金融庁が開催した「仮想通貨交換業等に関する研究会」第1回から第9回までの内容概略

仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について、対応の制度などを検討するため、2018年(平成30年)の3月8日に、金融庁は「仮想通貨交換業等に関する研究会」を開催いたしました。

当研究会は2018年11月中旬までに、計9回開催されており、今回は過去9回にわたる研究会で議論された内容をまとめてご説明いたします。

平成30年4月10日 第一回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
初回の会議では、まず金融庁事務局から研究会設置の趣旨と仮想通貨交換業に関する現行の規制などについて説明しました。
その後、日本仮想通貨交換業協会は仮想通貨に関わる関連企業や仮想通貨交換業者の実態を紹介しました。そして3番目に、みずほ証券株式会社の小川久範氏はICO、Initial Coin Offeringの実態について分析しました。本会議では、60%以上のビットコイン取引は日本円で行われ、BTC決済に対応可能の店舗は52190軒を超え、仮想通貨取引に関わる顧客数の90%は20代から40代までに集中し、全体の利用者の約95%が100万円未満の預かり状況という形になっているなど多くのデータが得られました。そして、「ICOによって販売されるトークンも改正資金決済法の規制対象となるべき」という意見は初めて現れました。

平成30年4月27日 第ニ回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
第二回会合では、下記3点にフォーカスし討論しました。
・仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応の状況
・仮想通貨等を巡る国際的な議論の状況
・各国の対応状況及び仮想通貨等を巡る利用者からの相談の状況
金融庁は仮想通貨交換業者に対する登録の注意喚起をするほか、シンカーポール金融管理局(MAS)は仮想通貨の支払属性を認めた一方、中国においては、各金融機関が仮想通貨と関わる口座開設、取引等に関与することを幅広く禁止するなど世界各国の仮想通貨に関する対応を紹介しました。
そして、消費者庁が「仮想通貨に関連すると思われる消費生活相談の状況について」という資料を公開しました。資料によると、仮想通貨に関連する消費生活相談の件数は大幅に増加し、相談者の年齢層にも変化が認められました。
2017年度においては40歳代が最多となっています。相談事例としては、「ハッキング被害に遭った」「不正アクセスされた」といったシステムやセキュリティ等についての相談以外、「信用できる業者なのか知りたい」「不当な請求だったらどうしたら良いか」といったトラブルの有無についての相談などが挙げれられました。

平成30年5月22日 第三回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
今回の議題は、仮想通貨やブロックチェーン技術に関して、それが社会や経済に貢献する可能性について、またそのリスクについて討論されました。
さらに仮想通貨のネットワークやそれを支えるプレイヤーが担う役割がグローバル規模で発展した場合、どう国際標準化に向き合うべきかについて意見交換がなされました。
麗澤大学教授である中島真志氏は仮想通貨の高い匿名性によって、犯罪やマネーロンダリングなどの脱法行為に利用しやすく、仮想通貨を規制するより、仮想通貨交換業者を規制する意義は大きい」という意見を出しました。

平成30年6月15日 第四回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
四回目の研究会では、マサチューセッツ工科大学の伊藤教授や元CFTC(米商品先物取引委員会)委員長でありマサチューセッツ工科大学教授のゲーリー氏、リップル(Ripple)社のサガール氏等から仮想通貨市場と同市場に対する規制の説明等、様々な議論が行われました。
大部分の仮想通貨取引はブロックチェーン参加者としてのノードではなく、取引所内で処理されています。取引所がカストディアン(資産管理を行う機関)を兼ねているのが問題であることが指摘されました。リップル社の会社説明が行われた後、研究会メンバー間でモナコインやビットコインゴールドなどに対する51%攻撃などの事例について討論しました。罰する対象はマイナーなのか、ノードを運営している主体なのか、マイニングプールなのかといった疑問が残されました。

平成30年9月12日 第五回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
第五回研究会では、最初に金融庁から仮想通貨交換業者の検査モニタリングに関する中間取りまとめについて説明がありました。
コインチェックの事案を踏まえて登録済み16社に対して順位、立ち入り検査を実施していること、みなし登録業者は全社に立ち入り検査を実施し、登録申請業者が16社から3社に減少したこと、登録業者として新たに参入の意向を示している企業は上場企業を含み160社超に達していることが明らかになりました。
仮想通貨交換業者の会社規模(総資産)は前年度比553%と急拡大する一方、システムリスク管理では業容や事務量に比べ、システム担当者と第一線にアドバイスを行うのに必要な専門性や能力を有する監督要員が不足しています。人手不足によって、企業内部監督部門も貧弱になり、それはみなし仮想通貨交換業者が三社まで激減した要因ではないかという指摘がありました。

平成30年10月3日 第六回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
第6回目では、仮想通貨に係る各種行為と金融規制のあり方、交換業に係る規制のあり方について議論が進められました。
今回の会合は、規制の枠組みを作る最中で起きた仮想通貨取引所Zaifによる仮想通貨流出事件後、初となる会合でした。
JVCEA会長でマネーパトナーズCEOを務める奥山泰全氏はZaifの仮想通貨流出事件を受け、3つの自主規制を検討しました。
1) ブラウザやメールなどの社内利用を制限し、仮想通貨の管理ネットワークを分離する
2) ホットウォレットとコールドウォレットでの資産保有比率を調整する
3) 外部の有識者を招いたセキュリティ面の技術委員会を立ち上げる
今後、枠組みづくりが進む中で、投資家保護はもちろん、仮想通貨取引所も金融サービスを提供する意識を高めていくことが望まれます。

平成30年10月19日 第七回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
第7回では、最初に国内の仮想通貨取引全体の8割を占める仮想通貨デリバティブ取引の規制の要否や内容、対応面に焦点が当てられ、その後みなし業者に対する「経過措置のあり方」について討論されました。
現状、仮想通貨は金融商品取引法の対象とはなっておらず、既存の外国為替証拠金取引(FX取引)のような広告規制や虚偽告知の禁止、再勧誘の禁止、損失補塡の禁止、証拠金規制などが適用されていません。
日本の仮想通貨への認知は、口コミやテレビなどで取り挙げられ、高まりつつありますが、国内大手の仮想通貨取引所Zaifで約70億円の流出事件が起きるなど、新しいテクノロジーがもたらす未来よりも未熟さが取り沙汰されてしまう現状も続いています。仮想通貨が他の金融商品と同様、安心して取引ができる環境が期待されます。

平成30年 11月1日 第八回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
今回の会合では、日本の仮想通貨による資金調達ICOの方向性や、他の国のICO規制の状況についての発表となりました。
2017年の全世界でICOによる資金調達額は約55億ドル、2018年1月から7月までは約143億ドルに急増している一方、ICOに関する詐欺も頻繁に発生しています。
日本も中国、韓国と同じくICOを全面禁止すべきではないかという意見はしばしば出てきますが、今回の研究会の議論では、ICOが新たな資金調達手段として国際的に使われている現状や、スタートアップの資金調達の新しい手段が重視され、適切な規制を設けるべきとの声があり全面禁止は見送る方向で合意されました。
しかしながら、投資家保護の観点からもICOに対する規制が必要であることは明らかであるため、今回の研究会ではスイスの事例が検討されましたが、日本は現有の規制枠組みを活用するか、ICOに特化した規制枠組みを設けるかという疑問が残されました。

平成30年 11月12日 第九回「仮想通貨交換業等に関する研究会」
第九回の会合では、前回の続きとしてICOについて議論しましたが、今回は主に「ウォレット業者に対する規制の必要性」「不公平な現物取引に対する規制の必要性」及び「仮想通貨の呼称」について集中的に意見交換がなされました。
仮想通貨取引所などトークン交換業は金融庁の規制対象となっていますが、現在世界から注目を集めているウォレットに対する規制はまだ明確されていません。ウォレットによる海外マネーロンダリングを防ぐために、「FATFをはじめ諸外国が協力して法整備を進める必要がある」という声も上がりました。
仮想通貨の現物取引において、様々な不正行為が問題になっていますが、研究会のメンバーから「国民の税金を使ってどこまで監督すれば良いか話が見えない」や「自己責任」という意見が多く聞かれました。
ただ、不正を放置して良いという訳ではなく、あくまで規制の枠組みが金商法と同一と考えづらいというのがメンバーの考え方です。

 

 


資料:fsa

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