米国飛行機事故を機に、サプライヤーはブロックチェーン技術を採用へ

2018年5月9日 BBC編集部 0

  2018年4月17日、米国サウスウエスト航空1380便がペンシルベニア州上空を飛行中に第1エンジンが爆発し、客室で急減圧が発生、11時20分頃にパイロットはフィラデルフィア国際空港に緊急着陸を行いました。 その後、何万もの異なる部品を追跡するという航空宇宙産業が直面する課題が明らかになりました。その課題とは航空会社がエンジン内の個々のファンブレードの履歴を把握していないことであり、この事件を通して明らかになりました。 業界の専門家によれば、ブロックチェーン技術を用いてサプライヤーを管理することにより、操作上およびコスト上の利点に加えて、部品管理の改善により、事故後の安全性チェックが迅速化される可能性があります。 ブロックチェーンは、データのバージョンが1つしかないため、安全に暗号化された監査証跡を提供することができます。つまり、文書処理の手間をかけずにトレーサビリティを確保することができます。 既に使用されている例としては、コンゴ鉱山からスマートフォンまで、コバルトを追跡するなどです。 米国の飛行制御システムメーカーが使用しているMoogというシステムは、VeriPartと呼ばれるブロックチェーンベースのソリューションを作成するためにパートナーと協力しています。このソリューションは、3D印刷コンポーネントを追跡するため最初に使用されます。 Moogの技術責任者ジョージ・スモールは、航空宇宙産業が、他の医療や原子力産業などの厳重規制されているセクターのように、品質と規制の要求に追いつくためにサプライチェーン全体で部品を追跡できるよう多くの努力を惜しまないと語りました。 スモール氏は、ブロックチェーンを使用することで、データの共有における効率性と透明性が向上し、以来顧客からのフィードバックが好感的であると述べています。VeriPartはまだ開発中ですが、Moogはすでにこの技術の他の潜在的用途について顧客と話し合っています。 この技術の支持者は、ブロックチェーンがオープンで分散化的であり、そして異なる関係者が情報を共有できるため、暗号化された監査証跡によって透明性が保証されると述べています。しかし、ブロックチェーンは、サプライチェーンの部品に対し注意を払うために使用できる唯一の技術ではありません。 サプライチェーンの効率を改善するために使用できる他の技術もあります。例えば、先週、エアバスは航空機製造メーカーであるプレミアム・エアテック社をクラウドベースの航空データプラットフォームSkywiseにサインアップしました。   参考元:https://www.reuters.com/article/us-aerospace-blockchain/aerospace-suppliers-look-to-blockchain-for-parts-tracking-idUSKBN1I32AW

日立製作所とみずほフィナンシャルグループがブロックチェーンの活用で提携へ

2017年9月27日 BBC編集部 0

2017年9月21日、日立製作所はみずほフィナンシャルグループと提携し、ブロックチェーン技術の導入を進めていくことを発表しました。日立製作所のサプライチェーンマネジメントの分野にてブロックチェーンが活用される見通しです。 日系大手2社が描くサプライチェーンの未来 発表によると、Hyperledger(ハイパーレッジャー)テクノロジーを用いて分散型台帳システムを構築し、10月を目途に2社で共同実験を開始していくとのことです。改ざん不可能な分散型台帳を、サプライチェーン上の製品の受注や運送の記録管理や、オペレーション全般のデータ収集に役立てることを目指しているようです。2社の発表では、理想の状態として全ての取引記録が社内のメンバーの誰にでもアクセスできる状態が掲げられています。 日立製作所内で商品の発注をかける際には、商品の注文、注文の承認、請求書の作成、請求書の承認という、最低でも4段階のステップを経る必要があるそうです。しかし、従来これらのステップは人の手で行われていたため、正確性や信頼性の面に問題がある可能性について指摘されていました。ここに対して、ブロックチェーンを導入して発注フローを整備することで、大幅な効率化につながる可能性があります。また日立製作所は、将来的に自社のIoTプラットフォームであるLumada(ルマーダ)に今回のブロックチェーンプラットフォームを組み込み、データ収集プラットフォームとしてさらに性能を向上させていくことを狙いとしているそうです。 日本発のブロックチェーンプラットフォーム みずほフィナンシャルグループにとって、ブロックチェーンプラットフォームの実証実験を行うのは今回が初めてではありません。2017年7月には、大手総合商社である丸紅株式会社や、損保ジャパン日本興亜株式会社に対して、取引の透明性向上に向けて同社のブロックチェーン技術を提供しています。 また、日立製作所も、2016年3月の段階でアメリカのカリフォルニア州シリコンバレーにブロックチェーン研究所を設立しているほか、ポイントサービスにおけるブロックチェーンの活用方法を確立するなど、積極的な活動をみせています。今後も日本企業発のブロックチェーンプロダクトに注目です。

ネスレ、ユニリーバらがサプライチェーンにブロックチェーン活用

2017年9月26日 BBC編集部 0

2017年8月22日(NY時間)IBMは食品大手10社とのブロックチェーン活用に向けた連携を発表しました。(関連記事)提携企業にはネスレやユニリーバといった世界的企業を含み、インパクトの大きい連携になりそうです。昨今ブロックチェーンは金融分野以外への導入が進められています。その中でもIBMは先進的に多分野でのブロックチェーン活用に取り組んできました。本記事ではこれまでのIBMのブロックチェーン活用に向けた企業とのコラボレーションと、今回の食品業界における大規模連携について紹介します。 IBMによるブロックチェーンのサプライチェーンへの活用事例 IBMはこれまで、多くの企業と提携しサプライチェーン活用を進めてきました。売上高世界一の海運企業であるMaerskとは海運業にサプライチェーンを活用しました。ダイヤモンドなどの分散型台帳を用いた価値保証を行うEverledgerとは、ブロックチェーン技術を提供してきました。今回の大規模提携にも参加しているウォルマートとは2016年10月より提携しており、中国産の豚肉やメキシコ産のマンゴーといった商品の流通経路追跡の実証テストに取り組んできました。ウォルマートの食品安全部門副責任者のYiannas氏はインタビューに対し、これまでのIBMとの連携を好意的に捉えている旨を述べています。 食品大手10社の大規模連携 今回IBMと提携することになったのは、ネスレ、ユニリーバ、ドール、ゴールデンステートフーズ、クローガー、マコーミック、マクレーン、タイソンフーズ、ウォルマート、ドリスコールの10社です。この提携によってIBMと食品販売企業、小売企業を含む大きなグループが誕生し、サプライチェーン技術の生産分野への活用に一歩近づくと言われています。 提携の目的2つあります。ひとつは正確な電子記録を保持することです。もうひとつは鶏肉やチョコレート、バナナのような食品のトレーサビリティを向上させることです。まずブロックチェーン導入によって、データ管理プロセスを改善することができます。現在のデータ管理には農場経営者・ブローカー・卸売業者・加工業者・小売業者・規制当局・消費者が関わっていて非常に複雑です。しかしブロックチェーン技術によって、より正確なデータ管理がよりシンプルにできるようになります。またブロックチェーンで追跡できる情報は、温度、品質、船積日、発送日、設備の安全証明などです。これによりトレーサビリティの正確性とスピードの改善が可能です。現在1つの食品の出所を追跡するのに数週間かかるようですが、将来的に秒単位に改善されることも十分考えられます。 一方ブロックチェーン技術を提供するIBMのこの提携の目的は、ブロックチェーン活用の拡大や食の安全性向上以外にもあると考えられます。それはIBMの既存のクラウドビジネスと融合した関連サービスの将来的な利用を取引企業に促すことです。またIBMのブロックチェーン部門の副責任者のBrigid McDermott氏は、将来的にProof of Concept(PoC, プルーフ・オブ・コンセプト)の領域のビジネスにも取り組むと述べています。ブロックチェーンのサプライチェーンへの導入はますます盛り上がっていきそうです。

イギリスの汚染タマゴ問題に見るブロックチェーンの可能性

2017年8月31日 BBC編集部 0

  2017年8月、ヨーロッパで流通している食用卵が、人体に健康被害を及ぼすanti-lice agent(抗寄生虫剤)に汚染されていたことが判明し、大きな問題になっています。イギリスの食品基準庁の発表によると、薬剤は主にオランダやベルギーで使用されており、イギリス国内において確認されている範囲で21,000個の汚染された卵が流通していたとのことですが、被害の全容は未だつかみ切れていない様子です。 2017年3月にはブラジルで発がん性物質が含まれる鶏肉が出荷されていた食肉不正問題が話題になるなど、食品による健康被害問題が世界中で後を絶ちません。しかしこのような問題は、ブロックチェーンの導入によってその解決に期待できるかもしれません。 食のサプライチェーンを次のレベルへ 食品業界のサプライチェーンは大きく複雑です。生産者から数多くのプレイヤーを中継することで、最終的に消費者の元に食品が届けられます。しかし、その過程の取引が電子化されていなかったり、取引記録が各事業者のドメイン内で管理されていることもあり、サプライチェーンを俯瞰して食品の流通経路を完璧に、迅速に辿ることは難しくなっています。。今回の汚染卵の事件でも、スーパーマーケットがこの問題に直面し、問題の原因特定まで数日に渡る時間がかかっている模様です。しかしこの複雑なサプライチェーンも、ブロックチェーンを活用することによって迅速に問題の原因を特定できるようになると考えられています。ブロックチェーンを用いることの長期的なメリットは以下の5つがあると考えられます。 1. 食品の信頼性の向上→ブランド価値向上 / 食品偽装の減少 2. 被害拡大防止がしやすくなる 3. 配送品質の向上 4. サプライチェーンにおけるコスト削減→利益率向上 5. 環境問題解決への貢献 ブロックチェーンは複雑なアルゴリズムによって守られており、取引記録が改ざんされる恐れが非常に低いです。また、分散型台帳を辿れるようになることで流通経路の透明化され、製品の出所を正確に把握することができるため、食品偽装の減少にも期待することができます。これは長期的にはブランド価値を高めることにつながり企業にとって大きなメリットとなります。 万が一食品の汚染が発覚した際も、分散型台帳で流通経路を辿ることで、考えられる汚染の原因を短時間で特定できます。それだけではなく、その食品がどのエリアに流通したのか瞬時に把握できるため、被害の拡大防止策を今まで以上に早く実施することができます。 さらに、ハードウェア面でもブロックチェーンの恩恵を受けられるかもしれません。ブロックチェーンとIoTを組み合わせることによって、鮮度管理が徹底した配送を実現することができるようになるでしょう。例えば、ケニアの養鶏場からイギリスに届けられる卵は、その運搬過程で最低4℃から最高10℃までと、冷蔵温度に大きな幅がありますが、ブロックチェーンとIoTと結びつけることによって、このような状態が可視化され、今後配送品質が向上する可能性があります。 また、支払いに暗号通貨(仮想通貨)を用いる場合、銀行などの第三者機関に手数料を支払う必要がなくなります。サプライチェーン上の各事業者が銀行を介さずに暗号通貨で直接取引するようになれば、業界全体で大幅なコスト削減につながるでしょう。各事業者は削減されたコストの分、利益率を上げることができます。 そして最後に、ブロックチェーンの導入が、今後環境問題の解決にも貢献する可能性があります。保全生態学者のGuillaume Chapron氏はこれまでの自然資源の過剰消費や環境汚染は、説明責任のないビジネスを行う者によって引き起こされたと述べています。しかしブロックチェーンにより、企業の製品製造過程で環境に与えた負荷が明確になることで、環境への配慮を促進され、環境汚染が改善される可能性がある、とChapron氏は主張しています。 IBMの大規模コラボレーション  食品サプライチェーンにブロックチェーンを導入する動きは既にでてきています。実際に2017年8月23日、IBMはDole、Driscoll’s、Golden State Foods、Kroger、McCormick and Company、McLane […]

石油産業の構造にブロックチェーンが与えるインパクト

2017年8月30日 BBC編集部 0

  石油産業は、これまでDWC技術(Dividing Wall Column)やペトロリオミクス技術といったような、先進的なテクノロジーを他の業界に先駆けて積極的に取り入れてきました。しかしその一方で、今世紀で最も重要な技術のひとつといわれるブロックチェーンの導入に関しては遅れをとっていると言われています。今回の記事では、ブロックチェーンの導入が、石油産業の構造にどのようなインパクトを与えるかについて注目していきたいと思います。   石油業界の現状と課題 石油に対する世界的な需要は全体的には増加の見込みがある一方で、需要増加分以上に精油所の新設や増設が進み、供給過剰となってしまう可能性もあります。また、需要の増減については地域によって違いがあります。例えば、日本では少子高齢化や自動車の燃費向上によって需要が減少していますが、欧州では域内の製油所の整理が進み、中東などの域外からの輸入需要が増加する動きがあります。アジアでは新興国を中心に需要の伸びが期待されており、豪州では国内需要の伸びに応じて、輸入が増加する見込みです。また環境問題への対策として石油使用の規制が進められ、バイオ燃料への取り組みがさらに強まることも考えられます。 一方、石油の供給面でも構造的に懸念点があります。近年、石油の主要な産出地域である中東地域で政治的不安が広がっています。それを受けて、中東国家の反体制派であるテロ組織などに活動資金が渡らないように、石油の産出元の健全性が求められています。しかし、イスラム国とトルコ国境に不審な石油運送ルートの存在が衛星画像で指摘されるなど、石油への信頼性が大きく揺らぎました。   このように、石油や石油化学産業のサプライチェーンは⑴採掘から精製地、⑵精製地から最終消費者に届けるまでに数多くのプレイヤーを経由するため、非常に大きく複雑な流れになっています。現在の石油業界では、企業間や部署間での取引効率化やセキュリティ向上のため、業界内での合併や戦略的提携の拡大が進められてきました。しかし、これらの課題を低コストで解決できるポテンシャルをもつ、ブロックチェーン技術の活用に業界内で注目が集まっています。 金融や政治の分野で活用されるブロックチェーン 分散型台帳技術とも呼ばれるブロックチェーンは、取引記録の改竄が困難、悪意ある攻撃を受けにくい、容易に取引記録にアクセスでき透明性が高い、などの特徴をもっています。 financeとtechnologyを掛け合わせたフィンテックが進む金融業界では、与信審査やあらゆる業務の効率性を高めるべく、スマートコントラクトや分散型台帳を導入することによってエラー率の減少、取引の高速化、透明性向上に取り組んでいます。ブロックチェーンは他にも、社債取引、送金、詐欺対策、各種の売買取引に活用されており、これらは石油産業においても同様に活用できることが期待されています。世界最大級の産油国であるアラブ首長国連邦(UAE)では、既に行政レベルでブロックチェーンの導入が進んでいます。UAEは“Dubai Blockchain Strategy”を掲げ、2020年までにUAEの全ての政府機関でのブロックチェーン活用を目指しており、今後石油の分野にも進出していくことが期待されます。   石油業界でのブロックチェーン活用の今後の動向 現在の石油産業では、石油生産、精製、運送において、生産者や、供給者、建築業者、下請業者、精製工、小売業者といった幅広い人が関わっています。ここにブロックチェーンを導入することによって分散型台帳を参照することで、各箇所で行われていた膨大な事務処理を大幅に削減することができます。また、ブロックチェーン上で取引が容易に追跡可能になるので、石油取引に透明性を確保することができます。石油産業やガス産業において、取引の透明性向上は、規制管理の面でも非常に重要です。行政機関などの規制を行う主体は、ブロックチェーンの導入によって、取引の規制がきちんと実行できているか管理しやすくなるでしょう。取引コストの削減や、石油のルーツの健全性、取引価格の透明性が求められる石油産業界において、ブロックチェーン導入は1つの大きなキーとなりそうです。   [参考] http://www.ide.go.jp/library/Japanese/Publish/Download/Report/pdf/2007_04_16_05.pdf PwCあらた監査法人、『Industry snapshot: Oil and […]

次世代の「食の安全」を支えるのは、DNA解析技術とブロックチェーンである

2017年8月26日 BBC編集部 0

その食品は本当に安全なのか? 世の中には数多くの食品がありますが、「この輸入牛肉に大腸菌は付着していないか?」「このビーガン向けの大豆パティは、本当に100%植物由来のパティなのか?」「”遺伝子組み換えでない”との表示がついているが、本当に遺伝子組み換えをしていないのか?」といったように、食品の提供者が安全性をうたっていたとしても、疑いの目をもって検証しなければ、その食品が本当に安全なのかどうか、わかりようがありません。このように食の安全性に疑いがある状況では、文字通り分子レベルの生物学的な検査を経て、本当に安全なのか確かめる必要があります。 DNAのデータが「食の安全」を守る 食品業界では、企業の提供する「食の安全」への信頼が一度でも損なわれてしまうと、ブランドイメージが大幅に下落してしまうため、このような問題を未然に防ぐことが何よりも重要です。近年に入り、食品のDNAシークエンシング(DNAを抽出して解析する作業)が容易になったことや、コンピュータ上で大量の情報を保管できるようになったことによって、「食の安全」の世界は新たな次元に突入しようとしています。 「食の安全」の最先端の現場では食品に含まれるDNAが解析され、その結果がデータベース化されています。このデータベースにより、どの食品にどのDNAが含まれているか(あるいはどの食品にはどのDNAが含まれていないか)が明確になりました。これによって、問題の発生からその原因の特定までが極めて容易になりました。例えば、ある患者が特有のDNAパターンをもつサルモネラ菌による中毒症状を訴えていた場合、そのサルモネラ菌がどの食品由来で体内に侵入したのか、直近の食事の履歴からあらゆる可能性を検証して、食材レベルで感染ルートをピンポイントで絞っていくことが可能になります。 食品に含まれるDNAの分析を行うスタートアップである、Clear Labsの共同創業者の一人であるMahni Ghorashi氏は、DNA解析について「(DNA解析のコストが低下したことにより)今まで解析してみようとすら考えなかった対象についても、私たちは積極的に解析にかけることができるようになった。」と述べています。またGhorashi氏は、FDA(アメリカ食品医薬品局)局長のEric Brown氏の言葉を引用し、近年のDNA解析技術の進歩について「まるで裏庭の望遠鏡から、ハッブル望遠鏡にアップグレードされたかのようだ。」と表現しました。 アメリカの国立ヒトゲノム研究所によると、2008年時点で1000万ドルだったヒトゲノムの解析費用は、現在わずか1000ドルまで低下しているとのことです。Ghorashi氏によると、Clear Labでは特定の1種類のDNA解析であれば、1サンプルあたりわずか10ドルでできるそうです。遺伝子組み換え食材混入の有無を確かめるスクリーニングテストでは、食品に含まれる全ての原材料のDNAを解析しなければならないため、数百ドルかかってしまうそうですが、それでも10、20年前と比較すると破格の値段で検査することができるようになりました。 DNAシークエンシングの課題 このようにDNAの解析にかかるコストは著しく低下しましたが、ひとつ大きな課題が残されています。それは食品のDNA解析に時間がかかってしまう、ということです。例えば、どのようなDNAが含まれているかが不明な食品では、分析に3~4日ほどかかってしまうそうです。新しい食材を導入する際には、安全性の検証が欠かせませんが、輸入食品のなかでも特に傷みやすい果物などは、輸入してからすぐに国内市場に出荷する必要があります。今後より高い精度で食の安全性を確保するためには、1日、あるいは数時間以内に食品に含まれるDNAの解析できるようにする必要があります。綿密な検査によって安全性が確保されているものの、遺伝子レベルの検査のスピードが大きく向上すれば、「食の安全」の分野にブレイクスルーが起きるでしょう。 ブロックチェーンで原因を見極める ここまでは食品が市場に流通する前の段階において、どのように危険な食品を見抜き、被害の拡大を防ぐか?という視点でDNA解析技術について紹介してきました。ここからは、食品が流通した後に危険性が判明した場合、どのようにして被害の拡大を防ぐか?という視点に移ります。 実は、この食品が市場に流通した後の危機管理の解決策として、ブロックチェーン技術が期待されています。食品のサプライチェーンにブロックチェーンを組み込むことができれば、その食品がどんなルートを辿って運ばれてきたのか、複数の事業者にまたがって、改ざんできない分散型台帳上に記録できるようになります。実際に、アメリカの大手スーパー「Walmart(ウォルマート)」では、既にブロックチェーンの導入実験が始まっています。現在は輸入マンゴーと豚肉の2品目のサプライチェーン上でテストが行われているようです。 更にWalmartは、自社倉庫からお客様の自宅までドローンで荷物を宅配する構想を発表しています。このドローンによる宅配が実現すると、サプライチェーンの大元である生産者から末端である消費者の元まで、どれぐらいの時間をかけて、どんな状態(速度・温度など)で輸送したのか、詳細な記録を残すことができるようになります。従来のWalmartでは、消費者からのクレームで食品の問題が発覚した場合、その食品が辿ってきたルートの特定まで1週間かかっていたそうですが、ブロックチェーンの導入後は、わずか2.2秒で特定が可能になったそうです。このように、早期に流通経路と流通先を特定できるようになると、トラブル発覚後に迅速な初期対応をとることができるようになります。   2016年のFDAの発表によると、アメリカでは年間4800万人(アメリカ人全体のうち、およそ6人に1人)が食中毒にかかる言われています。そのうち12万8000人は重症化して入院することになり、さらにそのうちの3000人が亡くなってしまうそうです。このように多くの人々を悩ませている食中毒ですが、症状が軽度な場合、わざわざ食品の購入先に訴えを起こす人は少ないため、ほとんどの人々が症状を我慢するか、治療費を自己負担するなど泣き寝入りしてしまうそうです。「食の安全」が損なわれることによって、多大なる経済損失が発生しているのみならず、人命までもが失われています。このような現状に対して、DNA解析技術やブロックチェーンのようなテクノロジーによる問題解決に期待が高まります。   参考:https://www.fda.gov/food/resourcesforyou/consumers/ucm103263.htm