CarbonXプロジェクトとは?気候変動問題に取り組むカナダのブロックチェーン企業

その行動は本当に「環境に優しい」…?

多くの人々が気候変動問題に高い関心を持っている一方で、実際にCO2排出量削減に向けて行動をしている人は少数にとどまります。また「省エネ電球」のような環境に優しい製品を利用することがよしとされている一方で、ヒトはただそれらを「購入した」という事実だけで満足しがちで、その他のCO2排出量の削減行動に結び付くことは稀です。そして、環境に優しいとされる行動を地道に積み重ねている人たちがいる一方で、アメリカのニューヨークからデンバーまで、たった片道分のフライトに乗るだけで乗客1人当たり、車の走行距離12000㎞分に相当するCO2が排出されます。このような現状では、環境に優しい行動を積極的にとろうとするインセンティブが削がれていくばかりです。

CO2排出権をトークンに

しかしもし仮に、CO2排出量の少ない、環境に優しい行動をとるたびに換金可能な報酬を得られるようになったら、私たちの行動はどう変わるでしょうか。そんな夢のような計画を進めているのが、カナダにあるブロックチェーン企業であるCarbonX社です。CarbonX社は、国連のREDD+という規定に基づいたCO2の排出権を購入し、代わりに換金可能なCxTトークンを発行しています。

仕組みはこうです。ユーザーが自家用車の代わりにバスに乗ったり、あるいは東南アジアから空輸されてきた食物の代わりに地元の海産物を購入すると、購入が発生したそのタイミングでCxTトークンを受け取ることができます。そして、そのCxTトークンを別の商品の購入にあてがうことができます。例えばホームセンターで「燃費のとても良い芝刈り機」を購入すると、購入時にCxTトークンがもらえ、そのCxTトークンで新たな商品を購入することができます。これらは一見すると複雑なプロセスのように聞こえますが、CarbonX社によると、処理は完全にバックグラウンドで行われるため、ユーザーのシームレスな買い物体験を阻害することはない、とのことです。

ブロックチェーン・レボリューションでも注目されていたカーボン・クレジット

ブロックチェーンは当初より、複数産業をまたぐロイヤリティスキーム(ポイントサービスのような、購入時にユーザーが更なる特典を得られるサービスのこと)における活用が期待されていました。「ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか」の共著者の一人である、Don Tapscott氏は、「カーボン・クレジット(炭素クレジット)はトークン化しやすいため、ブロックチェーンで実装するにはもってこいでしょう。そして、カーボン・クレジットP2Pのオープンネットワークで取引できるようにするためには、今後”価値のインターネット”を実現していくことが不可欠です。」と述べています。ここでTapscott氏の述べている「価値のインターネット」とは、「株式、票、ポイント、知的財産、音楽などのような物理的実体のないものを、銀行や市場など中央集権構造を経由せずに、ブロックチェーン上でトークン化して電子資産としてやりとりできるシステム」のことを指しています。

アプリでCxTトークンを管理する

Tapscott氏は、兄弟のBill氏と息子Alex氏、そしてロイヤリティー産業のプロフェッショナルであるJane Ricciardelli氏と協力して、CarbonX社を創業しています。CarbonX社は、小売業者や製造業者を代表してCO2排出権を購入し、各トランザクションから少額の手数料をとることで初期のCO2排出権の購入費用を補填していくようです。CarbonX社は、2018年度の第二期中にリリース予定であるスマートフォンアプリを通して、ユーザーがCxTトークンを買い物で利用できる状態を実現することを目指しているとのことです。例えば、ガソリン代にかかる炭素税の支払いに、CxTトークンを用いる、といったことも可能になるようです。(現在、カナダでは二酸化炭素の排出活動に対して課税を行う、”炭素税”の全土導入が検討されています。)

Bill Tapscott氏は、インタビューで小売り業者がCarbonX社のプログラムを利用するメリットについて述べています。CarbonX社のユーザーは、合意の下でアプリ上の「炭素計算機」を利用することができ、効率的なCxTトークンの回収が行えるようになります。ユーザーにメリットを与えると同時に、各ユーザーの日常的に利用している製品や移動手段、各家庭のエネルギー消費活動が可視化されます。CarbonX社のプロジェクトに参加することで、企業はこの匿名ユーザーデータにアクセスすることができるようになる、という仕組みです。実際に、2018年の年初にCarbonX社のプロジェクトに参加するパートナー企業がいくつか発表されるそうです。

市場原理で利益の調整を

従来は、個人がCO2の排出量を緩和する(CO2排出上限を引き上げる)目的で、カーボン・クレジットが利用されることが主でした。しかし、今回の計画は従来とは異なります。Tapscott氏は、個人レベルの排出量制限では個人にとってうまみのある話でなくなる可能性について、懸念していました。平均的なアメリカ人は、年間一人当たり20トンものCO2を排出しているといわれており、これを西部気候イニシアチブの算出する炭素の現行市場価格に照らし合わせると、$400もの価格になるとのことです。1人当たりのCO2排出削減量を20%と仮定すると、年間の収益見込みは$80程度となります。しかし、$80のために習慣となっている行動を変えるユーザーは極めて少ないと考えられます。

この問題に対して、CarbonX社は、トークンの価格を炭素市場の価格から切り離すことを検討しているようです。ひとつの案では、トークンの価値が販売者の設定するトークン付与量に関連づけられるようです。例えば、環境に優しい食器洗い機を購入する場合、報酬として5CxTトークンを付与するか、あるいは3CxTトークンしか付与しないのか、販売者が自由に設定することができます。そしてこれと同時に、トークン価格は取引市場の状況も反映されていくようです。最終的な調整を経て、Tapscott氏らは年間$250をユーザーに還元することを目標としているそうです。

地球規模の問題に取り組むブロックチェーン企業

「気候変動問題は、もはや大きな組織や政府だけに任せておいて解決できる問題ではありません。現在ではまだ、ヒトに何か行動を促すための、効果的な手段は確立されていません。しかしこの誰もが使えるCarbonXのプラットフォームが足がかりとなって、気候変動問題が解決されていくことに期待しています。」とDon Tapscott氏は答えます。今後も地球規模の問題に取り組むブロックチェーン企業、CarbonX社に注目です。

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BBC編集部
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