エネルギー分野のブロックチェーン最新状況(1)

2月14日〜15日にオーストリアのウィーンでGlobal Summit on Blockchain Technology in the Energy Sectorという国際会議が開催されました。ブロックチェーン関連の国際会議はたくさんありますがエネルギー分野に特化した会議は他に聞いたことがなく、急遽参加することに決め、2日間の会議を聴講して来ました。

同会議の様子をご紹介しながら、エネルギー分野のブロックチェーン最新状況について、数回に分けてご紹介していきます。内容は、以下の通りです。

  • ブロックチェーン技術はエネルギー分野に応用できるか
  • エネルギー分野へのブロックチェーン応用のユースケース
  • 規制や既得権益の多い同業界で、スタートアップにチャンスはあるのか
  • 取り組みを始める世界各国のプレイヤー紹介
  • 今後、考えうる事業展開のシナリオとは

 

ブロックチェーン×エネルギー分野に世界中から注目集まる

会議は36カ国から約450人が集まり、大盛況でした。開催国であるオーストリアをはじめヨーロッパ諸国からの参加が多かったですが、米国からは26人、日本からは13人の参加がありました。ブロックチェーンのエネルギー分野だけで450人もの人が集まったということはポテンシャルの大きさを感じます。

参加者の内訳は大手エネルギー会社や電力会社の代表からソフトウェア開発業者や研究者まで様々でした。私が休憩時間等に話した人は、特にエネルギーやブロックチェーンに直結した事業を持っていなくても情報収集あるいは様子見で会議にやって来たという人も多かったです(私もその一人ですが)。多くの人が虎視眈々と機会を狙っていることがわかります。

 

すでにエネルギー分野の覇権めぐり各国が動き始めている

なぜオーストリアで開催されたかというと、オーストリアにはGrid Singularityというエネルギー分野でブロックチェーン技術を応用することに特化したベンチャー企業があることと関連がありそうです。次回以降の記事で書きますが、同社の戦略的パートナーを中心にコンソーシアム組成の発表があり、この会議開催の裏にはエネルギー分野で覇権を取ろうと戦略的に動いている組織の存在を感じました。

ブロックチェーン技術のエネルギー分野への応用の状況を一言で言うと、裏では世界各国でいろいろな活動が進行していますが、実証実験や実物への展開はまだ数えるくらいしか行われていない段階です。従って、本会議も各社が実証実験や商用運用の成果を発表する場というよりは、業界共通の課題を共有・議論したり、概念や計画を発表する場でした。

会議ではブロックチェーンの技術の詳細にはあまり触れずに、エネルギー分野での事業展開をめぐる話題が議論されました。事業側にいる人たちにとっては聞きやすい会議だったと思いますが、開発者やエンジニアにとっては馴染みがある話ばかりではなかったかもしれません。実際に展開を行う段階になると解決すべき技術的問題も山ほど出て来るのではないかと思います。

一日目は総論的・概念的な議論が中心でした。実証実験や商用運用がない中での議論のためやや抽象的であり、モノがない中で議論だけが先行している印象がありました。二日目はスタートアップ14社によるピッチが中心でした。これにより現在取り組みが始まっているユースケースの幅や進捗状況、またベンチャーに投資するベンチャーキャピタルの思考様式を知ることができました。

展示スペースには数社がデモを展示していました。繰り返しになりますが、これは実機の見本ではなく、実証実験前の段階の成果物という位置付けだと思います。

太陽光発電を備えた家庭がダイナミック電力料金(15分ごとに電気料金が需給状況により変動する)の状況で最適化を行うデモ

ウェブサイトを見ただけでは分からない情報を得ることができ、有意義な2日間でした。次回から数回にわたり、本会議で話し合われた議題について掘り下げて書く予定です。

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大串 康彦
About 大串 康彦 10 Articles
環境・エネルギー分野にてプラントエンジニアとして10年間勤務 。ごみ焼却プラントや燃料電池発電システムの開発等を担当。その後日本の企業を退職し、永住するつもりでカナダに移る。カナダの電力会社に入社しスマートグリッドの事業企画などを担当し、その後は個人事業主としてカナダの技術ベンチャー企業の事業開発支援を行う。2013年に東京に戻る。現在はエネルギー分野でのブロックチェーンを活用した新規事業の機会探索を行っている。記事のフィードバック、ご質問などはyasuhiko.ogushi@gmail.comまでお送りください。