スマートコントラクトにおける法的課題

2017年5月24日 BBC編集部 0

前回記事「現役弁護士によるスマートコントラクトの概観」に続き、スマートコントラクトの論点について説明します。今回は、論点整理的な記事となります。 スマートコントラクトの特徴(「ネット上の契約」との違い) スマートコントラクトは、契約の締結と履行の双方又は一方が、コンピュータ・プログラムによって自動的に行われるものであると理解されています。「プログラム」、「自動的」といったキーワードで、「ネット上の契約」と区別されますが、この差を要素に分けてみると以下のように整理できます。 従来のネット契約 スマートコントラクト 締結場所 インターネット ソフトウェア/インターネット 締結意思 人の入力 自動 or 人の入力 契約言語 自然言語 プログラム or 自然言語 履行場所 現実世界 デジタル台帳 or 現実世界 履行方法 請求行為・法的手続 自動 or 請求行為・法的手続 ブロックチェーン 想定なし 活用を想定 プログラム言語で書かれた契約が自動的に成立し、自動的にブロックチェーン上で契約の履行が完了するのが、スマートコントラクトの典型像です。しかし、ネット契約と同じように、相互の意思確認に基づいて自然言語で締結され、契約履行の部分のみ自動的に実行されるものや、反対に自動的にプログラムコードで契約が成立し、契約履行はリアルな方法で行うものも、「スマートコントラクト」の範疇と考えられます。 具体的にどのようなタイプのスマートコントラクトから普及していくかは、現在全世界で実証実験等が行われており、その状況を注視していくことになります。 […]

現役弁護士によるスマートコントラクトの概観

2017年3月3日 林 賢治 0

 ビットコインなどの暗号通過に続くブロックチェーンの活用として、スマートコントラクトが話題にのぼることが多くなりました。今回は、弁護士として日常的に「契約」に携わっている経験も踏まえながら、スマートコントラクトを概観します。 スマートコントラクトとは  スマートコントラクトとは何を意味しているのでしょうか。ウェブサービスの利用規約のように、インターネット上の合意で成立する契約(電子的に成立する契約)とは何が違うのでしょうか。また、ブロックチェーンはどのように活用されるのでしょうか。  現在、スマートコントラクトは世界で実証実験が行われているような状況であり、その定義も明確には定まっていません。様々な定義の試みがあり、コンピューター・プログラムを利用した契約という点では理解が共通しますが、暗号化技術の使用に着目するもの、ブロックチェーンの特徴である分散型台帳の利用に着目するもの、プラットフォーム上で契約が執行されることに着目するものなどがあります。  例えば、昨年英バークレイズ銀行がUniversity College Londonと共同で公表したリサーチペーパー(https://arxiv.org/pdf/1608.00771.pdf)では、an agreement whose execution is both automatable and enforceableとされ、少なくとも何らかの締結自動化が図られた契約という形で、幅広な捉え方がなされています。  ウェブサービスの利用規約などは、通信ネットワークを利用して「サインレスで」成立する契約ですが、あくまで、自然言語で書かれた利用規約の承認という人間のアクションによって契約が成立するものです。料金の支払いなどの契約の履行も、銀行振込などによって行われ、不履行があれば裁判所等を通じた回収行為が必要です。  これに対して「スマートコントラクト」は、契約の締結と履行(あるいは少なくともその一方)がコンピューター・プログラムによって自動的に行われる(完全自動でなくても、少なくとも一定程度は自動化されている)ものであるという理解になっていると思われます。 スマートコントラクトのブロックチェーンとの関連  締結又は履行が自動化された契約という意味であれば、スマートコントラクトは、必ずしもブロックチェーンを利用するものに限らないことになります。しかし、実際にはブロックチェーンへの注目度の高まりに伴い、その活用例(ブロックチェーン2.0、3.0等)として注目されている状況です。  ビットコインのブロックチェーンについて既に多く解説されているとおり、ブロックチェーンにおける権利の記録は、過去から現在に至る権利移転のトランザクションデータが全てつながっており、参加ノードによるブロック認証を経て偽造変造が事実上不可能となった状態で、各参加ノードに公開されているという特徴を有します。  ブロックチェーンのこのような特徴を利用して、契約に要求される契約内容の真正担保や、契約に基づく権利の移転の確実性を持たせることができれば、自動化による取引コストの削減と契約実行の確実性を、同時に実現することが期待できます。  このような理由から、スマートコントラクトは何らかの形でブロックチェーンを利用する形態を指すものとして議論されているのが現状です。   ブロックチェーンの活用状況  ブロックチェーンの仕組みの方から、スマートコントラクトを見た場合、ビットコインのトランザクション情報の空きスペース等に、ビットコイン以外の権利の情報を書き込むことによって、その権利の移転や保有証明にビットコイン・ブロックチェーンを利用するというアイデアがあります(いわゆる「カラードコイン」)。 […]