BTCの上昇とともに、偽造取引量の問題が浮上、その裏には?

△ BTCの価格

6月初旬、BTCが$7500付近まで下落し衰えを見せていたこと受け、当時は市場が停滞すると判断した人が多いようだった。しかしその後、BTCは$7500~$8000の間で一週間ほど推移した後再び上昇トレンドに転じた。結果として6月21日には$10000を突破し、年初価格の3倍増となった。

価格の上昇とともに、その変動の激しさは顕著になっていった。今年4月、ボラティリティは史上最低値の「23」になったが、現在値は「95」にまで達したことが判明した。このように価格が激しく変動する現象は、短期投資の絶好の機会であることを意味し、不安定な市場の現状を反映するものだ。

△ 取引所での取引量が急増

また、前述したボラティリティのほか、取引量の急増もBTC価格を押し上げる原因の一つだと考えられている。今回の価格上昇を受け、多くの個人投資家が投機的に市場へ参入しているようだ。

JPモルガン・チェースの分析によると、BTCをはじめとする各種の仮想通貨は過去数ヶ月間において、取引量が継続的に増加していたという。2019年第1四半期の取引量は2200億ドルであったが、4月には4450億ドル、さらに強気相場のピーク期に達した5月では7250億ドルにまで増加したという結果が出ている。

過去に強気相場と言われた2017年12月17日~2018年1月18日の間のBTCの取引量ですら約4200億ドルにしか到達していない。また、今年5月に、BTC、ETH、XRPの取引量の合計が1兆ドルを突破したことに対して、前回の強気相場の合計は約6850億ドルだった。

△ 仮想通貨取引所による偽造取引量

このように取引量は増加し、仮想通貨の取引は活発化している。しかしここ1年でこられのデータへの信憑性が疑われるようになった。

Bitwiseがこのほど発表した報告書によると、BTCの取引量は誇張されており、実際はその約5%程度でしかないと指摘されている。このほかにも、2019年4月時点での取引量に関する研究の中では、正規の取引量は全体の1%という報告もあった。

これらの報告書が指摘したように、もし実際の取引量が5%であるならば、2019年5月の仮想通貨市場の取引量は7250億ドルから一変して360億ドルとなってしまう。

△ BTCデリバティブの拡大

もし取引量の誇張や水増しが事実であるならば、その数値への疑惑に加え、BTCデリバティブの重要性が過小評価されているのではないかという問題が現れている。

2017年、BTC市場に参入していたのはほとんどが個人投資家であり、機関投資家は税金申告などの問題がネックとなりなかなか参入できずにいた。この問題を解決する方法の一つとして、BTCデリバティブがシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とシカゴ・オプション取引所(CBOE)で発行されるようになった。

Bitwiseの報告書によると、BTCデリバティブは機関投資家の裁定取引を容易にし、市場を大きく変動させるといわれている。実際、CMEとCBOEにおけるBTC先物商品の平均取引高はBTC が上昇を始めた4・5月に急増しており、その詳細を以下図に示した。

先物取引のイメージ

このようにシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とシカゴ・オプション取引所(CBOE)の5月のデリバティブの取引高は約120億ドルであり、4月の約55億ドルから急増していることが分かる。これは前述した仮想通貨市場の実際の取引量の約33%を占めることとなり、つまりこの一点だけで、報告されている取引量が偽造されていることを示している。しかしながら、その取引量が継続的に増加しているのも事実であり見逃してはならい。

取引のチャート

以上の様に、「仮想通貨取引所はBTCの正規の取引量を偽造し水増しした可能性が高い」、「BTCデリバティブ市場の重視性は過小評価されている」という2点の結論に達した。機関投資家の参入の影響により、市場構造は既に大きく変化したと言えるだろう。

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△偽造取引量の問題を突き止め

2019年5月14日、BTC価格は1年ぶりの8000ドルの高値に戻り、24時間の取引量は349億ドルに達した。当時、市場全体の約30%をトップ10の仮想通貨取引所が占めていたと考えられてる。しかし、この膨大な出来高を支えるのは、正当な個人投資家と機関投資家の参入だけではなく、「偽造取引量」の動きがあると、多くの不信が押し寄せてきた。

・偽造取引量を扱った研究や報告

2018年、イスラエルの総合プラットフォームであるMayan Capital社は、「仮想通貨取引所が少なくとも20%以上の取引量を水増ししていた」との結論を報告した。また、2019年にはBitwise Asset Management社がSEC(米国証券取引委員会)に提出したレポートの中で、「現時点の市場では正規の取引量はわずか5%であった」と指摘したという。さらに、BTI(Blockchain Transparency Institute)がこの程発表したレポートはさらに衝撃的であった。同社は「CoinMarketCapのトップ25のうち17の取引所が、その取引量の99%以上を偽っている」と主張したのだ。

従来の金融市場では、偽造取引量は「Wash Trade」(偽装売買)と呼ばれ、各国の規制より明示的に禁止されている。これは、需要量が供給量を上回ったという現象を人為的に操作することで、市場の公平を崩すことを指している。新興市場としての仮想通貨業界にとって、「Wash Trade」の意味は決して単純ではない。

・ランキングの重要性

仮想通貨取引所が利益を獲得する方法は、取引所ランキングの上位に入ることが最も直接的で間違いがない。なぜなら、ランキングの順位は投資家やプロジェクト関係者の選択を左右することができるからだ。

個人投資家の立場から言えば、ランキングの順位はセキュリティ、信用性、エクスペリエンスなどの面に評価を付ける意味が含まれており選択の指標となる。そのため仮想通貨取引所は、順位を上げるとより大きな市場を確保することができると言えるだろう。

ランキングが高いほど集客力が高まり、仮想通貨の種類も豊富になる。これによってさらに新規投資家が登録することで、いわゆる「マタイ効果」が形成されるからだ。 取引量を重要な要素とするランキングメカニズムでは、取引量重視は取引所の戦略となることが当然だと言われている。

仮想通貨取引所の立場から言えば、市場は基本的に従来の流通市場取引の方法を踏襲していると考えている。また、仮想通貨取引所以外に第三者による取引に例外があり、ニューヨーク証券取引所では、「スペシャリスト」、または「マーケットメーカー」と呼ばれている。

・マーケットメーカー

ニューヨーク証券取引所を例に、簡単に説明していく。証券取引所のメインボードでは、「Specialist」が金融市場の安定と流動性を目的に活動しているのが一般的だ。取引の仲介者として投資家たちの間に存在し、売買の成立を取り持つ。この「Specialist」は、一時的な流動性を提供するよりも、狼狽売り・パニック売りの防止のほうを重要視している。

しかし、このマーケットメーカーは、多くの利益を入手するため裏で共謀するのが珍しくない。1994年、NASDAQのマーケットメーカーらが付値の差を$0.125から$0.25まで引き上げ、不正な利益を得るという事件が起こった。後に検挙され実態が明らかになると、その被害投資家は約125万人に及んでおり、マーケットメーカー制度を取り入れていた33社は合計約10.3億ドルの賠償金を払うことを命じられた。

今回疑惑があがった「偽造取引量」は、仮想通貨取引所が「マーケットメーカーとして活動する」という意思が垣間見える。特に小規模な仮想通貨取引所は出来高と流動性の低さに悩まされているため、マーケットメーカーになるのは必要な手段であるかもしれない。しかしこの考え方を受け、一部の人は仮想通貨取引所を取引仲介者ではなく、「一番の大口投資家」と皮肉っているという。

・偽造取引量を見抜くには

偽造取引量は如何に判断すれば良いだろうか。今回、BitwiseがSECに提出した報告書から一例を取り上げた。図が示すように、当時CoinBeneでのBTC注文価格は3273USDTであった。

しかし買い注文・売り注文の指値とそれぞれのタイムスタンプを確認すると、それは全く同じであったという。また、BIDの3274.33USDTとASKの3239.59USDTとの差額は34.74USDTだった。

これは通常の場合、0.01USDT以下であると考えられている。

仮想通貨取引所はランキングを上げるため、前述のような緻密さに欠ける手法を利用し、取引量を偽造するのが普通担になっているという。BTIのデータによると、CoinBeneでの正規の取引量はわずか2%ほどであると言われている。この基準で本来の取引量を計算した場合、既存の仮想通貨取引所ランキングはどれほど信用できるのだろうか。

△根本的な要因:法規制の欠缺

従来の偽造手法は、「時代に遅れている」と言っても過言ではない。なぜなら、前述した「Wash Trade」(偽装売買)は、「1934年証券取引所法」により既に禁じられている。また、コンピューターによる無機質なプログラム取引を利用して市場を操る行為は、2010年より米国に禁止されている。しかし、仮想通貨の特徴として「分散型」が挙げられるため、法規制による制限に該当するかが曖昧になり混乱した現状がもたらされている。

以上の様に、取引量の偽造の横行は、法規制の欠陥という理由からであると解釈できるかもしれない。仮想通貨市場はここ数年の間に大きく変化を遂げ、現在の規模にまで発展してきた。もし2013年にBTCを購入していたのならば、現時点での投資利益率は6700%にのぼる。

しかし視点を変えれば、弱気相場における仮想通貨の時価総額は3000億ドルにも達しておらず、これはApple社の時価総額の30%以下の数値であり、まだまだ不安定で発展途上といえる。分散型システムに対する法規制が欠如した環境の中、偽造取引量の問題は、単なる氷山の一角に過ぎないだろう。

 

 


・編集:BBC&ChainDD