STOの実相-「合法化」・「資金調達」・「流通」をめぐる困難(第2部)

編集:Chainnode,Blockchain Business Community

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「未知を恐れず、前向きに模索せよ」という心を持つことが大切だが、未知に潜在するリスクを冷静に分析し本来の姿を明らかする必要はある。今回では、多角的な視点に立ち、STOのエコシステムを描いていくことを目的とする。

 

第2部 STOのエコシステム

2.1 STOのエコシステムに関与する諸領域

STOのエコシステムに関与する諸領域を表4に示す。そのうち、「第三者サービス機関」、「監査機関」、「ウォレット」、「プロトコル提供者」を中心とし、その内容を概述する。

 

第三者サービス機関

STOのエコシステムにおいて、第三者サービスを提供するあ業者が一番多く、STOのガイドや業界内の資源をサポートし重要な役割を担っている。一方で、サービスの基準が一致していないため、弁護士費用、一般サービス料、VIE費用といった項目が含まれている。その中で、弁護士費用が大きな割合を占めると考えられてる。

あるコンサルティング会社が提供した見積書を例に挙げると、基本プランの場合では合計75000ドルの内、弁護士費用は60000ドルを占め、一般サービス料は15000ドルとなっている。また、WFOEとVIEの構築の場合では8000ドルの追加料金が加算され、総費用は83000ドルを上回ると推定される。

関係者の話によると、「弁護士費用が一番高く、50000ドルから150000ドルが相場であることが通常だ」と指摘されている。ここで注意すべきは、STOの法的根拠が私募に適応される法律に依存する点にあり、この現在の弁護士費用は不当に高い費用を請求されている場合が存在する。

監査機関

Tokenyの資料により、ヨーロッパ、北アメリカ及びアジアにおける影響力のある監査機関の一部が明らかになった。リストは以下のとおりである。

ヨーロッパ

北アメリカ

アジア

これら11カ国の監査機関が、STOを扱った法律を制定しておらず、単にトークンを「応用型」と「証券型」に分類し、証券型トークンを既存の証券法の規制に当てはめる方針が一般的で、各国政府が投資家の利益の保護のため、STOに対し、保守的な態度を見せている。

・委託(ウォレット)

ここでの委託とは、業者が利用者の依頼を受け、その利用者の代わりにデジタル資産や仮想通貨を所持し財産の安全を確保する企業や組織を指す。証券としてのSTは、該当する投資家に所定のウォレットの利用を要求する。そのためSTの発行側は、ウォレットにいくつかの機能を配置する必要もある。

・プロトコル提供者

一定のルールに沿って証券型トークンを伝送する技術が求められており、このようなプロトコルの技術を提供する業者は多数存在している。TOKENYのデータにより、プロトコルを開発する企業の情報は以下のとおりである。

                                                                                                                                                        

上記のように、イーサリアムが業界を牽引し強い存在感を示している。殆どのプロトコルはイーサリアムのERC20、ERC725、ERC1400といった基準に基づいて開発されたものだと分かっている。その中で、既にSTOのプロジェクトに利用されているのがSECURITIZEのプロトコルである。しかし、今のところこの分野においての規制基準や規範はなく、各社競争の中にあると言えるだろう。

 

2.2 STOの先駆者に選ばれた道に注目

第1部の紹介から、STOのエコシステムに対する不安を抱え始めた人がいるかもしれない。ここでは、STOの先駆者の経験を踏まえ、STOを実施するうえで注意しなければならないことを確認していこう。

STO Filterは、103のSTOプロジェクトを公開し、それを様々な類型に分けラベルを付けた(表5)。業界を跨いでSTOに参入し、金融、不動産、技術はその代表的な分野である。

一方、STOの先駆者は、ウォレット合法化を如何に推進し、資金調達の状況はどうなっているのか、また証券二級市場に既に流通しているSTはどのぐらいの割合を占めているのかを次項より触れていく。

・合法化への道

STOを合法化へ、いわゆる監査環境を備えられる国が多数存在するにも関わらず、その実施は米国においてなされている。例えば、STOCheckで公開された45のSTOプロジェクトの内、19のプロジェクトは米国で合法化を実施した。また、STOScopeで公開された52のSTOプロジェクトの内、米国を選んだ数は19だった。

上記のリストを見ると、STOによる資金調達が依存する法律は、Reg D、Reg A、Reg S及びReg CFがあると分かる。実際の場合では、 Reg.D 506(c)+ Reg.Sという組み合わせの方法を用いて資金調達を実施することが多い。前者は米国内の資金調達、後者は米国外の資金調達に対応する。私募発行条例のRegulation D506(c)は、「発行対象を2000人以内に制限」、「投資家の身分確認」を厳しく規定するものの、他に対しては柔軟性のある対応を行っているという。ただし、Reg Dに基づいて証券型トークンを発行できるといっても、米国証券取引委員会の審査に通過したことを意味するのではない。そのため、STOを実施した初日からの15日間のうちに、SECでの「Form D」登録を行う必要がある。

資金調達の現状

現在、STOによる資金調達の総額に関する統計はほとんどない。そのため、今回の分析ではSTO Filterで公開された103のプロジェクトの情報をまとめる方法を採用した。

プロジェクトの数量を見ると、資金調達が完了したのは23、実施中であるのは21、実施を予定しているのは59となっている。通貨と仮想通貨の類型を見ると、最も多いのは米ドル。その他はユーロ、ポンド、ETHなどである。目標調達額を見ると、低値の30万ドルから、高値の2.5億ドルまで幅広いものであったが、数千万ドルの目標が比較的多かった。

実際の調達総額を見ると、資金調達が完了したSTOは1~5000万ドル程度であり、tZEROは目標2.5億だったが、実際には1.3億の確保となった。STOを実施している他のプロジェクトに関しては公開情報が少なく、その全てが数十万~数百万ドルの程度にとどまっている。

流通市場

STOによる資金調達が完了後、以下の3つの状況が生じた。①目標調達額を達成できず、STOを断念する。その後、プロトコルに基づいて、投資家に金(仮想通貨)を返す。②目標調達額を達成しプロジェクトを正常に維持した後、投資家に利益を配るが、取引所でトークンは非公開。③標調達額を達成、プロジェクトを正常に維持するほか、取引所でトークンを公開。

IPOが完了した後、株が証券取引所で公開されるのは一般的だが、法的地位が曖昧であるSTはどうなるか。取引所がATS/BDライセンスを有しない限り、証券型トークンを扱うことはできない。また、コードでKYCの実現を求めるSTは、仮想通貨を扱っている取引所にしか頼らないだろう。だが、以上の条件を同時に満たす取引所が非常に少ない。Scde.venturesによると、OpenFinanceには4つ、tZEROには1つとなっている。

 

以上のように、STOを「既存の証券発行」と「ブロックチェーンの改良」という2つのプロセスと見なしてきているため、現時点まで「合法化」が注目されてきた。だが、実際には「資金調達」の方法の1つとして利用されることが多かった。今後、STOが「資金調達」を目的とするよりも、良質なSTOのプロジェクトが「流通性」向けの課題を如何に解決していくのかという部分が期待されているだろう。

次回予定:STOの実相-「合法化」、「資金調達」、「流通」をめぐる困難(第3部)

 

 


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