ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を

こちらは、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムです。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
当記事は、その第4回です。

飛行機もコンピュータもインターネットも、最初は全く理解されなかった

ライト兄弟が人類で初めて飛行に成功したとき、誰もそれが可能なものだと認めませんでした。

コンピュータが発明されたとき、有識者でさえ「将来、世界で1台くらいなら必要になるかも知れない」と発言をしていました。

インターネットは1990年頃、エンジニアの遊びだと思われていました。

これらの例について、その後の爆発的な発展を予想した人はほとんどいません。

人類の叡智と言っても、本当にたかが知れています。見たことのないもの、それまでの常識と違うものに対して、後から見ると驚くほど先見性がなく、その割に大変もっともらしくこけおろすのが常です。

ブロックチェーンに関しては、ビットコインが最初、違法サイトに使われていたとか、マウント・ゴックスの事件でさらに怪しいとか、価格が極端に上下するので決済に使えないなど出発点は相当ネガティブでした。理解されるどころか社会的に不適切なものとして否定されていたわけです。

 

ブロックチェーンが世の中を決定的に変える理由

ゴールドマンサックスのようなトップクラスの投資銀行ですらも数年前はビットコインやブロックチェーンに対して否定的でした。ところがここに来て、大手の金融機関も、各国の中央銀行ですら、ブロックチェーンを使った新しい仕組みの導入に全力で取り組んでいます。

欧米、アジア、アフリカなど世界各国がその話題で持ちきりですし、ダボス会議ですら例外ではありません。この変化のスピードが驚くほどです。認知され普及し始めるまでのインターネットに比べても、電光石火と言って過言ではないでしょう。

なぜそこまで一気に、急に注目されているのでしょうか。

私の理解では、インターネットという情報インフラが開発途上国にいたるまで広範囲に普及している一方、その割に安全性には常に不安を抱え、送金費用などは大きいままといった問題点がダブルに後押ししたと考えています。

ブロックチェーンの多方面かつ莫大なメリットの前には、わずか数年前にあった不適切な事件の記憶が吹っ飛んでしまったわけです。

非効率・高コストだった決済方法や証券取引を大きく改善するだけではなく、クレジットカード、契約書、物流、不動産取引、ダイヤモンド取引、500億個~数十兆個がインターネットにつながるといわれるIoT(Internet of things モノのインターネット化)、自動運転車など、安全で、人手をわずらわせない、全く新しいサービスが続々と生まれています。

シティバンク、三菱UJF銀行など大手金融機関は、これまで巨大かつ中央集権型の組織で信頼を担保していましたが、その必要がなくなり、分散型の無数の組織に置き換えられていきます。金融機関だけではなく、インターネット時代に圧倒的な存在になったアマゾン、Facebook、AirBnB、Uberなども同じリスクにすでにさらされています。

つまり、大企業、特にインターネット時代に時価総額が数兆~数十兆円になった巨大企業に対しても、一気に下克上が起きつつあります。

 

どうやって感度を上げておくのか

ブロックチェーンが世の中を決定的に変えると言っても、まだそこまで見えていない今、私たちはどこに着目すればいいのでしょうか。毎日、普通にFacebookやLINEでメッセージのやりとりをしているだけ、Amazonで本を買ったりしているだけ、ATMで現金おろしているだけ、という状況で感度を上げるのはいうほど簡単ではありません。

しかし、今そのままぼんやりと生活をしていると、数十年、数百年に一度のチャンスをつかめるかもしれない可能性を見過ごしてしまいます。

世界ではアマゾンのジェフ・ベゾス、Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Googleのラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、テスラのイーロン・マスクなど、国内ではソフトバンクの孫正義、楽天の三木谷浩史、サイバーエージェントの藤田晋(すべて敬称略)などの創業時と同じ立ち位置にいるにも関わらず、です。

銀行・証券・保険などの金融機関の大半の業務も、また一般企業内の経理、財務、物流、営業事務部門などを中心とする定型業務、書類作成業務も、また公認会計士・税理士などの業務も、劇的に減少するリスクがますます高まっています。

一生安泰だと思っていた企業が、気がついたら泥船だった、ということも次々に起こります。スマートコントラクトによる変化は一瞬で起きますので、この業界、この業種は10年かけてゆっくりと進む、というようには多分なりません。

したがって、「好むと好まざるに関わらず、関心のあるなしに関わらず、感度を上げておくほうが望ましい」ということになります。

そのためには、第一に、あらゆる定型業務、書類、手続きは人がやるのではなく、スマートコントラクトで実施されると考えてみることです。新入社員になったとき、なんでこんな繰り返し作業があるのだろうと思った仕事、何年かして慣れてしまった業務、そういったものはすべてなくなる可能性があります。

第二に、これまで決済手数料が高すぎてできなかった少額決済や、クレジットカードを使えなかった分野にブロックチェーンによる低コスト・安全な決済が導入されますので、新しいビジネスが立ち上がり、煩雑な作業がなくなっていきます。

第三に、ここまでの状況を見ると、日本の変化は欧米を含む他国より遅れる可能性があります。政府の規制が強い上、企業の意思決定が非常に遅い、という日本的な社会・企業風土があるからです。したがって、他国の状況に目を向けておけば、半年、1年後に日本で何か起きるのか、だいたいの予想がつきます。

第四に、自分の目で確認してからでは遅いし、日本のメディアは内向きで全く当てにはできませんので、自分で身を守る必要があります。少なくともGoogleアラートなどを活用して、世界で何が起きているのか、常に見張っておくことがお勧めです。日本語の情報だけでは英語情報の数十分の一しかないので不十分ですが、少なくとも書いたものに関してはGoogle翻訳の精度が最近少し上がっているので、ある程度は把握することができます。

第五に、続々生まれるブロックチェーンベンチャーやブロックチェーンでの実証実験を進めている金融機関にいる人と親しくなっておくことです。ブロックチェーンビジネス研究会のFBグループや毎月にミートアップ(次回は、2月17日開催。)をはじめ、ブロックチェーンの勉強会が続々行われていますので、行くだけで多数の接点が生まれます。

 

既成概念にとらわれないために

気づいたことがあったら、すぐに書き留めると頭に入りますし、考えも進むので効果的です。例えば、「南米のある国で、不動産取引をブロックチェーンによって置き換える実証実験が行われた」というニュースを目にしたら、A4用紙を横において、縦横に線を引き、四つに区切ります。

  • 左上: 耳にしたニュースそのものを想像も含めて詳しく書く 
  • 右上: なぜそれに今まで気づかなかったのか、これまでの着眼点の反省を書く
  • 左下: 同じ発想を他の業種、他の職務に起き替えたときの可能性を書く
  • 右下: 自分はこれに対してどうするかのアクションを書く

これだけ書くのに、数分もかかりません。週数回、何かに気づくたびに書き留めていくと、数ヶ月もしないうちに、感度が大いに上がりますし、既成概念にとらわれず考えることができるようになっていきます。発想が確実に自由になっていきます。

さらに、このA4メモを見ながら、仲間同士で発表しあうとより刺激になります。一人3分程度でできます。そうすれば、同じ職場でブロックチェーンに関心を持つ人が数人集まり、週2度ほどお昼休みか始業前に意見交換をすることで、大変に感度が上がります。1人で何もかもする必要がありません。楽しく話す中で既成概念にとらわれない考え方、発想法がだんだん身についていきます。

しかも、ブロックチェーンはITやインターネットだけのことではないので、エンジニアも非エンジニアも、理系も文系もハンディキャップなしに話ができ、結構楽しいと思います。呼んでいただければ、私ももちろん参加させていただきます。

ご意見、ご質問は akaba@b-t-partners.com までお気軽にお寄せください。すぐにお返事します。

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。