イリノイ州が出生証明書をブロックチェーンで管理へ

2017年9月14日 BBC編集部 0

2017年8月31日、北米イリノイ州の政府が出生証明書のデジタル化に向けて、ブロックチェーンによる管理システムのテストを開始したことを発表しました。州政府は、ブロックチェーン上でIDを管理するプロジェクトの実績があるEvernym社というスタートアップ企業と協力し、試験プロジェクトの実施に向けて準備していくようです。 イリノイ州のブロックチェーンビジネス広報担当者であるJennifer O’Rourke氏によると、現在開発中のプラットフォームは、個人が一生涯に渡って使うことができる、個人IDを一元管理できるツールの元となる可能性があるそうです。 ブロックチェーンスタートアップを支援しているイリノイ州 O’Rourke氏は「このパイロットテストでは、法人や政府などの公的機関が、個人のIDが必要となってくる場面において、その正当性を証明することができるようになる可能性があります。」とインタビューに答えています。今回のパイロットバージョンのプログラムでは、子どもの出生にあたり、両親や医師が公式に子どもの情報を登録できるブロックチェーンベースのツールを開発し、テストするようです。これらのツールは、World Wide Web Consortium(W3C)内にある、特別チームによって開発されているそうです。 このプロジェクトは「イリノイ州ブロックチェーンイニシアチブ」と呼ばれる大きなプロジェクトのなかの一部であるそうです。イニシアチブ全体の目的として、州のブロックチェーン企業にとって好ましい環境の創出と、政府がブロックチェーンを構築する際の障壁を排除することが挙げられています。このイニシアチブのパートナー機関には、国務貿易省(DCEO)、保険局(DOI)、および革新技術局(DoIT)が含まれています。 個人のIDが出生時からブロックチェーンで管理される時代へ 州政府機関は、出生時に個人の登録データを確認するだけでなく、個人の名前、生年月日、血液型などに関連する情報を暗号で署名します。その情報は、個人が法的な成人になるまで、法的な保護者によって承認された場合にのみアクセス可能な、改ざん不能の分散型元帳に保管されるそうです。 個人のIDとブロックチェーンの分野は現在非常に注目を集めている分野です。これからも様々な形で、政府主導のIDプロジェクトが出てくる可能性があります。引き続き、ブロックチェーンの活用方法について注目です。   分散型IDについてはこちらから http://businessblockchain.org/decentralized-identity-foundation-announced-formation

スイスのツーク市で分散型ID導入へ

2017年7月27日 BBC編集部 0

スイス連邦北部のツーク市では、イーサリアム(Ethereum)を使用したデジタルID認証サービスを2017年9月に開始すると発表しました。ブロックチェーンベースで分散的に本人確認データを保持する分散型IDの取り組みは各所で進められており、昨今注目が高まっているトピックの一つでしょう。 分散型IDについてはエストニアでの取り組みがあります。こちらの記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。 →「ブロックチェーンは国家を超越するか – Bitnationとエストニアから見る未来国家」   個人情報管理はどう変わる? ツーク市の取り組みによって、今後市民の個人情報はデジタル化され、ブロックチェーン上に分散的に記録されるようになります。ツーク市民はモバイルアプリを通じ、どこにいても個人情報にアクセス・管理することができます。個人情報は市によって証明された後にブロックチェーン上で暗号化され、高いセキュリティによって保護されます。 ツーク市の取り組みでは、以前よりイーサリアムを活用した分散型ID管理システムの構築を行っていたuPortのプラットフォームが活用されます。また開発面ではスイスのスタートアップTI&Mとルツェルン経済大学との連携が図られるとのことです。   ブロックチェーンに積極的なスイス・ツーク市 ツーク市にはイーサリアムベースのプラットフォーム構築を行うConsenSysが拠点を置いているほか、2016年6月にはツーク市の公共料金のビットコイン決済が試験的に導入されるなど、官民ともにブロックチェーンの導入が非常に盛んになっています。ツーク市における分散型ID導入においてuPortプラットフォームが活用されるのも、uPortの開発元がConsensysであるからこそ実現したものと考えられます。 このようにスイス、特にツーク市はブロックチェーンテクノロジー企業の大きな拠点になっ  ており、政府の施策によってますますブロックチェーン技術を活用した取り組みを進めるだけでなく、ブロックチェーン開発の一大拠点としての成長が期待されます。

国連によるブロックチェーン活用は難民問題解決の切り札となりうるか

2017年7月6日 BBC編集部 0

2017年5月30日、国連世界食糧計画(WFP)はヨルダン国内の約1万人のシリア難民に対し、イーサリアム(Ethereum)ベースのアプリケーションを用いて食糧を提供する実証実験を行ったと発表しました。シリア難民は、ヨルダンの難民キャンプ内の市場から、WFPが提供した食糧を受け取ります。具体的には目の虹彩をスキャンする生体認証によって難民であることを証明し、援助を受ける資格があると確認された人は食糧を受け取ることができます。 ブロックチェーンは、格差是正ソリューションの未来か このプロジェクトは、世界中の難民の食糧難を救うモデルケースとなると期待されています。 約500万人がシリアを逃れ、現在も多くの人がヨルダン周辺の貧困地域に滞在しています。国連の推計によれば、2016年にはシリア難民は約63万人、パレスチナ難民は約200万人にまで増加するとのことです。 ブロックチェーンは従来よりも大きな規模で支援を提供することができます。WFPは8月までに対象となる難民の数を10万人にまで拡大し、2018年までにはヨルダンに滞在する全ての難民への援助を実施、2030年までには食糧援助によって世界中のあらゆる食糧難を解決することを目指しています。 分散型IDプロジェクト「ID2020」とは WFPのイノベーション・チェンジマネジメント担当ディレクター、ロバート・オップ氏によれば、ブロックチェーンの活用によって食糧提供に関するコスト削減、食糧提供を受けた人々のデータの保護、財務リスクの管理、緊急時の迅速な対応などが実現されうるとのことです。このようにブロックチェーンを活用することで、人道支援のあり方自体をより効率的に変えていく可能性があります。 また米大手コンサル企業のアクセンチュアは、「ID2020」と呼ばれる国連プロジェクトにブロックチェーンを活用しようとしています。これは、世界に約11億人存在しているとされる公的な身分証明(ID)を持たない人々に対し、身分証明を付与することを目的とした国連支援プロジェクトです。アクセンチュアはこの一貫として、ブロックチェーンを活用した分散型デジタルIDネットワークを構築する計画を発表しています。アクセンチュアによればこの分散型デジタルIDを活用し、2020年までに75カ国以上、700万人以上の難民を支援することが期待されています。先日もマイクロソフトがuPortなどと提携し分散型ID実用化へ向けた取り組みを進めるとのニュースがありました。これらの取り組みが実現されれば、今まで自らの身分を法的に証明しにくかった難民でも、医療や教育、金融サービスなどの行政サービスを容易に受けることができるようになるでしょう。

マイクロソフト、uPortなどが提携し分散型ID実用化へ向け前進

2017年5月29日 BBC編集部 0

  5月22日に行われたConsensus2017において、マイクロソフト、uPort、Gem、Evernym、Blockstack、Tierionは共同で分散型IDファウンデーション(Decentralized Identity Foudation、DIF)の設立を発表しました。DIFは、個人や法人が身元を確認するために必要な本人確認書類(ID)をブロックチェーン上に分散的に保持する上での標準化を図るべく、複数企業によって構成されています。今回の記事では分散型IDとは何か、またそれによって得られるメリットについて説明していきます。   分散型IDを用いた本人確認プロセスを実現へ 個人が本人確認を行うためには、従来は中央管理機関によって取得された個人情報をもとに発行された証明書を提示して証明する必要がありました。このプロセスでは、信頼のおける第三者(中央管理機関)がその本人確認情報の信頼性を担保していたと言えます。しかしその反面、各個人は自分自身の情報に自由にアクセスすることができなかったり、あるいは行政や警察機関によって無断でアクセスされる可能性があるなど、情報を完全に自分で管理しているとは言えませんでした。 この本人情報をブロックチェーン上で管理するのが分散型IDです。たとえば、DIFの参加企業の一つである「uPort(ユーポート)」は、以前よりイーサリアムを活用した分散型ID管理システムの構築を行っていました。これらのシステムでは集中型サーバーではなくブロックチェーン上に本人確認情報を記録しているため、サーバーがダウンすることはなく、本人確認情報へのハッキングや改ざんを防ぐことが可能です。 uPortについてはこちらの記事でも触れていますので、ぜひご覧ください。 →「イーサリアム・ビギナーズガイド-ビットコインとの違いとその活用可能性」   分散型IDファウンデーション(DIF)の狙いとは? DIFの取り組みでは、分散型IDを標準化することで複数業界に渡って本人確認として利用できるIDを構築することを目的としています。マイクロソフトの分散型ID担当者であるダニエル・ブフナー氏によれば、DIFでは人や組織、デバイスのすべてにIDを組み込むことを目指しているようです。ブロックチェーン上の分散型IDを企業間で共有することで、商業的なメリットだけでなく、人々にとっても非常に利便性が高まると述べています。 さらに、生体認証を用いる新たな分散型IDも現在開発中です。これは、身分証明の手段を持っていない難民や発展途上国の人々が本人確認を行うことを目的としています。彼らが身分証明を行うことができれば、より容易に公共サービスおよび金融サービスにアクセスすることができるようになるでしょう。 このように、分散型IDを用いることで人々の生活の利便性がさらに高まる可能性は十分にあると言えます。大手マイクロソフトが参画したことで、その実現に向けた取り組みの前進が期待されます。   ※画像は@iotatokenのツイート(https://twitter.com/iotatoken/status/866727260035985410)より

ブロックチェーンは国家を超越するか – Bitnationとエストニアから見る未来国家

2017年4月24日 久保田 紘行 0

中央集権機関による管理を必要としないブロックチェーンには、実に様々な活用可能性があります。ビットコインにおいて通貨発行を担う中央銀行が存在しないのと同じように、政府という最も巨大な中央集権機関をも必要とせず自律分散的に動くのがブロックチェーンの最たる特徴です。 今回の記事では「ブロックチェーンと国家」というテーマで、自律分散的な国家を目指すビットネーション(Bitnation)というプロジェクトと、2000年代から急速に行政サービスの電子化が進んでいるエストニアの事例を合わせてご紹介します。   信頼性を担保する役割としての国家 さまざまな文書の記録やその内容の証明を行うときには、信頼性をどのように担保するかが問題となります。従来は第三者が仲介することで記録の信頼性を担保する必要がありました。しかしながら、改ざんが困難なブロックチェーン上に記録しそれらを参照することで、記録の存在や内容を証明すること(Proof of Existance、プルーフ・オブ・イグジスタンス)ができます。「ブロックチェーンに記録されている」という事実そのものが、信頼性の根拠となりうるのです。 ではこれによって具体的には何が実現できるのでしょうか。第三者が仲介することで信頼性を担保していたものは実に多くありますが、その最たるものに行政による公的認証サービスがあります。例えば、土地の登記や戸籍謄本など、国民や国家に関する実に多くの情報が行政サービスを通じて集中的に管理されています。この膨大個人情報の管理には大きなコストがかかっています。これをブロックチェーンによって効率化することを目指すプロジェクトが存在します。「Bitnation」というプロジェクトです。   Bitnation(ビットネーション)とは? – 公証サービスの自動化 ビットネーション(Bitnation)は、イーサリアムを利用し国家の手を介すことなく様々な認証を自動的に行うプラットフォームを提供するプロジェクトです。いわゆる公的認証サービスとして従来国家が担ってきたものをスマートコントラクトを活用し自動化することで、管理にかかるコストや手間を大幅に削減できます。具体的には土地登記、婚姻届、出生届、死亡届、パスポートなどのID、戸籍登録、財産権の記録などがあります。 Bitnationはインターネットの普及や、輸送にかかる時間短縮やコスト低下などに伴うグローバリゼーションが進行する一方で、国家や国籍が領土と密接に結びついていることを地理的制約であるとして問題視しています。Bitnationは従来政府が担ってきた認証サービスを代替することで、最終的にブロックチェーン上に地理的な制約にとらわれることのない自律分散的な国家を構築することを目指しています。 BitnationによるID発行と行政サービス提供は既に実現しており、国民として登録されていない難民をブロックチェーン上に登録するなどの取り組みも行われています。またネットワーク上に構築された共同体として、投票機能や、スマートコントラクトを利用した民事契約の体系など、共同体のガバナンスに必要な諸機能を整備する計画も明らかになっています。近代国家に代わる存在として、居住地や国籍にとらわれず世界中の人々が多様な選択肢の中から自ら共同体を形成したり選択できるようになる世界もありうるかもしれません。 このようにBitnationの掲げるビジョンは、国家の役割を代替しうるものであり、ある意味では国家という存在に真っ向から対立するようにも思えます。しかし一方で、エストニアがBitnationとの提携を進めています。詳しく見ていきましょう。   なぜエストニアなのか? – 電子立国「e-エストニア」 エストニアは北欧にある、総人口130万人程度(沖縄県と同程度)の小国です。1991年のソ連崩壊に伴って独立を果たしたのち、様々なIT技術を活用して電子立国の取り組みを進めています。エストニアの取り組みは「e-エストニア(e-Estonia)」と呼ばれ、教育、司法、警察、閣議など行政の電子化に加え、2002年に導入されたデジタルIDカードが「e-エストニア」の大きな柱となっています。 エストニアでは一人一人に割り振られた国民IDに従って、様々な個人情報が自動的に紐づけられて管理されています。エストニア国民はデジタルIDカードを用いることで自らの個人情報にアクセスし、様々なサービスを受けることができます。例えば、納税から土地登記、教育、医療、選挙、法人登記、電子署名、公共交通機関の運賃支払いに至るまで、実に幅広いサービスをオンラインかつペーパーレスで実施することができるのです。 これにより国民・政府の双方において手間やコストが大幅に削減され利便性の向上が実現されていますが、個人情報を電子化し政府が一括管理することにはプライバシーの問題が懸念されます。これに対しエストニアでは個人情報保護法に基づき、国民が自らの個人情報へのアクセスログを確認し、またデータ保護庁にアクセス理由を問い合わせることができるようになっています。このように「自分の情報を自分自身でコントロールできる」という仕組みを構築することで個々人のプライバシーにも配慮されています。 現在、エストニアにおける多くの電子サービスはX-Roadというクラウドサービス上に構築されています。しかしクラウドサービスでの個人情報の管理にかかるセキュリティコストや、アクセスログの確認など個人情報の自己コントロールなどの観点から、記録の改ざんが困難なブロックチェーンの活用は非常に適していると言えるでしょう。   […]