ブロックチェーンで分散型Uberは実現するか?

2017年4月11日 大串 康彦 0

ブロックチェーンを使ったSUberとは ブロックチェーンは金融分野以外にも広く応用が提案されていますが、多くが概念実証段階であり、ブロックチェーンの真価が発揮されるのを見るまでにはまだ時間がかかりそうです。「シェアリングエコノミー」も本人確認、信頼性の担保、取引の正真性の確保など信用に依存する部分があり、ブロックチェーンが貢献することが期待されています。未来の可能性としては、例えば次のようなシナリオが考えられます。 車を所有するのは過去のこととなり、ほとんどの人はライドシェアを利用している。たとえばシカゴでメリッサという女性がSUber(ブロックチェーンを使った「スーパー・ウーバー」)で車をリクエストしたとしよう。近くにいる自動運転車が条件をオファーし、メリッサのノードはあらかじめ登録した条件にもとづいて望ましいオファーをメリッサに見せる。メリッサは到着時間などの情報を考慮しながら、希望する条件を選ぶことができる。 自動運転車はスマートコントラクトで自動的に動き、自分の判断でメリッサにサービスを提供する。もっとも効率的なルートを探し、責任持って目的地まで送り届ける。無事に目的地に着いたら、スマートコントラクトで自動的に精算が完了する。自動運転車は手に入れたお金の一部を使って、必要であれば自分を清掃したりメンテナンスしたりする。 ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット 「ブロックチェーンレボリューション」P184から引用 以上は中央集権型で巨大な手数料ビジネスとなっているUberに代わりブロックチェーンを使った分散型のSUberというサービスが普及したというシナリオの一部です。本記事では、このようなシナリオに向かって動き出したスタートアップの事例La’zoozとArcade Cityを紹介します。 La’zooz   La’zoozはイスラエルで2013年に設立した「コミュニティが所有する分散型交通プラットフォーム」です。zoozというトークンを発行し、最終的には分散型の経済圏の生成を目標としているようですが、最初のサービスとしてリアルタイムライドシェアリングの提供を目指しているようです。(リアルタイムライドシェアリングというのは事前に相乗りを予約するのではなく、「今すぐ乗る」ことを前提に運転手と利用者をマッチングさせるサービスです。Uberもリアルタイムライドシェアリングのサービスです。) La’zoozはすでに走っている車の空席を埋め、稼働する車の台数を減らすことで車や道路への投資を減らし、交通問題を緩和するという大きな目標を掲げています。ドライバーとして稼ぐことを推奨・宣伝しているUberとの大きな違いの一つです。 Zoozトークンはトークンセールで購入する、開発に参加する、スマートフォンのGPSによる移動情報を提供する(「proof of movement」)ことのいずれかにより入手可能です。サービスの支払いにはzoozを使います。「collaboration(協力)」がキーワードになっており、運転手・プログラマー・デザイナーがその貢献度に応じてzoozトークンが支払われる仕組みになっているようです。このへんはUberより民主的に見えます。 ユーザーインターフェイスはAndroidのアプリを使っています。ブロックチェーンをどう使っているかは情報がありませんが、乗車記録、評判、支払い記録などをブロックチェーンに記録し、到着確認や評判の投稿などある条件でスマートコントラクトによる自動的に支払いが行われ、zoozが分配されることが考えられます。 肝心のサービスですが、La’zoozのウェブサイト中のCommunity Members Mapによると2017年4月現在、サービスが提供されている形跡がありません。リアルタイムライドシェアリングは普及戦略が重要で、ある地域内に一定の運転手と利用者の密度(「クリティカル・マス」といいます)が確保できないとマッチングが成立せず、サービスの提供ができません。まだクリティカル・マスに達した地域がない模様です。 La’zoozの場合、ある地域でクリティカル・マスに達するまでは「ゲームモード」になり、登録者(サービス利用希望者)がサービス利用希望者を増やすごとにzoozトークンが付与されるというインセンティブがあります。そしてクリティカル・マスに到達した後、サービスが開始される設計になっています。 残念ながらサービスが提供された形跡を確認できないため、La’zoozはまだ概念段階と評価せざるを得ません。   Arcade City Arcade Cityは搾取的な待遇に不満を持った元Uberの運転手が開始したライドシェアリングのプラットフォームで、分散型のUberのようなサービスを目指しています。ユーザーインターフェイスとしてiOSとAndroidのアプリが2017年3月にリリースされました。筆者が試したところダウンロードおよび登録は可能でしたが、おそらく東京でサービスが提供されていないこともありサービスを使うことはできませんでした。 […]