ビットコイン分裂の危機は、どうして生まれたのか?Bitcoin CoreとBitcoin Unlimited

近頃、メディアにおいて「ビットコイン分裂の危機」と大きく報じられていますが、その実態はどのようなものなのでしょうか。その根底には、「Bitcoin Core(ビットコイン・コア)」と「Bitcoin Unlimited(ビットコイン・アンリミテッド)」と呼ばれる二つの派閥の対立があります。当記事で、詳しく見ていきたいと思います。

 

対立の発端-ビットコインスケーラビリティ問題

そもそもビットコインをめぐる対立はなぜ生まれてしまったのでしょうか。実はそこにはビットコインの課題の一つとして以前から言われている「スケーラビリティ問題」が深く関わっています。

ビットコインでは、ブロックサイズの上限が1MBと定められているため、1MBを超える取引が発生するとトランザクションの遅延や手数料の高騰が起きてしまいます。ブロックに記録しきれない取引の「積み残し」が発生するのです。これがスケーラビリティ問題であり、特にビットコインの取引量が増大している近頃は解決すべき問題として議論されていました。

これに対応するためには「フォーク」と呼ばれるアップデートを行って、より多くの取引をブロックに収めるためにビットコインの仕様変更を実施する必要がありました。

 

「フォーク」とは何か?➖ソフトフォークとハードフォーク

ブロックチェーンではシステムのアップデートを「フォーク(分岐)」という形で行います。ブロックチェーンがある点から分岐する様子を思い浮かべて考えていただけると想像しやすいかと思います。フォークには、ソフトフォークとハードフォークという二種類が存在します。ソフトフォークでは、旧バージョンとの互換性があるので以前と同じように利用できますが、ハードフォークでは互換性がなくなってしまうので、旧バージョンと新バージョンに分裂した状態でそれぞれのブロックチェーンが続くという結果も起こり得ます。昨年には、イーサリアム(Ethereum)がハードフォークを行った結果、イーサリアムとイーサリアム・クラシックに分裂してしまいました。ブロックチェーンのフォークを行うためには、ネットワークに参加しているノードの多数決による民主的な決定が必要となります。しかし、意見が分裂してしまうと、前述のイーサリアムのように2つに別れてしまうという事態となります。

 

Bitcoin Core派の「Segwit」とは?

「Bitcoin Core」はビットコインのソースコードであり、それらの開発を担うごく少数のエンジニアを「コア開発者」と呼びます。彼らはスケーラビリティ問題への対応のため、2016年10月に「Segwit(セグウィット)」と呼ばれるソフトフォークを発表しました。Segwitはトランザクションデータの圧縮や「ライトニングネットワーク」と呼ばれるオフチェーン取引の実装によって、実質的にブロックに入るトランザクション容量の拡張を企図しています。

Segwitを有効にするためにはアドレスをSegwit対応の3から始まるものを利用しなければならず、効果が出るまでに時間がかかってしまうというデメリットが存在します。またマイナーからすれば、Segwit採用によりオフチェーン取引が増加するとマイニング報酬が減少するため、マイナーやマイニングプールの一部からはSegwitに対する反発の声も上がっています。

 

Bitcoin Unlimited派とは?

ビットコインのスケーラビリティ問題はSegwitが開発されるまで実に約3年もの間、コア開発者内部で議論の的となってきました。この間にBitcoin XTやBitcoin Classicなどの解決策が模索されては対立を生み、「/r/bitcoin」というReddit内コミュニティにおいて過激な言論統制が行われたり、Bitcoin RoundtableやSatoshi Roundtabeなどの非公開会合における合意が何度か行われるなど、ビットコインコミュニティは次第に分散化とは相反する方向性へと進んでしまい、マイク・ハーン氏がコア開発者から離脱し「ビットコインは失敗だった」(英語記事)と題するブログを掲載するなどの事態に至りました。

このような経緯を経て、民主的な意思決定プロセスを重視し2016年1月に発表されたのが「Bitcoin Unlimited(BU)」です。Bitcoin Unlimitedはビットコインのブロックサイズ上限自体を撤廃し、ブロックサイズを可変的に決定するシステムを採用するハードフォークを主張しています。コア開発者の一人であるギャビン・アンドレセン氏がBUを支持する発言(英語記事)をしているほか、最大手マイニングプールのAntpoolなどが支持を表明しています。

一方でBUが採用した「突発的コンセンサス」と呼ばれるブロックサイズ決定のコンセンサスアルゴリズムにリスクがあるという指摘があるほか、バグによってマイニング報酬が失われるなどコードの脆弱性が何度か見つかっており、BU開発者サイドの開発能力に疑問の余地が残っています。これに対しBU開発者サイドはソースコードを非公開とするなど中央集権化とも捉えられる動きを見せました。その後、どこからかソースコードが漏洩するという出来事も起き、コミュニティ内の対立は混乱を極めています。

 

まとめ

Bitcoin CoreとBitcoin Unlimitedの対立は、マイク・ハーン氏の離脱に示されるように非常に政治対立的な側面があります。この発端となったビットコインの舵取りを担うコア開発者の内部対立の根底には、大きくなりすぎてしまったビットコインコミュニティにおける意思決定の難しさがあったと言えるでしょう。結果として、ビットコインにおいて民主主義が一部失われた反面で少数開発者による迅速な意思決定が進みました。一方で、BUにおいても少数開発者に限られた開発が行われるなど当初の思想とは相反する形で開発が進んでいます。このようにビットコインをめぐる政治的対立はいよいよ入り乱れてきているといった状況です。

最終的に全マイナーの95%がSegwitの導入に賛成すれば、無事にソフトフォークが完了します。しかしながら、ハードフォークによってビットコインが分裂してしまう可能性があります。ビットコインがハードフォークによって分裂した場合の混乱に備え、取引所19社は合同で、BUのハードフォークが実行された場合、ビットコイン(BTC)とは別の通貨(BTU)として扱うとする声明を発表しました。ここからうかがえるのは、開発者コミュニティとマイナー、取引所という三つの主体が互いの利害を主張していく構図です。それぞれが各々の利害を持つ以上は、ハッシュパワーに基づくマイナーからの多数決だけに頼ったり、技術力を持った開発者内部などに偏った形で意思決定をすべきではないと言えるでしょう。

SewgitやBUの状況次第では、ビットコインだけでなく暗号通貨全体に対する世論そのものに大きな影響を及ぼしかねません。今後も慎重に状況を見ていく必要がありそうです。

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BBC編集部
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