改正資金決済法のポイントと仮想通貨交換業者の注意点

本年4月1日、仮想通貨に関する改正を盛り込んだ資金決済に関する法律(「資金決済法」)の改正法が施行されました。

これにより、日本では、初めて仮想通貨が法律上に位置づけられることとなり、また、いわゆる取引所の運営者が仮想通貨交換業者として資金決済法の適用を受けることになります。

また、この改正資金決済法の施行を受けて、ビックカメラが、ビットコインによる決済サービスを4月7日より一部店舗で試験導入すると発表しました。ビックカメラの発表では、「今般の改正資金決済法の施行に伴い、ビットコインは安全性が向上し、今後国内での普及が進むことが考えられます。また、ビットコインが先行して普及している海外からの観光客の利用も見込んでおります。」とのコメントも出されており、今回の資金決済法の改正を契機として、ビットコインをはじめとする仮想通貨を利用したサービスの拡大が期待されます。

 

改正資金決済法の意味

このように、早速ビジネスの現場に影響を及ぼしつつある資金決済法の改正について、その意味を改めて整理してみます。

まず、今回の改正により、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。

その結果、仮想通貨を取り扱おうとする事業者の観点からは、仮想通貨の売買や他の仮想通貨との交換等を業として行うためには登録が必要であり、登録をしない限り、仮想通貨の売買等のサービスを提供できないことになりました。

仮想通貨を利用する一般の利用者の観点からは、仮想通貨の購入や売却をするためには、個人間で仮想通貨を交換するようなケースを除くと、基本的には、登録業者を通じてのみ行えることになりました。

また、資金決済法では、仮想通貨交換業者が取り扱うことになる仮想通貨の概念を定義しています(同法第2条第5項)。加えて、仮想通貨交換業者の登録に際して、取り扱う仮想通貨の名称を申請することとされています(同法第63条の3第1項第7号)。そのため、資金決済法上の仮想通貨の定義に該当するものであっても、仮想通貨交換業者が取り扱っていなければ、事実上、その仮想通貨は流通しないことになると考えられます。

このように、資金決済法の改正により、今後は、仮想通貨の売買等を取り扱う事業者や実際に取り扱われる仮想通貨が法律上限定されることになります。

同時に、今回の改正では、マネロン・テロ資金供与対策及び利用者の信頼確保のための法制度が整備され、仮想通貨交換業者には様々な規制が課されることになりました。そのため、仮想通貨交換業者やそのサービスの質が一定程度担保されることが見込まれ、結果として、仮想通貨を利用したビジネスの進展につながる可能性も高まったと考えられます。

 

法律上の仮想通貨の範囲

次に、資金決済法で定義された仮想通貨の範囲を説明します。資金決済法上、仮想通貨は以下のように定義され、(1)と(2)の2つの種類に分けられています。

(1) 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

(2) 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

(1)がいわゆるビットコインであり、(2)は(1)の要件を満たさないものの、ビットコインと交換可能な他の仮想通貨を意味しています。

上記(1)の内容は一見すると複雑な定義となっていますが、ポイントは以下の3点です。

  1. 不特定の者に対して代価の弁済として使用可能であり、かつ、不特定の者を相手方として仮想通貨自体の売買(=法定通貨と交換)が可能であること
  2. 電子的に記録・移転が可能であること
  3. 法定通貨及び通貨建資産でないこと

このうち、①の「不特定の者」との関係という点が重要なポイントです。

具体的には、例えば、プリペイドカード等の前払式支払手段、企業が発行するポイントカード、ゲーム内で利用可能な通貨は、それらを使用できる店舗やゲーム等の範囲が、当該プリペイドカード等の発行者との契約により特定の範囲に限定されることになります。そのため、基本的には「不特定の者に対して代価の弁済として使用可能」という要件を満たさないと考えられ、仮想通貨には該当しないことになります。

また、仮想通貨の発行者が仮想通貨と法定通貨との交換を制限している場合や、仮想通貨と法定通貨との交換市場が存在しない場合は、「不特定の者を相手方として仮想通貨自体の売買(=法定通貨と交換)が可能である」という要件を満たさない可能性があり、その場合は、やはり仮想通貨には該当しないことになります。

これらの点は、金融庁が発表している仮想通貨交換業者に関する事務ガイドラインに載っていますので、仮想通貨を取り扱う事業者は、事務ガイドラインをしっかりと読んでおいた方が良いでしょう。

 

仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨の範囲

以上の仮想通貨の定義に該当すれば、直ちに資金決済法上の仮想通貨として取引所等で流通することになるかというと、そうではありません。実は、もう一つ重要なポイントがあります。

それは、仮想通貨交換業者において、取り扱う仮想通貨として申請されているかという点です。

資金決済法では、仮想通貨交換業者の登録に際して、取り扱う仮想通貨の名称を申請することとされています(同法第63条の3第1項第7号)。

そのため、仮想通貨交換業者が申請していない仮想通貨は、たとえ資金決済法上の仮想通貨の定義に該当していても、仮想通貨交換業者に取り扱ってもらえません。その結果、取引所等で流通しないことになり、一般のサービスでも利用されないと考えられ、実務上はあまり意味のない仮想通貨となってしまう恐れがあります。

では、仮想通貨交換業者に取り扱う仮想通貨として申請してもらえばよいことになりますが、これも簡単ではないと予想されます。

仮想通貨の申請に関して、上記で述べた事務ガイドラインでは、以下のように述べられています。

「取り扱おうとするものが仮想通貨に該当し、又は当該仮想通貨の取扱いが仮想通貨交換業に係る取引に形式的に該当するとしても、利用者保護ないし公益性の観点から、仮想通貨交換業者が取り扱うことが必ずしも適切でないものもあり得る。したがって、当局は、仮想通貨交換業に係る取引の適切性及び取り扱う仮想通貨の適切性等について、申請者に対して詳細に説明を求めるとともに、認定資金決済事業者協会の公表する情報等を参考としつつ、登録の申請の審査等を実施するものとする。」

つまり、資金決済法上の仮想通貨の定義に形式的に該当すれば、当然に、仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨として申請できるのではなく、その仮想通貨が、利用者保護ないし公益性の観点から仮想通貨交換業者が取り扱うものとして適切なもののみが申請できることになると考えられます。

具体的に、どのような仮想通貨であれば申請可能であるか、現時点では、はっきりとは分かりません。

但し、事務ガイドラインでは「認定資金決済事業者協会の公表する情報等を参考としつつ」と述べられていますので、将来的には、認定資金決済事業者協会において、例えば適切な仮想通貨の種類や適切な仮想通貨であることの要件等を公表してもらい、その公表された要件等に合致しているかという観点から判断されることになるかもしれません。

ちなみに、この「認定資金決済事業者協会」とは、内閣総理大臣が資金決済法に従って認定した一般社団法人であり、いわば、当局が認定した自主規制団体です。本稿執筆時点では、仮想通貨交換業についての認定資金決済事業者協会は存在していませんが、今後、いずれかの団体が認定されるものと考えられます。

 

仮想通貨交換業者となるためには

このような仮想通貨の売買等を業として行うためには、仮想通貨交換換業者としての登録が必要となります。この登録は、どのような手続となるでしょうか。

まず、形式的な登録手続の流れとしては、法定の登録申請書と一定の書類を財務局に提出し、財務局において登録拒否事由に該当しないこと等の確認がなされれば、晴れて仮想通貨交換業者として登録されることになります。

(なお、登録申請書と提出書類の一部については、その様式が法令で決められていますので、様式に従って申請書等を作成する必要があります。)

しかし、上記のように必要書類を役所に提出すれば、それだけで登録できるかというと、そうではありません。

登録の拒否事由に該当しないために、資本金1000万円以上である株式会社であることや、業務を適正かつ確実に遂行する体制整備、法律遵守の体制整備等を行う必要があります。

また、登録申請書等の提出書類の記載内容の適否や上記の登録拒否事由の該当性判断のため、財務局の担当官と何度も面談をしていくことが想定されます。

従って、実務上は、単なる必要書類の提出に止まらないハードルを越える必要があります。

 

上記の登録拒否事由や登録申請書の具体的な記載内容の詳細については、次回の記事で説明させて頂きます。

 

執筆者
弁護士 林 賢治 (k.hayashi@azx.co.jp)
弁護士 池田宣大 (n.ikeda@azx.co.jp)

 

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池田宣大
About 池田宣大 1 Article
弁護士/AZX総合法律事務所(AZX  Professionals Group)パートナー。2002年慶應義塾大学法学部法律学科卒業 2006年弁護士登録。ビットコイン取引所の運営会社を始めとして、多数のベンチャー企業の顧問弁護士を務め、ベンチャー企業の資金調達に関する種類株式の設計、投資契約の作成、M&Aへの対応等、ベンチャーファイナンスに関する案件を数多く取扱っている。また、ベンチャーキャピタル等の投資家に対して、ファンドの組成や組合契約の作成、ベンチャー企業への投資手法のアドバイス等、投資家に対するサポートも日々行っている。