ブロックチェーンは資金洗浄の有効な対策となるのか-現状と活用可能性

金融犯罪が高度化する中、資金洗浄対策(Anti-Money Laundering、AML)にかかる費用は急激に増大しています。本記事では、マネーロンダリングに関して金融業界が直面している問題と現状における対策について述べ、ブロックチェーン技術が資金洗浄対策における課題を解決できるかについて解説していきます。

 

マネーロンダリングの現状

国際通貨基金(IMF)と国連薬物犯罪事務所(UNODC)によれば、マネーロンダリングによる被害額は年間約2兆ドルと推計されています。これは2016年のカナダのGDP(約1兆5000億ドル)を超える金額であり、また低採算国117か国のGDP合計(約1兆9000億ドル)をも超える金額です。マネーロンダリングによる被害額がいかに巨大かがご理解いただけるでしょう。

1989年にマネーロンダリングやテロ資金対策等における国際的な協調指導・協力推進を行う政府間機関としてFATF(Financial Action Task Force)が設立されていますが、マネーロンダリング被害額の1%未満しか摘発できていません。このことは世界的な金融システムの安定と安全に関する大きな懸念事項となっています。

疑わしい取引を防止・摘発するため、金融機関は規制を遵守する必要があり、世界中でマネーロンダリングに対抗するための法律強化もなされています。ゴールドマン・サックスによれば、資金洗浄対策のために費やされた金額は、2009年には年間70億ドルだったのに対し、2014年には年間100億ドルまで増加しています。また、規制違約金は2009年以来10倍に増加し、年間80億ドルに達しました。

規制の強化に伴い顧客情報を収集するための手続きにも時間と手間がかかるようになりました。そのため金融機関は効率性を高める必要があるのですが、顧客情報および口座情報の監視、把握、報告といった作業は非常に手間のかかるものです。金融機関は常に新技術を採用し、作業の効率化を追求しています。

金融機関はリスクを減らすために、リスクを持つ取引先の銀行パートナーや顧客との長期的関係を解消する傾向となっています。このことは、特に食料、水、住居、教育や医療などの緊急なニーズに直面する途上国を中心に、人びとの生活に及ぼす社会的影響を十分に評価することなく行われています。

 

課題の根本的な原因は、レガシーな体制に

この課題の根源的な原因は、金融制度や規制が陳腐化しており、技術進歩・金融犯罪の高度化に追いついていないことです。金融機関は法律に基づき、それぞれの顧客に対して徹底した情報収集・管理をする必要があります。しかし、顧客が別の銀行に口座を持っている場合には、その銀行によってその顧客の情報は既に収集・管理されています。銀行間のデータ共有がなされていないことによって、顧客情報の収集・管理にかかる時間や費用が重複してしまっています。

さらに、システムが疑わしい取引を誤って検出することが多く、調査のためにも費用がかかります。現在使われている取引監視ソフトウェアでは、疑わしい取引を摘発するためのシステムがありますが、専門家がこれらの取引を判断すると、システムにより検出された取引の99%が誤っていることが分かります。この問題は、データが不完全であることに起因しており、この修正に多大な時間・費用が掛かります。

では、インターネットはこの課題に対する解決策を提示できるのでしょうか。私たちはインターネットによって情報を容易に入手することができるのですが、ここに問題があります。世界中に開かれたウェブを介して資産の取引を行う場合、取引における当事者間の情報を認証し、記録の保管を正確かつ安全に行う必要があります。このような価値の移転はこれまで伝統的に、銀行などの金融仲介機関が担っていましたが、これは非効率で、安全性が低く、コストのかかる方法でした。

 

金融基盤としてのブロックチェーンとは

ブロックチェーンとは、価値を持つ資産を安全かつ個人間で移動・保管・管理することができる新しいプラットフォームであると言うことができます。銀行などの金融仲介機関は存在しませんが、代わりに高度に洗練された暗号化によって取引記録が保護されることで信用が成立しています。

ブロックチェーンは口座情報やデータが記録されているオンライン上の取引台帳のようなものです。情報は1つの中央機関によって保有されているのではなく、世界中の何万台ものコンピューターに保有されています。承認された全ての人が最新の情報にアクセスすることができ、その透明性も保証されています。

 

ブロックチェーンは、資金洗浄対策にどのように活用できるのか?

ブロックチェーンの活用は以下の3点において効果的です。

1.顧客情報が暗号化されリアルタイムでアップデートされるため、誤検知率を大幅に削減する。

2.顧客情報が共有された安全なデータベースにより、顧客情報を収集・管理するための作業を減らす。

3.金融機関や監督当局がより効率的に摘発を行えるようにするための取引記録の管理。

 

ゴールドマン・サックスによれば、ブロックチェーンの技術は資金洗浄対策のための経費や規制違約金を削減し、年間30~50億ドルの費用削減に繋がると推定されています。
ブロックチェーン技術の利用は拡大しているものの、その普及にはまだ時間がかかり、課題も存在します。ブロックチェーンが広く活用されるには、データのプライバシーやセキュリティ、技術水準、規制、スピードなどの問題が関わっています。次世代金融システムを開発し、信頼や効率性、包括性を高めるために、技術者・銀行・専門家・規制当局の間で合意形成が進められています。このようななかで、ブロックチェーン技術は、世界の金融システムをマネーロンダリングから守り、経済成長を促進するものとして期待されています。

 

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BBC編集部
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ブロックチェーンビジネス研究会(略称:BBC)編集部です。海外の業界ニュースや、ブロックチェーンや暗号通貨について基礎的な内容を発信していきます。