ブロックチェーン時代が要求する経営者のリーダーシップ:ビジネスの根本的な再構築

ビジネスの根本的な再構築

ブロックチェーン時代に生き抜くには、経営者のリーダーシップがこれまでになく要求されます。既存事業が安定している場合、取締役も社員も、誰も大きな変更を望みません。業績が少しずつ低下していたとしても、必ず盛り返すことができると根拠のない期待のもと、現状を維持することに汲々としています。

ところが、新しいチャンスをつかむにも、生き残りをかけた挽回策をとるにも、ビジネスの根本的な再構築が避けられません。売上を5%伸ばそうとか、コスト削減をしっかりやろうというレベルではほとんど答えにならないからです。もっと根本的なアプローチがどうしても必要です。それは経営者にしか推進できません。

 

事業ビジョン、事業戦略、組織の再構築

まず始めるべきことは、事業ビジョンの再構築です。自社は5年後、10年後にどういう価値を提供するどういう会社になりたいのか、ゼロベースで考え直します。

例えば、ある人材紹介会社が「優秀な人をふさわしい会社へ一人ひとりご紹介し、活躍していただく」ことをビジョンとして創業10年、社員40人まで伸びてきた場合を考えてみます。

それがブロックチェーンベースの自動紹介システムにおいては、マッチングがスマートコントラクトによって行われるため、価値を産み、差別化をしていた部分がなくなってしまいます。そうなると紹介することで簡潔していたビジネスから、個々人のスキルを上げたり、入社後に活躍できるようにフォローしたりするトレイナー的な業務にシフトする必要があります。

これまでの事業ビジョンを、「優秀な人がスキルアップし、新しい職場で継続して活躍できるようにご支援する」という新しい事業ビジョンに書き直し、社員も「人材紹介コンサルタント」から「スキルアップコーチ」に切り替えていくことになります。

事業ビジョンが変われば、それを実現する方策もすべて変わります。どうやってスキルアップコーチの資質を持った人を多く集め、スキルアップの具体的な方法を研究し実践を繰り返すことで競合他社に提供できない効果的なノウハウを確立するか、それが決め手になります。

「人材紹介コンサルタント」であれば、実質的に営業に近いよりフラットな組織運営で十分機能していたものが、「スキルアップコーチ」であれば、もっと少人数のチーム構成とし、よりシニアなコーチがジュニアのコーチの育成をしつつ、顧客へのトレーニング、コーチングを提供する形に変えていかなければなりません。また、提供するスキル分野ごとの専門性を高める必要があるため、問題解決力強化、アクティブリスニング力強化、コミュニケーション力強化、リーダーシップ強化、プロジェクトマネジメント力強化、リサーチ力強化などに分けて、効果的なコーチングノウハウを追求していく必要があります。

報酬体系も、一人決めればいくらといった成功報酬に近いものから、一人の顧客にどのくらいの期間キャリアアップサービスを提供したか、いくつのプログラムを受講していただいたか、結果としてどのくらいの総売上になったか、顧客自身の報酬がどう上がっていったかなどに基づく、より長期的視点にたった報酬体系に変えていかなくてはなりません。

事業ビジョンが変わると、すべてが変わる必要があります。

 

企業文化の再構築

何より大切なことは、企業文化の再構築です。

営業的に決めれば終わり、決めた数が多ければえらい、その後の結果は問わない、次へいこ次!という文化から、一人の顧客の人生を考え、顧客のスキルアップに貢献し成長していただいてなんぼ、という価値観への切り替えが必要で、簡単ではありません。

経営者、役員および社員一人ひとりの一挙手一投足が矛盾なく、この新しい価値観に沿って動くようになるまで、そして最高レベルの運営ができるようになるまで、経営者は口を酸っぱくして、新しい文化の普及をはかっていく必要があります。

口を酸っぱくして言うだけでは足りず、例えば以下のような施策が必要です。

  1. 新しい事業ビジョン、事業戦略、組織でどういった売上、利益になるのか中期計画を立てる
  2. 顧客へのトレーニング、コーチングプログラムを企画、開発、運営する
  3. スキルアップコーチがどういう助言をどういうレベルで提供するのかプランを立案、実行する
  4. スキルアップコーチの必要スキルを明確にする
  5. 既存の人材紹介コンサルタントのうち、スキルアップコーチに転向できる人材をリストアップする
  6. 転向、スキル強化プログラムを実施する
  7. 不足人材の採用を並行して進める
  8. 告知のウェブサイト、キャンペーン等を準備し、マーケティングプランを実行する
  9. 必要に応じて資金調達をする
  10. 定着するまで、新しい事業ビジョンを繰り返し説明し、訴え続ける

簡単なことではありません。ただ、一つひとつ、むずかしい話ではありません。

当記事は、ブレークスルーパートナーズ株式会社 赤羽雄二氏の連載コラムの第9回です。ブロックチェーンが、産業、企業、個人に与えるインパクトについて、「どういったことが起きるのか、何をすべきなのか」について、それぞれの立場の方に合わせて解説していきます。

連載:「ブロックチェーンがおよぼすビジネスインパクト」
※第1回:ブロックチェーンが産業、企業、個人に与えるインパクト:例外なくすべてが変わる
※第2回:ブロックチェーンが生み出すビジネスチャンス:インターネットを超える大チャンス
※第3回:ブロックチェーンビジネス立ち上げは、早い者勝ち:今すぐ始めないと取り残される
※第4回:ブロックチェーンビジネスを考えるための頭の柔軟性:さらに柔らかい頭を
※第5回:大企業にとってのブロックチェーン革命:大企業の存在意義が真正面から問われる
※第6回:ベンチャーにとってのブロックチェーン革命:このチャンスを活かすか死ぬか
※第7回:中小企業にとってのブロックチェーン革命:生か死かの瀬戸際
※第8回:ブロックチェーン革命をリードする経営者、足を引っ張る経営者:選手交代

ご意見、ご質問は akaba@b-t-partners.com までお気軽にお寄せください。すぐにお返事します。

 

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赤羽 雄二
About 赤羽 雄二 14 Articles
東京大学工学部を1978年卒、小松製作所を経て、1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。1990年より、マッキンゼーソウルオフィスの立ち上げおよびLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。