が、改ざんおよび複製されないこと

1については、情報が正しいことを確認するために複数のプロセスを経て国が発行をしていることで担保されています。2については、運転免許証やパスポートは、円などと同様に物理的に改ざんや複製が困難なことで担保できています。

 

では、インターネット上ではどうでしょうか。ある特定のデータベース内の情報を複数の事業者が参照するということは、もとになるデータの正確性および安全性が重要となってきます。それについて、インターネット上の場合、大きく2つの問題が存在します。

  • 記録された情報の誤りや中央管理者による不正
  • 外部からのデータ改ざんなどのセキュリティ問題

国ほど公的な機関でしたらある程度信用しても問題ないでしょうが、民間の企業が行う場合、そのデータが本当に正しいのか、また内部で不正が行われていないかといった懸念が生じます。

また、外部からデータベースへのアクセスを可能にするということは、それだけ脆弱性のある部分を外部にさらしてしまうという危険性を持っています。そのため、例えば個人情報であったり銀行口座の残高など機密性の高い情報になればなるほど、ハッキングリスクの恐れから外部への公開を簡単にはできなくなります。(最近は、銀行APIの公開も増えてきてはいますが。)

上記のような理由から、データベース内の情報を複数の事業者が共有し利用するということが、なかなか進んできませんでした。

 

課題を克服し分散型データベースを実現したブロックチェーン

ビットコインとよくセットで語られることの多いブロックチェーンですが、ブロックチェーンは上記で出たような問題を解決し、複数の事業者が参照できる分散型データベースとしての機能を満たしています。ブロックチェーンは、一つの事業者が集中的にデータを管理するのではなく複数の事業者で分散的にデータを管理することで、改ざんを困難にしています。これを実現するために、特徴的なデータ構造や公開鍵暗号方式、プルーフ・オブ・ワークなどの仕組みがありますがここでの説明は割愛します。

分散型データベースとしての特徴をビットコインを例にしながら見ていきましょう。まず、ビットコインのデータは、すべて公開されており見ようと思えば誰でも見ることができ、こちらのブロックエクスプローラーと呼ばれるWebツールを利用すると、世界中で行われているビットコインの取引を確認することが可能です。つまりは、ブロックチェーン上にあるデータを誰でも参照して利用できるわけです。僕が仮にアドレスAというものを所有しており、そこに0.1BTCが紐付いているとします。サービスXで、僕が自分のアドレスを登録した場合、そのサービスはビットコインブロックチェーンを参照することで、僕のアドレスAの残高を知ることができます。これは、他のサービスYであろうがサービスZであっても同様です。僕のアドレスさえわかれば、僕のビットコインの残高を知ることができます。そして、僕のアドレスにあるビットコインの残高は、ブロックチェーンの特徴として技術的に改ざんが困難です。また、ビットコインの送金は原則として所有している本人しかできません。(サービスの設計次第ではそうではない場合があります。)そのため、ブロックチェーン上に記録されているデータをサービスX~Zといった事業者は信用することが可能なのです。

 

ビットコインの情報以外を記録することで柔軟な活用を

ビットコインブロックチェーンには、「どのアドレスからどのアドレスにいくらのビットコインが送金されたか」がタイムスタンプと共に記録されており、それをもとに「どのアドレスにどれだけのビットコインが保有されているか」も知ることができます。主にビットコインブロックチェーンには、これらの情報しか記録されていないのですが、そこに追加の情報を記録することで、ブロックチェーンの技術的な恩恵にあやかりながらビットコイン以外のデータを記録し参照する試みが増えています。

例えば、Factom(ファクトム)というプロジェクトは、文書データを独自の処理を行った後に、ビットコインブロックチェーン上に記録することで、どのタイミングでどの文書が存在したかを証明します。これは、研究論文や特許などにおいて、どちらが先かを争う場合に有効でしょう。現在ですと、権威ある機関に提出することで、それらを証明していますが、技術的に改ざんができないブロックチェーン上で記録ができるのであれば、そのような機関を通さずとも文書の存在の証明を公的に行えます。その他にも、土地の登記情報やダイヤモンドの所有権をブロックチェーン上に記録する試みが存在します。

 

ブロックチェーンにより、価値移転が効率化される

ブロックチェーンを利用する大きなメリットとして、改ざんができず複数の事業者が同時に参照できることに加えて、データの唯一性を保ったまま、利用者間での移転が可能です。ビットコインなどが利用者間で直接送り合うことができるのと同様です。例えば、ブロックチェーン上に記録された土地の登記証明書やダイヤモンドの所有権を他の利用者(厳密には、他のアドレス)に移転することが可能です。従来書類ベースで公的な機関を介して行われていた煩雑な取引が、ブロックチェーンを用いることでインターネットを通じ簡単に行うことが可能になります。

このように土地やダイヤモンドといった資産の所有権情報をブロックチェーン上に記録・管理する活用領域を「スマートプロパティ」と呼ぶこともあります。同分野でのブロックチェーン活用については、今後多くの事例が登場することが予想されます。

 

分散型データベースとしての活用による可能性と懸念

これまで解説してきたように、ブロックチェーン上に記録されたデータは、複数事業者が改ざんなどの心配なしに参照することができます。そのため、これまで共有が難しかったデータについてもセキュリティを担保した状態で共有することができるようになるでしょう。さらに、ブロックチェーン上で利用者がP2Pで取引できるので、これまで複雑な手続きや公的機関を通す必要があった領域で、コスト削減や効率化によるスピードアップも見込めるでしょう。

その一方で、ブロックチェーンに最初に記録するデータが正しいものかといった部分が、課題となります。冒頭で触れた運転免許書やパスポートの例ではないですが、一度発行してからは物理的に改ざんや複製が困難なため、複数の事業者が安心して参照できます。ブロックチェーン上のデータも似たような役割を果たすですが、最初の情報が誤っていては意味を為しません。ブロックチェーンを分散型のデータベースとして活用する際は、この部分が気をつけなければならないポイントです。

引き続きブロックチェーンの活用方法について見ていきたいと思います。次回の連載では、スマートコントラクトに焦点を当てていきたいと思います。

ブロックチェーンを活用したプロダクトは、今後どのように発展していくのだろうか。当連載「ブロックチェーンプロダクトの現在と未来」では、予想されうるブロックチェーンプロダクトを4つに分類し、そのそれぞれについて現在の国内外の事例に触れながら未来における予測と課題について森川 夢佑斗氏(Alta Apps株式会社 代表取締役)が解説していきます。

当記事は、その第2回目となります。

連載:「ブロックチェーンプロダクトの現在と未来」
第1回:「ブロックチェーンプロダクトの4分類」
第2回:「分散型データベースとしてのブロックチェーン活用」
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森川 夢佑斗
About 森川 夢佑斗 4 Articles
1993年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部在学中に、アルタアップス株式会社を創業。同社、代表取締役。主にブロックチェーン技術をビジネス的な観点からみた情報発信を行っており、在日中国人向けの『日中商報』でのコラム連載や各種メディアでの執筆からセミナーの開催など積極的に活動している。著書にAmazon.co.jpの書籍における暗号理論カテゴリー1位を獲得した『一冊でまるわかり暗号通貨2016~2017』(幻冬舎)など。