ビットコインはインフレ抑制に有効か

インフレーションとは、モノの値段が全体的に上がり、お金の価値が下がることを指す。発生原因により、需要・財政・コストといった分類がある。近年、深刻なインフレに悩まされている地域や国家では、インフレ抑制に仮想通貨を導入する声が出るようになった。そこで、今回はインフレ抑制においてビットコインの有効性について論議したい。

・そもそもビットコインの価値は、どのように担保されているのか

周知のように、法定通貨とビットコインの違いとしては、「発行主体」と「発行量」がある。法定通貨の仕組みとしては、各国政府が中央銀行を通じて法定通貨を発行し、金利調整、通貨発行量の増減などの金融政策を用いて良好な経済体系をマクロコントロールする。しかし、ビットコインのシステムには発行主体が存在せず、マイニングと呼ばれる技術的手段でその発行が実現する。また、ビットコインは発行上限を2100万BTCまでに制限した。

ビットコインが人気になった理由は、ビットコイン自体の価値が今後上昇していくと期待されていることにあるこの期待は、ビットコインの価値を担保する基礎となる。身近な例を挙げると、マイナー(採掘者)がマイニング事業に膨大な資金を投げるのは、実はビットコインの価値が上昇していくと強く期待しているからだ。

・インフレに陥ったベネズエラとビットコインのリスク

南米国家のベネズエラは、2010年代に入ってからは価格統制等の市場原理を無視した政策によりハイパーインフレーションが慢性化し、市民生活が混乱に陥る危機的状況となっている。その後石油・天然ガス・金などの資源で裏付けられた独自の仮想通貨であるペトロを発行したが、状況は改善されていない。インフレによる貨幣価値が下落することを回避するため、ベネズエラでは、ビットコインの取引量が継続的に増加していると多くのメディアが報じた。

一般的に、ハイパーインフレやギャロッピングインフレなど、政府が現状に対するコントロール能力をほぼ失った場合では、個人がビットコインを購入することで、インフレに対抗する手段として一定の有効性があるように見える。その原因は、投資家が既存の混乱体系から抜け出し、新たな経済体系に入ることで、該当地域のインフレに対抗できると考えられている。しかし一方で、国家レベルから言えば、いくつかの深刻な問題が生じる恐れがある。

①デフレーション

ビットコインは、2140年に採掘完了と推定されているが、Bitinfochartsのデータにより、2019年7月31日時点でビットコインマイニングの採掘量が既に1785万BTCを超え、発行上限数2100万BTCの85%を占めていることが分かった。このように、ビットコインは国家レベルの経済発展の需要に応えず、深刻なデフレーションを起こす可能性がある。他にも、いったんビットコインの上昇が予測されたり、確定されたりすることで、一部のビットコインは、既存の市場から離脱し、投資対象としてその流通量が更に低下することが、デフレーションを更に悪化させる原因になると考えられている。

②金融政策の独立性の消失と経済の混乱

各国の中央銀行は、政策金利や法定通貨の発行量をコントロールすることで、国の経済状況を調整することができる。しかし、ビットコインの発行量と発行の仕組みが既に設定されているため、前述の手段を用いて国家の経済政策をコントロールする能力が低下する、もしくはその政策の独立性が消失するという懸念がある。また、金融政策が国家の主権問題や経済安全に繋がっているので、各国政府は分散型のビットコインがもたらす潜在問題を無視することができない。

③ボラティリティー

BTC価格は、2017年に高値の20000ドルまでに接近した後、2018年に急落に転じて安値の約3400ドルまで下落し、結果時価総額の約83%が一瞬に蒸発した。既存の記録をみると、短期間に価格が30%を超える急変動する可能性がかなり存在する。このような激しい変動は投資家に投資の警鐘を鳴らしている。長期的にみても、インフレ抑制の有効性や価値を維持する手段として、ビットコインを利用するのが本当に妥当なのかといった不信感も高まった。要は、ビットコインに対する期待もしくは信頼性を完全に構築しない限り、インフレ抑制の有効性は見られない。

 

・金の歴史から見てくるビットコインの将来

約百年続いた金本位制の崩壊を振り返ると、類似する問題が覗える。まず、黄金の採掘量は、生産水準と商品流通の需要に追い付かず、流通尺度の機能が低下した。また、当時の黄金分布は、米英独仏露などの諸国に一方的に集中していたため、その貨幣鋳造(発行に相当)と流通性の自由度を奪われた。さらに、第一次世界大戦では関与諸国が黄金で武器を大量購入し、黄金の輸出と銀行券に換えることを中止された。これらの要素は、金本位制が崩壊した原因だと考えられている。

この例をビットコインに当てはめると、発行上限があるのは生産水準に追い付かないこと、早期投資家や技術的背景を有するエンジニアが大量に所持していること、特定の取引でビットコインが利用され、投資対象として期待されることで流通性が低下すること、という3つの類似点が見えてくる。

深刻なインフレに悩まされている地域や国家に住んでいる人々は、簡単に入手できて保存しやすいビットコインをやむを得ずに選択するかもしれないが、国家レベルから言えば、ビットコインの発行上限が既に設定されていることによるデフレーション発生が推測できるほか、ビットコインが投資対象として扱われることで流通量が更に減少し、デフレーションをより悪化させる可能性も見えてくる。次に、ビットコインの経済地位が承認されると、各国政府は、マクロコントロールの手段が機能できなくなり、既存の経済体系に混乱をもたらす可能性も考えられる。最後に、価格変動の激しいビットコインは、インフレ抑制の最良策として検討する余地があるだろう。

 


 

BBC編集部
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