ブロックチェーン革命を乗りこなす組織の構築:組織原理が根本から変わる

今回は、あらゆる産業に大きな影響を与えるブロックチェーン革命を組織として乗り越えるために、組織をどのように作り変えていくべきかについて述べていきます。

 

スピードが決定的に重視される

ブロックチェーン革命を乗りこなすには、組織の意思決定、行動が圧倒的に速くならないといけません。大企業の安泰だったビジネスにも新進ベンチャーがブロックチェーンベースのサービスで次々に参入してくる可能性が高くなっていきます。海外のベンチャーもブロックチェーンベースであれば、言語対応だけすればすむので、平気で入ってきます。規制も、非関税障壁もありません。

大企業が従来のスピードで議論に議論を重ねていたら、その間に新しいスマートコントラクトをばらまかれて中抜きされてしまいます。気がついたときには、なぜか顧客がどんどん減り、手の打ちようがなくなってしまう、ということになります。顧客に泣きついても、「いや、サービスがよくてずっと安いからさあ」と言われて終わりです。

例えば、大手の人材紹介ビジネスは、顧客と人材の莫大なデータベースを構築し、それを参入障壁としてかなりの利益をあげていました。ところが、ブロックチェーン技術を持つベンチャーが顧客と人材をスマートコントラクトでマッチングし始めると、ユーザーインターフェースさえ使いやすければ、燎原の火のように一気に広まる可能性があります。

失うもののないベンチャーは、手数料を従来の1/2や1/3に下げることも全くいとわずやってきます。それでも、彼らにとっては非常に大きなビジネスだからです。こういう状況に対して、大企業でもベンチャー並の意思決定の速さで対応しなければなりません。

大企業病とよくいいますが、多くの中小企業も意思決定の遅さ自体は相当にひどく、同様に意思決定の速い企業の餌食となっていきます。

 

従来の組織のまま、ビジネスへのブロックチェーン活用を最速で進める

ビジネスへのブロックチェーン活用を最速で進めるには、組織は既存組織のままでいいので、前回述べた「ブロックチェーン化推進リーダー」や「ブロックチェーン新事業開発支援チーム」を置き、一部だけ異次元のスピードで進めるほうがいい良いでしょう。組織全体に手を入れていたらあっという間に1,2年かかってしまうからです。

ほとんどの組織の問題は、構造にあるというよりは、以下のどれかです。

①上長のフォローが不十分のため、責任を果たしていない部署がある
②協調すべき部門間でコミュニケーションが成立せず齟齬を来している
③人材評価がずさんでゆがんでいるため仕事のできない人が昇進している

ですから、そういう問題は別途手当てをしていけばいいですし、それしかしょうがありません。

ということで、自社のスピードの遅さにはいったん目をつぶっても、ブロックチェーン活用のところだけは電光石火で進め、加速していきます。

 

社長に必要なリーダーシップ

当然ながら、そのように進めるには、社長自身のリーダーシップが不可欠です。本当は、大してむずかしいことではありません。数ページ以上の書類は見ないと宣言し、すべての会議も従来の半分の時間でストップすると宣言して実際そのようにし、自分の出ない会議も「会議生産性3倍増チーム」を派遣して実施させ、中間管理職や現場の意見を真剣に聞くようにすればいいだけです。

「本当は」と前置きをしたのは、本当に全然むずかしいことではないのに、思い切ってやろうとする、押し切ってやらせようとする社長が決して多くはないからです。多分、決めたくないのだろうと思います。リスクを取りたくないからだとよく言われますが、リスクなど全くありません。サボっているだけだろうと理解しています。不勉強で、危機意識があまりないのだろうと理解しています。

 

自社も中央集権型から分散自律型へ

ブロックチェーンベースのサービスである程度のシェアを取り始めたら、自社の改革にも手をつける必要があります。従来の中央集権型から、より各部門の分散自律型に変えていくことで、競争力を一段と高めることができるからです。ただ、この点は言うのは簡単ですが、実際は結構大変で、相当の試行錯誤が必要です。

どこの記事にも書いてありますが、最大の問題とは、ブロックチェーンによって分散自律型を促進すると、分散自律させるためにそれぞれの部門長が大きく成長しなければならないことです。今まで上長の意向を聞いてその通りに実行していればよかったものが、自分の判断でむずかしい意思決定を進め、リスクを取って事業を進めていかなければなりません。

責任権限がどうの、稟議がどうの、管理体制がどうの言う前に、任せられるリーダーを何人育ててあるのかがすべてを決すると言っても過言ではありません。

つまり、ブロックチェーン革命を乗りこなす組織の構築には、実は、自分で判断し行動できる、自律型のリーダーを数十人育てておくことが鍵になります。

 

当記事は、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムの第11回です。ブロックチェーンが、産業、企業、個人に与えるインパクトについて、「どういったことが起きるのか、何をすべきなのか」について、それぞれの立場の方に合わせて解説していきます。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか
※第7回:中小企業にとってのブロックチェーン革命:生か死かの瀬戸際
※第8回:ブロックチェーン革命をリードする経営者、足を引っ張る経営者:選手交代
※第9回:ブロックチェーン時代が要求する経営者のリーダーシップ:ビジネスの根本的な再構築
※第10回:ブロックチェーン革命を推進できる人材の早期育成:チャレンジできるリーダーを確保

ご意見、ご質問は akaba@b-t-partners.com までお気軽にお寄せください。すぐにお返事します。

 

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。