ビットコインを支える技術「ブロックチェーン」とは

2017年3月23日 BBC編集部 0

サトシ・ナカモトによって2008年に発表されたビットコイン(Bitcoin)には、実に革新的なアイデアが多く盛り込まれています。その一つが分散型取引台帳とも呼ばれる「ブロックチェーン」です。現在ではブロックチェーンを活用し暗号通貨にとどまらず様々なプロジェクトが進められています。今回の記事ではそれらの根幹を成すブロックチェーンについて、分かりやすく解説していきます。ブロックチェーンを活用した各プロジェクトの詳細についてはこちらの記事で詳しく解説しています。   ブロックチェーン(分散型取引台帳)とは? ブロックチェーンとは分散型台帳(Distributed Ledger)という名のとおり、「全ての取引(トランザクション)が記録された仮想的な台帳」です。それは、その名の通り分散して存在しており、1つではありません。   「分散型」と「集中(中央集権)型」の違いとは?  「分散型(Decentraized)」という言葉と対置されるのが、「集中型(中央集権型)(Centralized)」という言葉です。従来のサービスはほとんどが集中型であり、たとえばFacebookではユーザーの投稿や写真は全ていったんFacebookの集中サーバーにアップロードされ、そのデータをFacebookユーザーが同期(ダウンロード)することで全ユーザーが同じデータを閲覧できるようになっています。  このような集中システムにおいては中央管理者が効率的にデータを管理できる一方で、データを集中的に管理しているためハッキングなど外部からの攻撃のリスクが高まり、またそれに対するセキュリティコストも必要となります。簡単に言えば、誰かが金庫を開けてしまいさえすれば、預金者の財産をごっそり取られてしまうのです。  また集中的に管理されているためサーバーダウンや内部からの改ざんに脆弱なほか、中央管理者を介することによる仲介コストが必要となるといった点もデメリットとして挙げられるでしょう。  一方で分散型システムにはそもそも「中央管理者」が存在しません。ネットワークに接続しているユーザーが更新を行うと、その更新は自動的に他の全ユーザーに送信されます。同様に、分散型台帳にはブロックチェーン上で行われたあらゆる取引が自動的に記録されます。どういうことか詳しく見ていきましょう。   ブロックデータを分散的に常に同期、そのため不正や改ざんが困難  ブロックチェーンの中では、約10分間の取引記録をまとめた「ブロック」と呼ばれるデータの塊がチェーン状(鎖状)に連なっています。あるブロックにはその一つ前のブロックから算出された「ハッシュ値」という値が含まれているため、ブロックの「チェーン(鎖)」と表現されます。  これらはネットワークに接続された無数のコンピュータに同期されることで、接続されたコンピュータは常に同一の取引記録をローカルに保持します。ここでは「マイニング」と呼ばれる作業によって取引記録が絶えず更新され続けていますが、ユーザーからすれば取引記録が自動的に更新されていくと考えてよいでしょう。  以上のようなシステムによって、悪意を持った第三者がブロックチェーン上の取引記録を書き換えようとしても、そのためには世界中に無数にあるコンピュータ内に保存されている取引記録すべてを改ざんする必要が生じます。ブロックチェーン上の取引記録データを改ざんするのは非常に困難なのです。これがセキュリティコストの削減にもつながっています。   ピア・ツー・ピア(P2P)かつトラストレスなネットワーク  このように、自律的に全取引を改ざん不可能な状態で記録するブロックチェーン技術は中央管理者の存在を不要にし、個人と個人が仲介者(第三者)を介すことのない直接的なやり取りが実現されました。このように第三者を介さない直接的な個人間のやりとりのことをP2P(ピア・ツー・ピア、Peer to peer)と呼びます。  中央管理者を介さないP2P取引によって仲介コストやセキュリティコストを削減できるほか、分散的に保存されているために改ざんやサーバーダウン、外部攻撃に強く、なおかつ第三者によって管理されることもありません。さらに、正しい取引記録が自動的に更新されることを踏まえると、ブロックチェーンは「トラストレス(Trustless)」であると言うことができます。これはそれぞれの取引相手の信頼性をそのつど確認する必要がなく、ブロックチェーン上の取引記録を常に正しいものとして信頼できるということです。  では、「マイニング」を通じて正しい取引記録が自動的に更新されていく過程は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。ブロックチェーンがトラストレスであると言える理由も含めて、「プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work、PoW)」については、別の記事で詳しく説明したいと思います。 […]

ブロックチェーンは中央集中型の電力システムを変えられるか

2017年1月30日 大串 康彦 0

※ブロックチェーン+エネルギーに関する大串の最新の意見(2017年10月以降)については、Mediumを参照願います。 ビットコインの中核技術ブロックチェーンが金融分野以外でどのような「キラーアプリケーション」を形成するのでしょうか。2017年1月現在、不動産、保険、ライドシェア、行政、企業経営など各分野で初期のアプリケーションやサービスが萌芽しています。 本記事では、電力の制度や電気の使われ方が変わっていく中で、ブロックチェーンを使い、電力の分野で価値を創出できるかを議論します。プライバシーを守り、取引記録の正統性を保持し、中央集中型から分散型システムへの移行を促すブロックチェーンの特性が電力システムを変革できる可能性があるのではないかと考えています。   電気の流れは一方通行からネットワーク型へ 現在の電力流通システム(発電した電力を需要家に送るシステム)はトーマス・エジソンの時代に発明され、大きく変化することなく現在に至ります。電力流通システムの最上流にある電力会社が保有・運用する大型発電で発電された電気は高圧送電網・変電所・配電網を通じて電力流通システム最下流の最終需要家に届けられます。例えば、新潟県や福島県の大型発電所で発電した電気を数百キロメートル送電し、需要地の東京に送っています。 この中央集中型電力流通システムの想定は、電気の流れは常に一方通行で、システムの最下流にいる需要家はただ電気を消費するだけということでした。しかし、この前提は崩れつつあります。 1990年台から家庭への普及が始まった太陽光発電は2012年の固定価格買取制度開始で大きく普及に弾みがつき、制度開始後2016年11月までに446万キロワットが導入されました。発電容量だけで見ると、これは100万キロワットの原子力発電所の4基分に相当します。2015年に経済産業省が発表した長期エネルギー需給見通しでは2030年の家庭用太陽光発電の導入目標を900万キロワットとしており、今後も普及は進んでいきます。 一方、太陽光発電よりも普及のスピードはゆるやかですが、家庭用コージェネレーションシステムも現在までに約20万世帯に導入されました。送配電網から送られてくる電気を消費しつつ、太陽光発電やコージェネレーションシステムで発電を行う需要家は今後も増える一方です。(このように消費者でありながら生産者である人たちは「コンシューマー」と「プロデューサー」を組み合わせた「プロシューマー」と呼ばれています。) システムの最下流にいる需要家が発電も行い、以前は一方通行だった電気の流れが双方向・ネットワーク状に変わりつつあります。   取引も「1:N」から「N:N」にすることのメリット 現在は再生可能エネルギーの固定価格買取制度があり、家庭で消費できなかった太陽光発電の余剰電力は電力会社や新電力が買い取っています。しかし、買取単価は毎年下がっていき、何年か後には家庭が払っている電気料金の単価よりも低くなる見込みです。この状況では電力会社に売電するよりも自家消費した方が経済的に有利になります。 家庭用の電力の単価は現在25-26円/キロワット時といったところでしょうが、2019年の太陽光発電の買取単価はこれよりも低い24円が提案されています。(2017年1月現在)さらに、固定価格買取制度はいずれ廃止されてしまうので、電力会社は余った電気を買い取ってくれるとしてもその価格はとても安いものになるでしょう。 昼に太陽光発電で発電した電気を夜に使えるように安価な蓄電池が普及すれば問題ないのですが、現在太陽光発電用の蓄電池は100万円前後もする高価なものです。そこで太陽光発電の余剰電力を同地域の別の家庭に電力会社の買取価格よりも高い価格、かつ取引先の家庭の電気料金よりも安い価格で取引できることを想定してみましょう。 例えば、余剰電力を電力会社に売ればキロワット時あたり10円とします。25円で電気を買っている近所の家に22円で売ることができれば売り手の家庭、買い手の家庭双方ともに経済的メリットが生じます。充分な経済的インセンティブが確保されれば今後の太陽光発電の普及も順調に進むでしょう。 この取引のためには電気を流す送配電インフラは電力会社のものを使わざるを得ませんが、情報システムは中央の権限が不要で対等な需要家同士の取引(P2P取引)に対応できるブロックチェーンが最適である可能性があります。 金融機関を通さなければ送金ができない状態から、暗号通貨のシステムを使って金融機関の仲介なしに送金ができるようになるのと同じです。電力会社から複数の需要家「1:N」だった取引形態が「N:N」になるに従い、情報システムもその形態に適合した分散構造にするということです。   ブロックチェーンの分散構造を活かす 現在は家庭の太陽光発電で発電した電気を売電するときには、売り先がどの会社(例えば、新興の小売電気事業者)でも、必ず電力会社(関西電力や中部電力など)が電力メータから情報を集め、売り先の会社に提供します。すなわち、一極集中型の情報システムになっており、電力の取引には直接介在しない電力会社なしに取引が行えないことになっています。 この方式だと、冗長性がないため、中央のシステムに不具合が起きたときに甚大な影響が生じます。実際、2016年4月の電力小売自由化開始時には、東京電力パワーグリッド株式会社のシステムが不具合を起こし、その他の電力小売事業者(新電力)は顧客に使用量を通知できない、課金請求ができない、誤請求を行っていたなどの問題が発生しました。 使用量を確定できていない顧客の数は2016年9月現在で8000件以上にものぼり、2017年1月現在、問題の全面解決には至っていない模様です。電力小売自由化に伴い新規参入した小売事業者は、自社の責任ではない不具合のためにせっかく新規確保した顧客からの信頼を失いかねないという状況だったと懸念します。 各顧客の電力使用量や発電量のデータをブロックチェーン上に記録し、そのデータを複数のノードで保持すればどうでしょう。分散型システムのブロックチェーンでは全てのノードが一度にダウンする可能性は非常に低く、上記のような不具合が起こる可能性は実質的にはゼロに近くなります。 ブロックチェーンのシステムでは、電力メータで計測した使用量や発電量が正しい限り、データの改ざんはできません。使用量を少なくして料金を減らす、発電量を水増しして収入を多くするなど取引の正真性を損なうことはできません(メータそのものへのハッキングの問題は残りますが)。 […]