スマートコントラクトのプロダクト活用

2017年3月29日 森川 夢佑斗 0

第3回目となる本記事では、ブロックチェーンの分散型データベースとしての側面に注目して、解説を行っていきたいと思います。   スマートコントラクトとは まず、スマートコントラクトとはなんなのでしょうか。あえて一言でいうならば、「人の手を介さずに一連の取引が自動的に実行されること」です。ここで取引とは、契約や合意をもとに金品や役務のやり取りを行うことです。 さらに、取引において重要なポイントは以下の2つです。 契約や合意の内容が取引中に変更されないこと 所定のやり取りが正しく実行されること より、スマートコントラクトと取引について理解するために、これまでの取引形態の変遷についてみていきます。   これまでの取引形態とスマートコントラクト 現在まで人の行う取引の形態は、以下のように進歩してきており、一番右がスマートコントラクトに当たる形態です。順を追って説明していきます。 直接取引とは、昔ながらの物々交換を想像するとわかりやすいかと思います。人類は、紀元前3世紀以前から、物々交換を行っていたようです。その後、紀元前3世紀は貨幣が生まれた時期にあたります。この頃から人やモノを媒介として取引が出てきたとなると、仲介取引の発生もこの時期に近いと予想されます。その後、1990年頃から急速なインターネットの発達によりECはもちろんのことあらゆる電子取引が登場しました。現在は、パソコンからガラケー、そしてスマホとデバイスの変遷はあるものの、取引形態は管理者ありの電子取引です。そして、2009年にビットコインが始動して新たに登場した取引形態が、管理者なしの電子取引です。ビットコインは、ご存知の通り銀行などの管理者なしに送金が可能です。これも一つのスマートコントラクトと呼べるでしょう。しかし、どうしてこれまでのインターネットを通じた電子取引で実現困難だったことが、実現可能となったのでしょうか。そこには、ブロックチェーンの存在があります。   ブロックチェーンとスマートコントラクト ブロックチェーンの特徴として、以下の2点が挙げられます。 一度記録されたデータの改ざんが困難であること 管理者なしに処理が実行されること この特徴を用いることで、前述の取引におけるポイントを充足することが可能です。つまり、取引の契約や合意の内容をブロックチェーン上に記録し、改ざんが困難な状態にした上で、その内容通りに管理者なしに実行を行わせることができます。 (参考記事:ビットコインを支える技術「ブロックチェーン」とは) これを実現したのが、ブロックチェーン「イーサリアム」です。 イーサリアムは、独自の開発言語である「Solidity」を備えており、契約や合意の内容をプログラミングコードとして記述し、ブロックチェーン上で実行させることができます。イーサリアムのおかげで、スマートコントラクトの活用範囲が広がり、今では多くの企業やプロジェクトがスマートコントラクトを用いたプロダクトの開発に着手しています。 スマートコントラクトは非常に大きな可能性を持っており、メリットとしては、(ブロックチェーンのメリットと被る部分もありますが、)管理者がいないことによるコストカットや時間や場所といった物理的制約の排除、カウンターパーティリスクの軽減、透明性の担保などが挙げられます。 従来のユーザー同士を繋げるプラットフォームであるUberやAirbnbなどのアプリケーションでも中央集権型システムが一般的であり、ユーザーの間に必ず管理主体が介在していました。しかし、これらはすべてスマートコントラクトを利用することでイーサリアム上で管理者なしに分散的に構築することができます。実際に、いくつものプロジェクトが立ち上げっています。 (参考記事:イーサリアム・ビギナーズガイド-ビットコインとの違いとその活用可能性)   […]

分散型データベースとしてのブロックチェーン活用

2017年3月17日 森川 夢佑斗 0

第2回目となる本記事では、ブロックチェーンの分散型データベースとしての側面に注目して、解説を行っていきたいと思います。 従来のデータベース管理方式 私たちが普段利用しているWebサービスやスマホアプリ、業務システムで利用される個人情報などのテキストデータや画像や動画といったデジタルコンテンツは、基本的にそのサービスやシステムを運用する事業者が個別に所有するデータベース内で管理されています。 例えデータの内容としては同じものでも管理している事業者が異なれば、異なるデータベースに保管されます。複数のサービスで何度も氏名や住所などの同じ情報を登録しなくてはいけないことを思い出していただくとイメージしやすいかと思います。同じ情報なのに、複数の事業者のデータベースに重複して管理をすることは、登録側も管理側も無駄が多いように感じられます。同じ情報を、複数の事業者が一つのデータベースで管理することはできないのでしょうか。オフラインであれば、私達の身の回りのものでそれを実現している例があります。それは、運転免許証やパスポートです。私たちは、これらを飲食店やコンビニの店員に見せることで、生年月日から未成年かどうかを判断したり、顔写真とを見比べて本人確認を行ったりします。これは運転免許証やパスポートの発行を国が担っており、これらが正しい情報確認のもと発行されていると飲食店やコンビニが信用することで成り立っています。つまりは、国が間違った情報を出さないことおよび運転免許証やパスポート自体が偽造されたものではないという信用によって成り立っています。 つまり、以下の2点が重要となります。 最初に入力された情報が正しいと信頼できること 入力された情報が、改ざんおよび複製されないこと 1については、情報が正しいことを確認するために複数のプロセスを経て国が発行をしていることで担保されています。2については、運転免許証やパスポートは、円などと同様に物理的に改ざんや複製が困難なことで担保できています。   では、インターネット上ではどうでしょうか。ある特定のデータベース内の情報を複数の事業者が参照するということは、もとになるデータの正確性および安全性が重要となってきます。それについて、インターネット上の場合、大きく2つの問題が存在します。 記録された情報の誤りや中央管理者による不正 外部からのデータ改ざんなどのセキュリティ問題 国ほど公的な機関でしたらある程度信用しても問題ないでしょうが、民間の企業が行う場合、そのデータが本当に正しいのか、また内部で不正が行われていないかといった懸念が生じます。 また、外部からデータベースへのアクセスを可能にするということは、それだけ脆弱性のある部分を外部にさらしてしまうという危険性を持っています。そのため、例えば個人情報であったり銀行口座の残高など機密性の高い情報になればなるほど、ハッキングリスクの恐れから外部への公開を簡単にはできなくなります。(最近は、銀行APIの公開も増えてきてはいますが。) 上記のような理由から、データベース内の情報を複数の事業者が共有し利用するということが、なかなか進んできませんでした。   課題を克服し分散型データベースを実現したブロックチェーン ビットコインとよくセットで語られることの多いブロックチェーンですが、ブロックチェーンは上記で出たような問題を解決し、複数の事業者が参照できる分散型データベースとしての機能を満たしています。ブロックチェーンは、一つの事業者が集中的にデータを管理するのではなく複数の事業者で分散的にデータを管理することで、改ざんを困難にしています。これを実現するために、特徴的なデータ構造や公開鍵暗号方式、プルーフ・オブ・ワークなどの仕組みがありますがここでの説明は割愛します。 分散型データベースとしての特徴をビットコインを例にしながら見ていきましょう。まず、ビットコインのデータは、すべて公開されており見ようと思えば誰でも見ることができ、こちらのブロックエクスプローラーと呼ばれるWebツールを利用すると、世界中で行われているビットコインの取引を確認することが可能です。つまりは、ブロックチェーン上にあるデータを誰でも参照して利用できるわけです。僕が仮にアドレスAというものを所有しており、そこに0.1BTCが紐付いているとします。サービスXで、僕が自分のアドレスを登録した場合、そのサービスはビットコインブロックチェーンを参照することで、僕のアドレスAの残高を知ることができます。これは、他のサービスYであろうがサービスZであっても同様です。僕のアドレスさえわかれば、僕のビットコインの残高を知ることができます。そして、僕のアドレスにあるビットコインの残高は、ブロックチェーンの特徴として技術的に改ざんが困難です。また、ビットコインの送金は原則として所有している本人しかできません。(サービスの設計次第ではそうではない場合があります。)そのため、ブロックチェーン上に記録されているデータをサービスX~Zといった事業者は信用することが可能なのです。   ビットコインの情報以外を記録することで柔軟な活用を ビットコインブロックチェーンには、「どのアドレスからどのアドレスにいくらのビットコインが送金されたか」がタイムスタンプと共に記録されており、それをもとに「どのアドレスにどれだけのビットコインが保有されているか」も知ることができます。主にビットコインブロックチェーンには、これらの情報しか記録されていないのですが、そこに追加の情報を記録することで、ブロックチェーンの技術的な恩恵にあやかりながらビットコイン以外のデータを記録し参照する試みが増えています。 例えば、Factom(ファクトム)というプロジェクトは、文書データを独自の処理を行った後に、ビットコインブロックチェーン上に記録することで、どのタイミングでどの文書が存在したかを証明します。これは、研究論文や特許などにおいて、どちらが先かを争う場合に有効でしょう。現在ですと、権威ある機関に提出することで、それらを証明していますが、技術的に改ざんができないブロックチェーン上で記録ができるのであれば、そのような機関を通さずとも文書の存在の証明を公的に行えます。その他にも、土地の登記情報やダイヤモンドの所有権をブロックチェーン上に記録する試みが存在します。   ブロックチェーンにより、価値移転が効率化される […]

ブロックチェーンプロダクトの4分類【連載:ブロックチェーンプロダクトの現在と未来】

2017年2月11日 森川 夢佑斗 0

ブロックチェーンを活用したプロダクトは、今後どのように発展していくのだろうか。当連載「ブロックチェーンプロダクトの現在と未来」では、予想されうるブロックチェーンプロダクトを4つに分類し、そのそれぞれについて現在の国内外の事例に触れながら未来における予測と課題について森川 夢佑斗氏(Alta Apps株式会社 代表取締役)が解説していきます。 当記事は、その第1回目となります。 連載:「ブロックチェーンプロダクトの現在と未来」 第1回:「ブロックチェーンプロダクトの4分類」   ブロックチェーンへの注目度は、加熱している  最近、ブロックチェーン技術をある企業が導入した、共同で実証実験を開始したといったニュースを多くのメディアで見かけるようになったように思います。  ブロックチェーンと聞くとビットコインのことなのでは?と思う方が多いかもしれません。しかし、実際は、ビットコイン以外にも様々な種類のブロックチェーンが存在します。ブロックチェーンの種類は、仕組み上はビットコインをはじめとする暗号通貨(仮想通貨)の種類だけあります。暗号通貨の取引高情報をまとめているcoinmarketcap.comによると、2017年2月現在、世界中で600種類以上の暗号通貨が確認できます。  ブロックチェーンとは、ビットコインだけを指すものではないということが伝わったでしょうか?しかし、なぜ今、多くの企業やメディア、起業家からビジネスマンまでがブロックチェーンに注目しているのでしょう?  MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏は、「ブロックチェーンは、インターネット並みのインパクト、そして多くの機会とイノベーションを解き放つポテンシャルがある」と述べました。今でこそ、私たちの生活は、インターネットなしには考えられません。上記の伊藤氏の言葉を借りるならば、それと同じことがブロックチェーンについても当てはまると言えるでしょう。  つまり、現在インターネットが活用されている分野には、ブロックチェーンも活用が期待されると言い換えられます。実際、昨年に経産省が行なった「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」によると、ブロックチェーン技術の潜在市場は、67兆円と予測されています。もちろん、予測が全て正しいとは思いませんが、それだけのインパクトがあると政府も考えているということです。  確かに、ここまで聞くとなんだかブロックチェーンというものは多くの可能性があるようだと感じられます。もちろん、ブロックチェーンは革新的な技術であり私自身もその魅力を強く感じていますが、どんな課題でも解決する万能薬ではありません。そのため、ブロックチェーンやビットコインなどが何を解決するために発明されたのか、そして現在何ができて、何が課題視されているかを理解する必要があります。ブロックチェーンのもたらす未来に花を咲かせることは良いのですが、地に足のつかない期待はブロックチェーンの着実な進歩と関わりなく、多くの失望を生んでしまうことに繋がります。今回のブロックチェーンおよび関連領域への注目を、単なるブームに終わらせないためにも、適切な知識と未来への予測を持って、この分野の話題を盛り上げていければと思います。  前置きが長くなってしまいましたが、当連載が皆さんがブロックチェーンのある未来を予測する際の道しるべになれば幸いです。では、話を続けていきましょう。   ブロックチェーン活用は、金融分野以外へも波及  国内でもメガバンクをはじめとする金融機関が、ブロックチェーン技術の研究を行なっています。国外においては、中央銀行が主導して導入を進めている例も出ています。ビットコインが、決済手段として「お金」に近い存在として扱われていますので、金融機関が注目しているのも納得しやすいかもしれません。  しかし、ブロックチェーンやビットコインは金融分野だけに止まるものではありません。先ほどの経産省の調査によると以下のような分野で具体的に活用が期待されています。  海外でもこれらの領域での活用が始まっており、様々なプロジェクトやスタートアップが登場しています。また、国家単位でもエストニアやスウェーデン、ホンデュラスやジョージア共和国などでも土地の登記をはじめ様々なbに分野にブロックチェーン技術の導入が行われている。  プロダクトとしての見え方は、上記の通りなのですが、ブロックチェーン技術をどのレベルまで組み込むかによって、裏の仕組みについてはいくつかの段階があります。   ブロックチェーン技術を用いたプロダクトの4分類  大きくわけると、これまで企業が行なっていた一部のプロセスがブロックチェーン上で行われるようになる場合、もしくはその全てがブロックチェーン上で行われるようになる場合に分けられます。 […]