ブロックチェーン新事業開発支援チームの設立と運用

前回、リーンスタートアップによるブロックチェーン新事業開発についてご説明しました。1000字程度の価値仮説を書くのが意外にむずかしいことやスピード感の重要性についてもお話しました。

複数のチームを並行して走らせると交互に刺激になることや、ベストプラクティス共有についても触れました。

 

ブロックチェーン新事業開発支援チームが必要な理由

ただ、それでも、プロジェクトメンバーが新事業、ましてやブロックチェーン新事業に初めてでは、おっかなびっくり動くしかありません。そうなると、新事業開発がスムーズに進まず、時間を大きくロスします。それだけではなく、慣れていればうまくかわすことのできた問題にぶつかったり、どんなに時間をかけても顧客・ユーザーを満足させる製品・サービスに到達できなかったり、ということが起きてしまいます。

そのため、私は中堅企業、大企業の場合は、ブロックチェーン新事業開発支援チームを専任で置いて、そこが各ブロックチェーン新事業プロジェクトを支援することが望ましいと考えています。

こういう支援チームの提案をすると、多くの経営者が「そんなものは特に必要ない。優秀なメンバーを集めれば、新事業プロジェクトはうまく行くはずだ」と言って必要性を理解してくれません。スポーツならコーチやトレーナーをつけるのが当然と考えられているにも関わらず、会社の新事業プロジェクトは、社員が本気で取り組めば何とかなると考えているようです。精神論だけで何かができると考えがちなのは、まだスパルタ教育や「体育会的ノリ」が信奉されているからかも知れません。

ブロックチェーンのような全く新しいもので、しかも社内外との調整が非常に多く、大企業的でありかつベンチャー的要素もあり、グローバルとローカルの線引きもあいまい、という状況では、ただ仕事ができるだけの部課長に任せるのは危険です。彼らはできないとは言いませんが、会社として決してよい結果をもたらしません。それよりは、専任の支援チームを置いてノウハウを蓄え、会社としてスキルアップしていくことが効果的です。

 

リーンスタートアップを支援するブロックチェーン新事業開発支援チーム

では、リーンスタートアップを支援するブロックチェーン新事業開発支援チームはどういう体制、位置づけ、構成にすべきでしょうか。

上図にあるように、経営者の直下に置き、事業部から生み出される新事業案とその推進メンバーをいったんブロックチェーン新事業開発支援チーム内に置きます。

そこでは、慣れたメンバーのコーチングのもと、新事業案の事業計画を短時間でしっかり詰めます。価値仮説や成長仮説も手早く書いて仕上げ、MVPを設計して電光石火でトライアルを進めます。準備ができ次第、チームは新事業推進プロジェクトとして外に出します。

ブロックチェーン新事業開発チームに助けてもらうと仕事がスムーズに速く進む、本当に助かるという評判をなるべく早く作っていく必要があります。そうなると、事業部あるいは研究所でブロックチェーン関連新事業を検討しようと話し始めた最初の段階で相談されるようになり、会社としては新事業推進が効率的に進むようになります。

 

ブロックチェーン新事業開発支援チームリーダーとメンバーの資質

ブロックチェーン新事業開発支援チームリーダーは、①ブロックチェーンという新しい分野で、②新事業を立ち上げるための、③支援をするという3つのチャレンジを同時に受ける立場ですので、社内でもっとも優秀な部長クラスを当てる必要があります。

具体的には、

  • 問題把握、解決力がある
  • リーダーシップがある
  • 情報感度が高い
  • 好奇心が強い
  • 頭が柔らかい
  • 社内をスムーズに進めるコミュニケーション力がある
  • 社外のITベンチャー、専門家、海外の関連ベンチャーとの連携ができる

という要素を兼ねそなえる必要があり、空いている人、暇な人にやらせる、というものとは違います。

そんな人は社内にいない、無理だと思われたでしょうか。私の経験から言って、そこまで悲観的になる必要はありません。部長にはいなくても担当部長、副部長、課長クラスには多分いるはずです。本当はできるのに、能力をやや抑え気味にしている人もいます。「能ある鷹は爪を隠す」をやり過ぎると爪が完全になまりますが、課長クラスまで枠を広げると、多分それほど捨てたものではないと思います。

ブロックチェーン新事業開発支援チームメンバーの資質は、リーダーに準じますが、メンバーになるとかなりスキルレベルが落ちるのが普通です。ないものねだりをしていてもしかたありませんので、意識が高く、向上心のある人材をなるべく集めます。

リーダー、メンバーともフルタイムとします。チャレンジ度合が大きいので、片手間でできるほど甘くはありません。

アサインしたら、最低2年間は業務に取り組みます。2~3年を目処に、順次現場に戻すことで、ブロックチェーン新事業開発支援チームとしてのスキル維持と、他の社員への貴重な成長機会提供を両立させます。

 

経営者としての役割

ブロックチェーン新事業開発支援チームを活かすかどうかは、経営者次第です。経営者が本気でチームの活躍を期待し、日々声をかけていれば必ず成果を出してくれます。経営者の本気度が伝わるからです。

一方、チームを設置したのはいいものの、本当はそこまで関心を持っていなかったり、すぐに飽きて関心が他に移ってしまったりしたら、チームは形骸化します。

チームが成果を出し始めるには、最低6ヶ月以上かかりますので、経営者はじっくりと腰を据えて取り組む必要があります。といっても何年もかかりません。強い関心を持って期待し、応援し続けるということだけです。

それができない経営者がほとんどなので、差別化は意外に容易だと思います。

ここにインキュベーションの本質があります。目的を明確にし、優秀な支援者を置き、環境を整えて待つ、ということですね。

当記事は、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムの第8回です。ブロックチェーンが、産業、企業、個人に与えるインパクトについて、「どういったことが起きるのか、何をすべきなのか」について、それぞれの立場の方に合わせて解説していきます。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか
※第7回:中小企業にとってのブロックチェーン革命:生か死かの瀬戸際
※第8回:ブロックチェーン革命をリードする経営者、足を引っ張る経営者:選手交代
※第9回:ブロックチェーン時代が要求する経営者のリーダーシップ:ビジネスの根本的な再構築
※第10回:ブロックチェーン革命を推進できる人材の早期育成:チャレンジできるリーダーを確保
※第11回:ブロックチェーン革命を乗りこなす組織の構築:組織原理が根本から変わる
※第12回:リーンスタートアップによるブロックチェーン新事業開発

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。