ブロックチェーン革命を推進できる人材の早期育成:チャレンジできるリーダーを確保

根本的な改革なので、経営者の右腕が必要

ブロックチェーン革命は根本的な改革なので、経営者の強いリーダーシップに加え、経営者の右腕がどうしても必要になります。経営者がどれほど能力があり、かつブロックチェーン革命にコミットしていても、資金繰り、顧客対応、トップセールス、中長期計画の立案・合意、新商品開発、人事および人事評価、提携交渉、労組対策、株主対策、投資家対応、地域対応など、経営者の本来業務だけで目の回る忙しさだからです。

これら全部を滞りなく進めつつ、ブロックチェーン革命を他社に負けずに推進することは、到底一人でできません。

どうしても経営者の意をくんで改革を力強く推進する、経営者の右腕が必要になります。経営者が1を言うと真意を理解し、先を読み、必要な確認をへて、1あるいは1.5くらいまで推進できる人材です。

これを「ブロックチェーン化推進リーダー」と呼びます。

通常は、副社長、取締役、経営企画室長クラスになります。問題把握および解決力があり、世界のブロックチェーンの最新動向を知ってフォローする好奇心と理解力があり、社内の反対を押し切って丁寧に実証実験や導入を進めるプロジェクトマネジメント力、リーダーシップ、調整力、コミュニケーション力、政治力、外部との交渉力、人脈などがあり、という社内の最強人材ですね。

本当に資質がよければ、年齢、社歴はそこまで問いません。最悪、外部からの採用もありますが、できれば入社1,2年たっているほうが余計な摩擦が少なくなります。

 

常識、これまでのやり方にチャレンジできること

ブロックチェーン化推進リーダーは、経営者の右腕として社内の常識、これまでのやり方にチャレンジすることが必要です。内容の善し悪しではなく、変えようとするそのものに対して強い反対が起きますので、冷静に問題点と解決策を考え、古くなってしまった常識、これまでのやり方に遠慮なくチャレンジしていきます。

深くものを考える人材でなければ、ブロックチェーン革命を推進する上で、何が本質なのか、どこをどうすればイノベーションを起こせるのか、読み切ることができません。

これまで取引先とはこうやってきたから、というだけの理由で、やり方を変えないことはブロックチェーン時代には通用しません。本当はどうあるべきなのか、従来はどういう制約があったから手作業でやっていたものの、どう考え直せばスマートコントラクトで置き換えられるのか、などを自由な発想で考える必要があります。

そういった人材はそこまで希ではありませんが、それでも、多分、通常の企業では7~8人に1人程度だろうと思います。そういう人材を早期に選び、鍛えておくこともブロックチェーン革命に乗り出す上で大切です。

ITだけに強い人材ではありません。また、問題把握・解決力やリーダーシップがいかにあってもITを苦手とする人材もブロックチェーン化推進リーダーとしてはあまり向いているとは言えません。

 

社内の反対、冷笑に心が折れないこと

ブロックチェーン化推進リーダーには、社内の反対、冷笑に心が折れない人材が必要です。通常の新事業でも、既存事業側からは鼻で笑われたり、揚げ足を取られたり、「誰の金で給料払ってもらってると思っているんだ」など、心ない発言で傷つけられたりします。

ましてや、ブロックチェーン化においては、既存事業がまだ成り立っているうちに、それがこわれたときどう対応するのか、という検討も必要ですし、どうやってスムーズに乗り移ることができるかというシミュレーションも必要です。

既存事業側の気分を傷つけるような検討をせざるを得ないので、単なる新事業とは違い、敵陣への落下傘部隊のようなものです。

いくらそれが将来彼らを救うことになるか、世の中が劇的に進んでいるかを伝えても、よくてややネガティブ、下手をすると大変ネガティブな受け取り方しかされませんので、社内の反対、冷笑に心が折れない人材が必要となります。

使命感がかなりのプラスにはなりますが、それでも、悲しくなることも多いでしょう。自分たちの代わりに、自分たちの将来のために検討してくれてありがとう、ということにはまずなりません。

 

経営者が全面的にバックアップすること

したがって、ブロックチェーン化推進リーダーを経営者が全面的にバックアップすることがどうしても必要です。

口だけでは足りず、社長室の横あるいは近くにプロジェクトルームを置くとか、週次で進捗報告を聞くとか、社内の最優秀メンバーを事業部の反対を押し切って数名投入するとか、特に反対の声が強い事業部長、取締役と経営者自ら食事をして懐柔するとか、あの手この手でのバックアップが大切です。

ブロックチェーンベースの事業は、最初、売上が既存事業の数十分の一、数百分の一からスタートします。赤字も当分続くでしょう。その間、断固たる決意で事業を推進しなければ、到底育ちません。

社内のエネルギーを発散させないようにするのも、経営者の仕事ですね。

 

当記事は、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムの第10回です。ブロックチェーンが、産業、企業、個人に与えるインパクトについて、「どういったことが起きるのか、何をすべきなのか」について、それぞれの立場の方に合わせて解説していきます。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか
※第7回:中小企業にとってのブロックチェーン革命:生か死かの瀬戸際
※第8回:ブロックチェーン革命をリードする経営者、足を引っ張る経営者:選手交代
※第9回:ブロックチェーン時代が要求する経営者のリーダーシップ:ビジネスの根本的な再構築

ご意見、ご質問は akaba@b-t-partners.com までお気軽にお寄せください。すぐにお返事します。

 

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。